第20回|失注顧客を捨てない|過去の商談を次の受注につなげる
今回は、
何を残せば「顧客資産」になるのか。
という話を書きました。
会社名や担当者名。
電話番号やメールアドレス。
商談履歴。
これだけでは、顧客資産としては不十分です。
本当に残すべきなのは、
顧客の課題
背景
意思決定構造
判断基準
ネック
次回アクション
といった、
次の営業判断に使える情報
です。
そして、こうした情報が最も活きる場面の一つが、
失注顧客への再営業
です。
多くの会社では、
案件を失注した瞬間に、その顧客への営業が止まります。
でも実際には、
失注顧客の中には、
まだ受注可能性が残っている会社がかなりあります。
今回は、
失注顧客・休眠顧客を「終わった案件」ではなく「将来の営業資産」として扱う方法
を整理します。
この記事で得られること
今回は、
なぜ失注顧客を捨ててはいけないのか
失注理由ごとにどう管理すべきか
再アプローチのタイミングをどう決めるか
休眠顧客を営業資産に変える運用方法
を整理します。
ポイントは、
失注=終了ではなく、状態が変わっただけ
と考えることです。
結論
失注顧客は、
「受注できなかった顧客」ではありません。
正確には、
「その時点では受注条件が揃わなかった顧客」
です。
例えば、
予算がなかった
タイミングが合わなかった
社内稟議が通らなかった
他案件を優先した
競合を選んだ
担当者が変わった
こうした理由は、
半年後、1年後には変わっている可能性があります。
だから重要なのは、
失注したことではなく、
なぜ失注したのか
そして、
いつ再アプローチするのか
を残すことです。
新規顧客より、失注顧客の方が情報を持っている
新規営業を考えてみます。
まったく接点のない企業に電話する。
担当者を探す。
課題を聞く。
ニーズを確認する。
意思決定者を探す。
提案する。
ここまで進むには、
かなりの時間がかかります。
一方、
過去に商談した顧客なら、
すでに、
担当者が分かっている
課題が分かっている
提案履歴がある
予算感が分かっている
決裁者が分かっている
断られた理由も分かっている
可能性があります。
つまり、
新規顧客より、失注顧客の方が営業スタート地点が前にある。
それでも、
失注した瞬間に営業対象から外してしまう会社は少なくありません。
これは、
かなり大きな機会損失です。
「失注」という一言でまとめてはいけない
失注管理でよくあるのが、
ステータスを、
「受注」
「失注」
の2つだけにすることです。
これでは情報が粗すぎます。
例えば、
A社は価格負け。
B社は予算延期。
C社は社内稟議停止。
D社は競合採用。
E社は担当者異動。
全部「失注」です。
でも、
次の打ち手は全く違います。
だから、
失注顧客を資産化するなら、
失注理由を分類する
必要があります。
私なら、失注理由をまず6種類に分ける
最初から細かくしすぎる必要はありません。
まずは6種類程度で十分です。
① 予算
予算がない。
予算確保できなかった。
予算額と提案額が合わない。
② タイミング
今ではない。
優先順位が低い。
来期以降に検討。
③ 競合
競合に決定。
既存取引先を継続。
別サービスを採用。
④ 社内事情
稟議が通らない。
組織変更。
担当者異動。
社内プロジェクト停止。
⑤ 提案不足
価値が伝わらなかった。
費用対効果が不明。
提案内容が顧客課題と合っていなかった。
⑥ ニーズ消滅
課題そのものがなくなった。
事業撤退。
方針変更。
この分類だけでも、
再営業の精度はかなり変わります。
「失注理由」と「再アプローチ時期」をセットにする
失注理由だけ残しても、
まだ不十分です。
重要なのは、
次にいつ動くか
です。
例えば、
予算理由
「来期予算で再検討」
なら、
予算策定時期を確認する。
例えば10月に来年度予算を決める会社なら、
9月に再提案する。
タイミング理由
「半年後に再検討」
なら、
半年後に自動で営業対象に戻す。
競合理由
競合契約が1年更新なら、
更新3か月前に接触する。
担当者異動
後任者着任後、
1〜2か月程度で再接触する。
つまり、
失注した瞬間に、
次回営業日を決める。
ここまでやると、
失注案件が営業資産になります。
「また今度連絡します」は管理ではない
営業現場では、
よくこんな会話があります。
「今回は見送ります」
「分かりました。またタイミングを見てご連絡します」
これで終わる。
問題は、
「タイミングを見て」
です。
これは、
ほぼ管理されません。
営業担当者の記憶に頼るからです。
半年後、
本人も忘れています。
だから、
「また今度」ではなく、「いつ」を決める。
例えば、
「来年度予算検討が10月とのことなので、9月第2週にご連絡します」
ここまで具体化する。
CRMや顧客管理表にも、
9月10日再アプローチ
と登録する。
これだけで、
再営業が仕組みになります。
休眠顧客も同じ
過去に取引があったが、
今は取引がない。
こうした顧客も、
非常に重要な営業資産です。
例えば、
過去3年間取引なし
以前は年間500万円取引
担当者変更後に接点消滅
商品変更で取引停止
こうした顧客は、
完全新規ではありません。
過去の関係があります。
だから、
新規開拓と同じ方法で営業する必要はありません。
例えば、
「以前〇〇でお取引いただいていましたが、その後状況はいかがでしょうか」
という入り方ができます。
この差は大きいです。
過去顧客は「掘り起こしリスト」に変える
私なら、
休眠顧客を、
単なる過去顧客リストではなく、
掘り起こし対象リスト
として管理します。
例えば、
顧客最終接点過去取引停止理由現在仮説次回接触A社2024年6月年間300万円担当変更新担当へ再提案余地9月15日B社2023年12月単発案件予算停止今期予算確認10月1日C社2025年3月月額契約競合変更契約更新時期確認11月10日
こうすると、
過去の顧客が、
営業対象として復活します。
「新規開拓数」だけ見ていると顧客資産は使われない
営業KPIも重要です。
例えば、
新規架電100件。
アポ20件。
商談10件。
こうした指標だけを追うと、
営業担当者は新規活動ばかりします。
一方、
過去商談顧客への再接触。
休眠顧客への掘り起こし。
失注顧客への再提案。
こうした活動が評価されなければ、
顧客資産は使われません。
だから、
営業活動そのものを、
例えば、
完全新規
既存顧客深耕
失注案件再営業
休眠顧客掘り起こし
紹介
くらいに分けて見る。
すると、
営業活動のバランスも見えます。
顧客資産化は「顧客数を増やすこと」ではない
ここは重要です。
顧客データベースに、
1万社登録されている。
それだけでは、
顧客資産が1万社あるとは言えません。
その中から、
今月営業すべき会社が分かる。
提案すべきテーマが分かる。
過去の経緯が分かる。
誰に連絡すべきか分かる。
次のタイミングが分かる。
ここまでできて、
初めて営業資産になります。
つまり、
顧客資産化とは、
顧客情報を蓄積することではなく、再利用できる状態にすること
です。
100件失注したら、100件の情報が残る会社にする
例えば、
年間500件商談して、
100件受注したとします。
残り400件は失注。
普通なら、
「受注率20%」
で終わります。
でも、
その400件について、
失注理由
顧客課題
決裁者
競合
再検討時期
次回接触日
が残っていれば、
翌年の営業スタート地点は大きく変わります。
400件の営業候補が残っているからです。
つまり、
営業活動は、
売上だけではなく、
翌年の営業母数も作っている
ということです。
この考え方を持つと、
失注の見方が変わります。
営業するほど、次の営業が楽になる会社へ
顧客資産化ができていない会社は、
毎月新規顧客を探します。
翌月もまたゼロから探します。
翌年もまたゼロから探します。
一方、
顧客資産が蓄積される会社は、
営業するほど、
既存顧客
休眠顧客
失注顧客
見込み顧客
が増えていきます。
つまり、
営業活動そのものが次の営業基盤を作っていく。
私は、
この状態を作ることが、
営業を仕組みに変えるうえで非常に重要だと考えています。
明日やること3つ
① 過去1年間の失注案件を出す
何件あるか確認してください。
② 失注理由を分類する
まずは、
予算・タイミング・競合・社内事情・提案不足・ニーズ消滅
程度で構いません。
③ 「再営業可能な顧客」を抽出する
失注顧客の中から、
今後再提案できそうな会社を10社選び、
次回接触日を設定してください。
これだけでも、
顧客リストが営業資産に変わり始めます。
次回
次回は、
「顧客情報を営業会議でどう使うか」
を整理します。
顧客情報を蓄積しても、
誰も使わなければ意味がありません。
営業会議が、
単なる進捗報告の場になっている会社は多い。
第21回では、
顧客情報を使って「次の一手」を決める営業会議
について書きます。
途中参加の方へ
この連載では、
「営業を個人技ではなく、会社に残る仕組みにする」
をテーマに、
営業組織の仕組み化について書いています。
第0回から第16回までは、
営業活動を数字・行動・運用で管理する方法を整理しました。
第17回からは第2章。
テーマは、
「顧客資産化」
です。
営業活動で得た情報を、
担当営業個人の経験で終わらせず、
会社に蓄積し、
次の営業活動に使える資産へ変える方法を整理しています。
プロフィール
みなり|営業を仕組みに変える
営業・人事領域を中心に、
企業の仕組みづくりを支援しています。
営業を、
「できる営業担当者」に依存させるのではなく、
顧客情報・営業プロセス・行動・判断基準を会社に残し、誰でも再現できる状態にする。
このnoteでは、
実際の営業現場で使える考え方や運用方法を、
できるだけ具体的に書いています。
営業を仕組みに変えたい経営者・営業責任者の方に向けて、
再現性のある営業組織づくりを発信しています。
