第2章 限界を超えるには こぼれ話4
こぼれ話4 耳障りのよい名前で盛り上げ?[1]
独創的な研究により新しい現象が発見されたり新しいものが発明されたりすると、それに名前をつけるのに苦労します。原理に立ち返り、現象の本質を的確に表す言葉を探す必要があるからです。その名前が本質をとらえ、かつわかりやすいと今後の研究開発の発展にも役立つでしょう。最近では漢字ばかりを使うのではなく、片仮名も使った名前の方が耳触りがよく、流行っているようです。
しかし耳触りの良さが優先し原理に立ち返えらないまま名前をつけてしまうのは、新発見や新発明に見えてもその原理に新規性がないからでしょう。たとえば現代物理学の基礎である量子論を使わないと説明できない新現象と謳っていても、実は古典論で十分説明できる現象であったり、ナノ寸法空間ではじめて見られる新現象と謳っていても、巨視的寸法空間で見られる現象の延長である場合もあります。
日本人は古くから欧米に追いつけ追い越せの努力をして多くの成果を上げてきました。今後、もし欧米発の耳触りのよい名前につられてその研究の後追いをすることになるとすれば、それは問題です。追いつき追い越すために技術ロードマップなどが策定され、多くの研究者がその研究分野を盛り上げます。遂には欧米を追い越す弾みをつけることも可能となります。
しかし真に独創的な研究は多くの研究者が同じ流行を追って仲間内で盛り上がっているようなものとは異質でしょう。この点に注意し、新しい原理の本質を捉えた名前をつけることのできる研究開発をしたいものです。
脚注
1 本稿は私が著者となり自費出版した「光科学技術革命 ドレスト光子はやわかり」―異次元の光技術入門― (丸善プラネット、2014年3月)の第2.4節の一部の文章と図を適宜アップデートしたものです。

