創作ノート 七|親友の彼氏だった男を書いたあとに、タイトルに違和感が残った理由
このシリーズには、
「愛すべき男たち」というタイトルをつけた。
でも七話目を書き終えて、
初めて引っかかった。
この話、主役は男じゃない。
彼のことは、正直あっさり書けた。
呼び出されて、断れなくて、
それだけの関係だった。
好きだったわけでもない。
思い出すことすら、あまりない。
なのに、彼女のことになると、筆が止まった。
ご飯を作ってくれたこと。
名前を呼んでくれた声。
落ち込んだ日に、外に連れ出してくれたこと。
そっちの方が、何倍も鮮明だった。
書きながら気づいた。
このタイトルで書いていいのは、
七話のうち六話だけだ。
この話だけ、
「愛すべき男」の話じゃない。
「裏切った女」の話だ。
彼を主役にして書けば、
このシリーズの型は保てる。
でも本当は、私が書きたかったのは、
彼のことじゃなかった。
人を大切にできる人を、
大切にできなかった自分のことだった。
それでも今回、タイトルは変えなかった。
変えなかった理由も、書きながら分かった。
「愛すべき男たち」というタイトルの下に、
この話だけ違う質のものを紛れ込ませておく方が、正直だと思ったからだ。
きれいに揃えたシリーズより、
一つだけ揃わない話がある方が、
本当のことに近い気がした。

▶︎元になった作品はこちらです。
私が出会った愛すべき男たち|親友の彼氏だった男
