断りかたがわからないので、言われるがままにどんどん付き合ってしまっていた若いころ、その①
地下鉄や私鉄を乗り継いで、だいぶんの距離を大学まで通っていた。
そんな時間がもったいなくもあり、アルバイトも沢山したいと思ったので、ひとりで大学の近くに暮らすことになった。
アルバイトはイタリアンレストラン。
とても広い店で、タイトスカートに低めのパンプスに慣れられず、良くつまずきかけていた。
バイトリーダーの女の子は年がひとつ上で、長崎が出身とのことだった。英語の専門学校に通っていて、外国人とも積極的に話をしていた。
とても快活でみんなをよく束ねていて、今度の休みの日、バイトのみんなで遊びにいこうと計画立ててくれていた。
持ち寄りバーベキューを近くの公園のBBQサイトでするという。
日焼けするので、気が進まなかったが、バイトリーダーの女の子が熱心に準備しているので、参加に○をした。
持ち寄りだが、当時の私はあまり気の利いた料理ができなかったので、にんじんや椎茸を串に刺して持って行った。みんなで食べるお菓子やおにぎりも買った。
あまり飲めなかったので、ファジーネーブル的なアルコールもたくさん買った。
女子は5人、バイトリーダーありさちゃんと短大生の里穂ちゃんと服飾専門学校のりえちゃんと帰国子女のひかるちゃん、そこら辺の女子大の私。
シフトで名前しか知らない子が何人かいて、男子もクサナギ君以外あまり面識がなかった。
同じ県出身のクサナギ君は国立大の理学部の一年生。低い声でめちゃくちゃゆっくり話す。
体育大学でバスケのレギュラーだというモリ君はひざのお皿にヒビが入ったとかで、歩きづらいからバイトは休んでるけど、どうしても来たくて。
背が高くてイケメンのキムラ君、髪がサラサラのイナガキ君は工業大で2人とも土木を専攻していた。2人の掛け合いは女の子に大人気で、バイトリーダーや他の女子大生に囲まれている。
今日はナカイ君は?
ウインドサーフィン部の練習があるらしい。マリーナ、公園の向こう側だし、後でみんなで見に行く?
りえちゃんとひかるちゃんは見に行ったことあるの?
ナカイ君カッコ良さそうだね!
1番若い社員さんのカトリさんは?
誘ったけど返事がなかったよ。きっとデートだよ。
いまさらだけど、人見知りってどんなふうな人の事だろう。
私は話しかけてくれたら話せるので、とっかかりが探し切れないだけだ。
大縄跳びもいつ入っていいかわからないし、お雑煮のお餅もいつ飲み込んでいいかわからない。
タイミングをつかめないだけだ。
てりちゃん、実家○○なの?すごい遠くの大学じゃない?通ってる?
男の子は基本は早口。(だと思っている)
だけどクサナギ君のゆっくりした話し方はすごく聞き取りやすくて安心できた。
クサナギ君が気を使ってどんどん輪に入れてくれようと話しかけてくれる。
クサナギ君の大学も便利なとこにあるけど、、、クサナギ君は通ってるの?
僕はナカイ君と同じ学校なんだ。ナカイ君はウインドサーフィンだけど、僕はヨット部でマリーナで会うことがあって、仲良くなった。それでバイトも紹介で入った。
荷物が多くて車で来ることもある。
大学の授業は忙しくて、部活やバイトもあってなかなか遊ぶ暇もない。
今日は久しぶりに遊べて嬉しい。
とゆっくり話してくれた。
てりちゃんこのあと空いてる?
と聞いてきた。
ヨット見に来ない?
見た事ある?
近くでは見たことないわ。
みんなで一緒にナカイ君を見に行くんでしょう?
ナカイ君のクラブハウスは反対側にあるんだ。
クサナギ君のヨットと一緒には見られない?
そんなことはないけど、、
また違うとき見にきてくれる?
わ、私?
てりちゃんいつも忙しい?
ここ。
ここで、単独で誘われていて、見に行ったら2人でお茶に行くなり、ごはんに行くなりで、2人だけの行動になってしまうのが、見えている。
普通の女子はここで先が見えるから留まり、進まない。
進む返事をしてしまうと、クサナギ君に興味がある、という解釈をされてしまう。
当時の私は、普通の女子ではなく、オカシイ女子だったので、
ううん、忙しくない、見に行く。
と答えてしまっていた。
そしてもっといけないのは、昼間は働いて、夜に大学に通っていた苦学生の彼氏がいた。
にもかかわらず。
良くないことが分からないわけでもなかった。
だけど、誘ってくれてるから、断るのは悪いと思ってしまっていた。
2週間ほどたった土曜日の昼下がり、クサナギ君の大学の駅に向かった。
