「この部屋、やめた方がいいです」私が止めた理由を、彼女は最後まで聞かなかった
これは、私が不動産業に入ってまだ2年目の頃の話です。
今でも思い出すと、少しだけ背中が冷たくなる出来事でした。
春先の夕方、ひと組の若いカップルが来店しました。
20代前半くらいでしょうか。
彼女が主導で物件を探していて、彼氏は少し控えめな印象。
「とにかく安い部屋がいいんです」
その一言が、妙に印象に残っています。
不動産の現場にいると分かるんですが、
“安さだけで選ぶ人”は、だいたい何かを見落とします。
私はいくつか物件を出しました。
その中に、ひとつだけ気になる部屋がありました。
・駅徒歩5分
・内装リフォーム済み
・家賃は相場より1万円安い
一見すると、かなり良い条件です。
でも私は、その部屋を見た瞬間に思いました。
「これは、あまり勧めたくない」
理由はシンプルです。
過去の入居者が、短期間で何人も退去していたから。
事故物件ではありません。
記録上は「生活環境が合わなかった」としか書かれていません。
でも、この仕事をしていると分かるんです。
こういう物件には、だいたい“理由”があります。
「別の物件も見てみませんか?」
私はやんわりとそう言いました。
でも彼女は即答でした。
「ここでいいです」
その強さに、少しだけ違和感を覚えました。

内見に行ったのは、その日の夕方でした。
外観は普通。
エントランスも特に問題なし。
でも——
中に入った瞬間、ほんの少しだけ空気が重い気がしました。
気のせいかもしれません。
でも、この“なんとなく”を軽視すると、大体あとで後悔します。
部屋の中はきれいでした。
リフォーム済みで、清潔感もある。
彼女は嬉しそうに言いました。
「ここ、めっちゃいいじゃん」
そのとき、私はある一点に気づきました。
ベランダ側の壁だけ、微妙に色が違う。
塗り直されている。
「ここもリフォームしてるんですか?」
彼女が聞いてきました。
「ええ、細かい部分も含めて」
私はそう答えました。
本当のことは言いませんでした。
言えなかった、という方が正しいかもしれません。
彼女はその場で申し込みを決めました。
私は最後に一言だけ言いました。
「もし何かあったら、すぐ連絡してください」
彼女は笑って言いました。
「大丈夫ですよ、気にしすぎですって」
それから2週間後。
閉店間際に、電話が鳴りました。
あの部屋の入居者でした。
出た瞬間に分かりました。
声が違う。
「すみません…相談いいですか…」
震えていました。
「夜になると、音がするんです」
最初は上の階の足音だと思ったそうです。
でも違う。
音は——壁の中から。
「コン、コンって…叩く音がするんです」
私は言葉を失いました。
「あと…ベランダ側の壁だけ、夜になると冷たいんです」
彼女は、その後すぐに退去しました。
理由は「精神的に耐えられない」とのことでした。
「こういう経験ある人います?」
「これ、気づいてましたか?」
ここまでを「怖い話」で終わった人は、正直もったいないです。
この話の本質は、心霊ではありません。
「不動産には、表に出ない危険サインがある」ということです。
そして、それは誰でも見抜けるものです。
ただし——
知らない人は、確実に外します。
次回は、不動産の現場で実際に見てきた
"絶対に避けるべき物件の特徴"
"営業が言わない“本当の理由”
"内見で分かる違和感チェックリスト"
をお話ししますね。

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