奇をてらう(#せりふ三題噺)
賢人は落ち着きなく周囲を見回した。
「いよいよだな⋯⋯」
眼の前に、鈍い光を放つ銀色の蓋で覆われた皿が運ばれてくる。
「挑戦者一人目の料理は、ピリッと辛い、サンバルソースが効いたナシゴレン」
司会の声と共に、料理が姿を現した。
「おお⋯⋯」
賢人はごくりと唾を飲み込む。ふわりと立ち上る湯気が香ばしい匂いを運んできた。
一口食べる。
「この企画は、お題に沿って挑戦者が創作した料理を、審査員が評価するものです。審査員には多数の応募があり、厳正な抽選の結果当選した方々が、本日この席に座っておられます」
首を傾げ、また一口。
「今回のお題は、『サンバルソース』。挑戦者には、味見た目共に創意工夫に富んだものを作ることが期待されています」
手が止まる。
「審査員たちの手が止まりました。味に何か違和感があるのでしょうか。見た目は美味しそうですが⋯⋯」
点数を書き込む。
「審査結果は最後に公表されます。次は、挑戦者二人目の料理です」
ガラガラと大きなワゴンが運ばれてきた。
「二人目の挑戦者が作ったのは⋯⋯えー、『豚の丸ごと氷サンバルソースを添えて』です」
インパクトがあり過ぎる名前と見た目に、目を剥く。
「これはきついって」
思わず呟きがもれた。
「丸ごと氷とありますが、豚そのものを凍らせたというよりは、豚の形をした氷の彫刻ですね。中に入っている赤色が、サンバルソースなのでしょう。豚のピンク色を再現したかったとのこと」
「サンバルソース、『添える』どころかメインじゃん。しかもピンクじゃなくて真っ赤」
どうやって食べたらよいか、見当もつかない。しかも、あれだけ真っ赤なところを見ると、たぶんけっこう辛い。そして、見た目がかなり怖い。
「えー、かなりの熱量で作られたことがわかる、素晴らしい芸術作品です」
たしかに、氷で豚の彫刻を創り上げる腕前は認めねばならない。しかし。
「審査には、味と見た目の両方が関係してきます。果たして結果はどうなるのか⋯⋯」
その前に、誰かこれの食べ方を教えてくれ。
こちらのお題で書かせていただきました。
画像は、みんなのフォトギャラリーよりお借りしました。こちらは怖いどころか、かなりかわいい豚さんです。
