純文学|名前なんてつけてあげない
愛なんて見えない。
ただ言葉があるだけ。
じゃあこれはなに?
心がぎゅうぎゅうにされる気持ち。
どこにでもスマホを持って、
毎晩来るか来ないか、
わからないLINEを待つ気持ち。
欲にまみれたあさましい熱が、
胸の奥でくすぶっている。
愛と名前をつけるの?
私はあの日を境に、考えるのをやめた。
選ばれない方になった日のこと。
LINEの通知なんて見てもいいことない。
偶然目に入ってしまった。
見ないふりをしようと思った瞬間、
とっさに声が出てしまった。
「今の何?」
いつもと違う声色。
聞かなきゃよかった。
心の中で自分をなじる。
選ばれてる側だと確信していて、
気にもしていなかった。
そんな恐れがあったなんて。
その間も、心は無防備のまま。
傷ついたら一巻の終わり。
平穏だと思い込んでた日々が、
想い出という名で、私の首を絞める。
自分で絞めていた。
ずっと。
思えば、兆候はあった。
一緒にいても、スマホに夢中。
話すタイミングを伺う。
画面の光だけ、顔を照らしてた。
私はあえて気にしないふりをしていた。
急に予定をキャンセルするようになった。
置いて行かれた気持ちになっていた。
でも、薄々気づいていても、
核心に触れられない。
何かが崩れるのが怖かった。
それなら自分で壊してやろうか。
愛ごと、気持ちごと、
全部なかったことにしてしまおう。
名前なんてつけてあげない。
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