🌙焼けた喉に咲く白い花
ずっと右の喉が痛い。
喉が焼けるように痛い。
そして、その痛い箇所がいつまでもいつまでも何の変化もなくずっと痛い。
なんとなく、風邪の炎症ではないなと感じていた。
喉に炎症があるので、咳の発作が出る。
仕事でお客様と話をしていて、咳の発作が出てしまい、同僚のナイスフォローで代わってもらったり。
夜中に三度ほど、突然激しい咳で目が覚めたり。
病院に早く行かなければと思いつつ、タイミングを探していた。
昨日、学校も保育園も台風の影響でお休みになったので、仕事もお休みになり、
思い切って子連れで午前中に近くの新しい耳鼻咽喉科に予約を取った。
症状を話すと、すぐさまファイバースコープを取り出してくれた。
スコープの細いカメラはミミズの壁のようなひだがあるトンネルをぬるぬると進んでいく。
「・・・見た感じどこにも炎症ありませんね。
そのまま、声帯付近まで見に行きますよ。上向いて、声出してね」
「あーーーーー」
一気にカメラはトンネル内部に侵入する。
あ!
画面の真ん中に白い小さな花が咲いている。
真っ白なオオイヌノフグリのようだった。
白いオオイヌノフグリは風に吹かれて、可憐に花びらを膨らませたりしぼめたりしている。花の中央に小さな穴がある。
このヌラッとしたピンクのヒダヒダの中に、こんなに小さなお花が一輪、可憐に息をしていたなんて。孤独なのに、君はいつも歌を歌っていたんだね。
「……強いて言えば、この声帯手前のところがちょっと赤いですね。」
先生の無機質な早口言葉が、ピンクの丘のオオイヌノフグリから私を引き上げた。
———こんな小さな赤み?ほかに何もないの?
「もしかしたら、逆流性食道炎かもしれませんね。げっぷとか出ません?胃薬で様子見ましょうか?それでもだめだったら、内科で再診受けたほうがいいでしょう。スコープで見た様子では、あの赤い一点を残してはどこも健康ですよ。鼻もそんな腫れていないし」
「……たしかに、げっぷとか出やすい体質です。あと、夜寝てるときに突然喉がチリチリして激しくせき込むんですけど」
「じゃ、もしかしたらそうかもね。この胃薬で一発で咳が落ち着く人もいるぐらいだからさ。じゃ、とりあえず1カ月試してみて。」
引き戸をスーッと開けて、診察室を出た。
次女は大きくなった。
暴れることもなく、診察室で針みたいなものが母の鼻に差し込まれる様子をじっと見ていた。待合室で長女は相変わらずYouTubeを見ている。
外は大雨だ。
次女にレインコートを着せて、受付まで行った。
「3,000円です」
・・・・やっぱそうだよね。スコープ使ったからな。
処方箋には、ずらりと薬剤名が羅列されていた。
薬局に行った。ここでも、3,000円払った。
医療費って高いな。
でも、発見があった。
世界に一つだけの花があるんだってこと。
6,000円かかったけど、みんなだれでも一つだけ、体の中に可憐な花を咲かせているってことを知った。ちゃんと生きて歌う花だった。
今は「世界に一つだけの花」と歌うと、まだゲホゲホしてしまうが、誰もがみんなここに咲かせているんだね。
のどの痛みをさすっていたが、小さな花を愛でる手つきに変わった。
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