『モモの古道具屋さん』第5話 青年の詩と 第五走者 みーが担当します。


「いらっしゃ……」

「み、みずを」

突然入って来たのは、穴が空いて、擦り切れた服を来た男だった。


「もう、仕方ないなぁー。水を恵むためにモモは働いてるわけじゃないんだけど?」


そう言って、コップいっぱいの水を渡す。

「すまない」


そう呟くと、男は勢いよく一息で飲み干した。
ボロボロの袖で口を拭う。


「はぁー、生き返った」


「それはよかった。で、君は買いに来たの?売りに来たの?」


「は?」


「何にも知らずにここに来たってこと?ここは古道具屋。水だけ飲んで、はいさよなら、なんてそれはちょっと許せないなぁ」

そうやってモモは男の顔を覗き込む。
じっくりと見てみれば、すっと通った鼻筋と切れ長の目が涼しい印象を与える20代くらいの青年だった。


「じゃあ、オレに生きがいをくれ」


モモは驚いて目を丸くする。

「生きがい?だから、ここは古道具屋。人生相談室ってワケじゃないんだからね!」


青年は俯く。
その顔に影が差して、一層惹き込まれるような魅力を醸し出す。

(ま、モモは興味ないけどねー。)

「オレは詩人なんだ。全然詩が売れなくて。

いや、売れなくてもいい。だれかに聴いてほしい。読んでほしいだけなんだ」


「なるほどねー。生きることに生きがいなんて必要ないとモモは思うけどな」


「え?」


「生きていればいいじゃん。それで自分の詩を詠む。好きだから詩を詠むんでしょ?」


「うん」


「聴いてもらうとか、読んでもらうなんてのは、あとでついてくるもんだよ。もしかしたら詩が有名になるのは、君の死後になるかもしれないけどね!」


カタン。
壁に立てかけた古びたアコースティックギターが音を立てて、傾く。

「おっと、危ない」


青年の手が伸びていく。地面に倒れるその寸前、その手がギターを掴む。


「あら、ありがと。大事な商品に傷が付かずに済んだよ」


「これにする」

「え?」


「オレは自分の詩にメロディをつける。このギターを奏でて」


「いいじゃん!ギターは弾けるの?」

「弾けない。でもオレなら出来るようになる」


「ふうん、いいんじゃない?」


青年はモモにお代を払って、店を去ろうとする。
扉が閉まるその寸前、青年は振り返ってモモに言う。

「生きがいは自分で作っていくよ」


そうやって青年は詩と古びたアコースティックギターと共に店をあとにした。

おしまい

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大人たちの物語リレー。
さっさくスタートが切られ、バトンが着実に人から人へ。

みなさんの書く力に圧倒され、私も創作意欲が掻き立てられました!


ありがとうございます。

こうやって物書き同士交流をするのは初めてなので、とても嬉しいです。

みなさん文才もさることながら、人柄が素敵で、どんどん好きになっていきます。




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