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創作ノート 六|それだけはだめだよと言った男を書いたあとに、彼を”いい話”にしていいのか迷った理由



この話だけ、
書き終えたあと、
消そうかどうか迷った。

理由は、
彼が良く見えすぎるからだ。

「それだけは、だめだよ。」

その一言のせいで、
彼はまるで、
誠実な人みたいに読める。

でも、本当にそうだったのか。

恋人がいる私に、
一年も付き合った時点で、
彼はもう十分、
ルールを破っていた。

家には入れてくれなかった。

好意も、
見せてはいけなかった。

それを決めたのは、
私じゃない。

彼だった。

なのに、
最後の最後だけ線を引いて、
「だめだよ」と言ったことで、
まるで彼が誠実だったみたいに、
この話は締まってしまう。

書きながら、
それが気持ち悪かった。

都合がよすぎる。

一年間、好きにさせるだけさせて、
最後だけ、「そこまではしない」と、
自分だけきれいなところに立った。

そう見ることもできた。

でも、それだけじゃないとも思った。

彼は、私に触れなかった。

それは、私を守ったのか。

自分を守ったのか。

たぶん、両方だった。

書きながら、どちらか一つに決めることを、
やめた。

彼を悪者にもしない。

いい人にもしない。

決めないまま、書き終えた。

読んだ人には、
きっと「素敵な話」に見えると思う。

でも私は、最後まで、彼を信じきれていない。

それでも、心を置いて帰ったのは本当だ。

矛盾したまま、両方本当だった。





▶︎元になった作品はこちらです。
私が出会った愛すべき男たち|それだけはだめだよと言った男

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