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2040年、仕事はこう変わる!未来予測から考えるあなたのキャリア戦略

ー miniQa Lab ー
忙しい皆様のために、ヘルスケア市場に関わる調査報告や制度の動向についてピックアップしています!!





要約
本記事では、2040年に向けて日本の「働く」を取り巻く環境がどのように変化し、その中でキャリアコンサルタントにどのような役割が求められるのかについて、詳細なデータや専門家の見解に基づいて解説します。少子高齢化による労働力不足、AIをはじめとする技術の急速な発展、そして社会課題や価値観の変化が、私たちの働き方やキャリアに大きな影響を与えることが見込まれています。このような不確実性の高い時代において、働く個人が自らのキャリアを主体的に築き、幸福な人生を送るためには、キャリアコンサルタントの存在が不可欠となります。記事では、これらの変化がもたらす具体的な影響と課題を明らかにし、キャリアコンサルタントが今後果たすべき重要な機能や、クライアント支援、自己成長、他者との連携において意識すべき点について掘り下げていきます。

今から10年後、20年後、私たちはどのような環境で「働く」ことになるのでしょうか。少子高齢化はさらに進み、多くの人が70歳を過ぎても働き続けるようになるかもしれません。十分な年金が確保できない可能性や、これまでのスキルが将来も求められるのかといった不安も存在します。AIやロボットの進化により、現在の仕事がなくなる可能性も指摘されており、未来に対する展望は希望に満ちたものとは言い難いかもしれません。

一方で、「未来はどうなるかわからないのだから、いまここを生きることが重要だ」という意見も確かに正しいと言えるでしょう。しかし、想定しうる未来を視野に入れ、「働くこと」やキャリアを考えることは、私たちキャリアコンサルタントに強く求められています。

本記事は、キャリアカウンセリング協会(CCA)が2040年の近未来を想定して実施した「2040年の『働く』を考えるプロジェクト」の提言書に基づいています。この文書では、人口動態、技術の発展、社会課題、価値観変化という4つの観点から、2040年の働く環境を分析し、その中でキャリアコンサルタントに求められる役割を考察しています。この記事を読むことで、未来の働く環境にどのような変化が予想されるのか、それに伴いどのような課題が生じるのかを具体的に理解し、ご自身のキャリアや、もしあなたがキャリアコンサルタントであればクライアントへの支援戦略を練る上で役立てていただけるでしょう。未来の不確実性に対する漠然とした不安を具体的な知識に変え、より的確な備えを進めるための指針として、ぜひ最後までお読みください。


●深刻化する人口減少と労働力不足

日本の人口は減少の一途をたどっており、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の総人口は2020年の1億2625万人から2070年には8700万人に減少する見込みです。同時に高齢化も進行し、65歳以上人口の割合は2020年の28.6%から2070年には38.7%へ上昇するとされています。

特に注目すべきは、働く世代である生産年齢人口(15歳~64歳人口)の減少です。この人口は、2020年の7508万人から2040年には6213万人、2070年には4535万人へと大幅に減少することが予測されています。

この人口減少がもたらす最大の課題は、労働力不足です。リクルートワークス研究所が2023年に行った労働需給シミュレーションでは、2040年には1100万人の働き手が不足すると発表されました。この需給ギャップは加速度的に拡大すると見込まれており、現在ですでに人手不足の声が聞かれる様々な業界で、その状況はさらに深刻化すると予測されています。

特に、社会生活を支えるエッセンシャルワーカー(ノンデスクワーカー)の労働力不足が著しいとされています。例えば、ドライバーは約100万人が不足すると予測されており、配送の遅延などが当たり前になる可能性があります。その他、建設、生産、商品販売、介護、接客、保健医療といった職種でも労働供給不足が予測されており、私たちの日常生活に欠かせない領域に影響が出ることが懸念されています。


リクルートワークス研究所は、この労働力不足に対する解決策として以下の4つを提案しています。

1.徹底的な機械化/自動化

運輸業界の自動運転や倉庫作業の機械化、建設現場、生産現場、接客現場での自動化などが考えられます。

ワーキッシュアクトという選択肢
本業以外の社会貢献活動(副業、兼業、プロボノ、地域活動、ボランティア)を広げること。現在でも20~69歳の約4分の1がこれらの活動を行っているとの報告があります。

シニアの小さな活動
70歳を過ぎても無理なく社会とつながり、貢献できる「小さな仕事」の機会を増やすこと。

企業内のムダをなくす
労働供給に制約がある中で、企業内のムダな業務を削減し、効率化を図ること。

これらの対策は、働く個人にとって、雇う側から雇われる側へのパワーシフトや、機械化による仕事内容の変化、仕事観の変化、そして仕事とプライベートの境目が曖昧になるなどの影響をもたらすと考えられています。



2. 技術の発展がもたらす仕事と働き方の変革

技術の発展は、ビジネス、働き方、そして仕事そのものを大きく変えると予測されています。なくなる仕事もあれば、新しく生まれる仕事もあるでしょう。

例えば、書店数やデジタルカメラの出荷台数の激減は、技術発展が仕事に大きな影響を与える具体例として挙げられています。特に情報通信分野の発展は凄まじく、指数関数的に発展すると言われており、AIによる翻訳技術の向上などがその一例です。

AIやロボットによる仕事の代替可能性についても多くの研究がされており、オックスフォード大学の研究では、全職種の半数以上で自動化する可能性が50%を超えていると発表され、大きな衝撃を与えました。日本でも、野村総合研究所との共同研究により、日本の労働人口の49%がAIやロボットによって代替可能であることが発表されています。代替可能性が高い職種として、一般事務員やレジ係、タクシー運転者などが挙げられています。

ただし、技術的に可能なことと、それが実際に社会に浸透することとは異なります。テレワークのように、技術的には可能でも社会全体で必ずしも広がりを見せていない例もあります。また、機械やコンピュータに置き換えられるのは「タスク」であって「ジョブ」ではない、という指摘もされています。AIは定型的なタスクを代替・補完する一方で、非定型的なタスクや創造性の発揮が期待される仕事は人間に残る可能性があります。AI導入は、サービスの受け手の抵抗が大きい職業では人の関与が残り、生産性と質を高める可能性も示唆されています。

いずれにしても、技術発展のスピードは従来よりも速くなっており、私たちの仕事や働き方が激変していくことは確実だと考えられています。変化に対応し、環境に適応するスタンスが、働くすべての人に求められるでしょう。



3. 多様な社会課題と「働く」への影響

2040年の「働く」を考える上で、いくつかの重要な社会課題が関連するとされています。

少子高齢化の影響
人口動態の変化に伴い、社会保障給付費の負担が増加しています。このため、高齢者に長く働いてもらい、社会を支える側になってほしいという要請が強まるでしょう。実際、2021年4月には70歳までの就業機会確保が努力義務化されており、2040年には70歳を超えて働くのが「当たり前」の時代になると思われます。

関係性の変化
未婚率の上昇や高齢化により単身世帯が増加し、企業や地域でのつながりが希薄化しています。政府は孤独・孤立対策担当室を設置するなど対応を進めていますが、日本人の約4割強が孤独を感じているという調査結果もあり、失業中の人はさらに孤独を感じやすい傾向があります.職場での孤独・孤立を軽減することが、社会から孤立する人を減らすことにつながると考えられています。2040年に向けて、意図的に「つながり」を作ることがより求められるようになるでしょう。

多様な人材の活用
生産年齢人口の減少により、女性、性的マイノリティ、高齢者、外国人、障害者など、多様な属性の人々と働くことが一般的になると予測されています.人材不足に伴い、組織側から個人側へパワーがシフトしていくため、組織は個人の多様な価値観や働き方に耳を傾ける場面が増えるでしょう.職場では、多様性を尊重し、それぞれの持ち味を活かすインクルーシブなマネジメントが求められます。また、働く個人には「主張する技術」と「傾聴する技術」が重要になるとされています。

社会課題の解決を企業に求める流れ
人権問題や環境問題など、社会課題の解決に企業が積極的に関与することが求められるようになっています.SDGsやステイクホルダー資本主義といった考え方が広まる中で、環境保護への貢献、地域社会への投資、従業員への公正な待遇などが企業に期待されています.日本でも、社会的課題解決を意識する企業は増加傾向にあり、社会課題を解決しようとしている会社かどうかが企業選びの選択肢になりうるでしょう。企業の掲げる「パーパス」が、働く人の共感を得て、働く意味の一つになる可能性も指摘されています。



4. 価値観の変化と高まる将来不安

人口動態や技術発展に比べて予測が難しい価値観の変化ですが、いくつかの傾向が見られます。

働く目的については、「お金を得るために働く」と回答する人の割合が増加傾向にあります。内閣府の調査では、2024年には「お金を得るために働く」が62.9%となっています。統計数理研究所の調査でも、お金があれば働かないと考える人が増えている傾向が示唆されています.新入社員の意識調査でも、仕事はお金を稼ぐための手段であり、仕事そのものの魅力は減っていると認識されている様子がうかがえます。

また、将来に対する不安は増加傾向にあります.内閣府の調査では、「老後の生活についての不安」「今後の収入や資産の見通しへの不安」など、多くの項目で不安を感じる人が増えています.少子高齢化、生産年齢人口減少、技術発展、地球環境悪化などが不安の要因となっていると考えられています.

このような不安に対して、人はお金を貯める、健康に留意する、雇用される力を高める、「つながり」を作るといった対策を講じますが、不安を完全に払拭することには限界があるかもしれません.そのため、不安に対する耐性を高めること、すなわち困難から立ち直る力であるレジリエンスや、答えの出ない状況に耐える力であるネガティビティ・ケイパビリティを高めることが求められるとされています.レジリエンスを高める要因としては、コミュニティの存在や身体運動、思考の転換などが挙げられています.ネガティビティ・ケイパビリティは、宙ぶらりんの状態に耐え抜く力であり、これらを高めるためのキーワードとして「希望」が挙げられています。



5. キャリアコンサルタントの未来予測と現実のギャップ

キャリアコンサルタントを対象とした調査によると、2040年の日本社会の変化に対して、やや「悲観的」な見通しをもっており、かつやや「過剰に」見積もっている様子が見られます.これは一般就業者と比べた場合にも、現実のトレンドと照らした場合にも指摘される事実です。

例えば、公的年金受給開始年齢が遅くなる、格差が広がっている、生涯未婚率が高まっているといった変化は高い確率で実現すると予想されています.一方で、ベーシックインカムの導入や出生率の上昇といったポジティブな変化については、可能性が低く見積もられています.全体的に、社会のポジティブな変化については可能性が低く見積もられており、やや悲観的な見通しが目立つとされています。

キャリアコンサルタントは一般就業者よりも変化に「敏感」であり、よりダイナミックに変化するという見通しのもとキャリアカウンセリングを行っていることが示唆されます.裏を返せば、クライエントはキャリアコンサルタントよりも未来を「のんびり」「楽天的に」考えていることが多いということです。

ただし、キャリアコンサルタントの未来予測には慎重さが求められる項目もあります。例えば、転職や雇用の流動性については、確かに増加は見込まれるものの、転職率の中長期的実態を見れば景気に左右されながらほぼ横ばいの傾向が続いており、キャリアコンサルタントの9割以上が「増える」と見通しているほど劇的に変化するかは不明瞭とされています.解雇規制ルールの緩和や、働く場所の柔軟性(テレワーク)についても、客観的なデータや情報からは、キャリアコンサルタントの見通しほど劇的に進む可能性は低いとされています。

こうした客観的データや情報を見れば、2040年の変化のダイナミズムは、個々の領域ごとに慎重に判断されるべきであると指摘されています.雇用社会の世間のイメージは、メディアや広告、一部の有識者の意見に流されすぎていることも多いとされ、キャリアコンサルタントには冷静かつ客観的に雇用市場を見る目と知識のアップデートが求められるでしょう。



6. 働く個人の未来への備えとキャリアコンサルタントの役割

未来に対する備えとして、一般就業者は「健康に気を配る」「資産形成をする」といったディフェンシブな行動を重視する傾向があります.一方で、「資格や高いスキルを身につける」「勉強する」「副業をする」といったキャリアの拡張的な行動の意欲は低いことが気にかかるとされています.これは、国際的に見ても日本の就業者の学習行動が極めて低いというデータとも一致しています.また、「信頼できる人とのつながりを保つ」といった個を単位とした対策が前面に出ており、「地域コミュニティに参加する」といった地縁への意識は低い傾向が見られます。

興味深い分析結果として、自分の未来展望が暗いと感じている人ほど、「つながり」や「学び」といった能動的な行動へのハードルが高くなっていることが明らかになっています.未来が暗ければ暗いほど、そこに防衛的に立ちすくんでしまう個人が増えると解釈できるかもしれません.これは、キャリア課題を抱えるクライエントの未来をサポートする上で重要な視点を提供しています。

このような状況において、キャリアコンサルタントは、クライエントの未来を支援する上で大きな役割を果たすとされています。キャリアカウンセリングは、クライエントが過去や現在を振り返ることで、未来への見通しや行動、意識などを変化させる機会となります.個人の未来展望に対して、キャリアをどう引き受けていくのか、未来への「構え」や「備え」の方向性を変えることが、キャリアコンサルタントの中心的な役割の一つと言えるでしょう。



キャリア対話の具体的な効果としては、以下の6つが挙げられています.

解放: 普段言えない悩みやスッキリ感を感じる効果.

内省: 人と話すことで過去や自身の強みを振り返る機会となる効果.

整理: 思考が整理され、今後向かうべきキャリアの方向性を検討しようとする、前向きな気持ちが醸成される効果.

気づき: 自分でも気づいていなかった潜在的な気持ちに気づく効果.

交響: 職場で言えなかった気持ちを聞いてもらい、対話相手と気持ちを分かち合えて嬉しいと感じる効果.

言霊: 自身の想いを「言葉」にすることで現実をより明示的な形で固定化させる効果.

これらの効果のうち、「解放」「交響」「言霊」といった効果は、聞き手の呼応的な態度を前提としており、AIによる代替が難しいと考えられています.AIはインプットに対して必ず反応するため、そこに独自の効果は期待しにくく、信頼できる他者との「つながり」そのものを提供することもできません。

このように考えると、生成AIが進化しても、キャリアカウンセリングが人間によって行われる意味は失われないでしょう。むしろ、生成AIと伝統的なキャリアカウンセリング手法を組み合わせることで、キャリアカウンセリングのハードルが下がったり、新しい手法が開かれたりする可能性も指摘されています.キャリアコンサルタントは、対話的効果を生み出すことにより、クライエントのより能動的かつ前向きなキャリアへの構えを創るサポートをしていくことが役割になるでしょう.また、一時的かもしれませんが、「信頼して話すことができる人」として、希薄になりがちな他者とのつながりそのものを提供することもできると考えられています.

キャリアコンサルタントは、クライエントの価値観をともに明確にしながら、価値観を尊重できる働き方の選択肢の幅を広げ、選択の先にあるものを一緒にイメージすることがより求められると提案されています.また、クライエントが不確実な未来を思い煩い苦しむことに寄り添うだけでなく、過去から学び、未来に備えて、現在を懸命に生きることを支援する存在であることが理想とされています。



7. 変容する企業と人材マネジメント、そして労働移動

企業を取り巻く環境はVUCA時代と言われるように様々に変化しています.特に、以下の4点が企業のあり方に大きな影響を与えるとされています.

労働力人口の減少
人材不足により、労働市場において働き手の交渉力が相対的に上昇します.企業は人材を選ぶだけでなく、人材に選ばれる競争が激化するでしょう.

経営都合による自由な人材配置の困難化
勤や配属、職種間異動に抵抗がある人が増加しており、個人の意向を経営が考慮せざるを得なくなります.

サステイナビリティへの懸念と企業の役割変化
気候変動などへの対応から、企業の期待は経済的価値の創出からより広い社会的価値の創出へと転換しつつあります.

デジタル技術による産業構造のディスラプション
AIなどの発展により、新しい産業が登場し、既存産業が変革され、多くの業務が自動化される可能性があります.

これらの変化の結果、企業は資本集約度を高めること(機械やITシステムが価値創出を担う)人材獲得競争の中で、働き手一人ひとりの多様なニーズに対応することで働く場としての魅力を高めたりする必要が生じます.また、従来の長期安定雇用を前提とした正社員雇用のあり方が見直され、地域限定や職種限定といった多様な雇用形態の活用が進む可能性も指摘されています.

サステイナビリティ対応やデジタル技術活用に伴い、働き手に求められるスキルも変化するため、企業はリスキリングを推進し、従業員の新しいスキル習得を促す必要が出てきます.リスキリングには、新しい知識やスキルを学ぶだけでなく、新しい環境に適さない行動習慣や考え方を捨てるアンラーニングの側面も含まれます.

さらに、変化が激しい環境下では、組織の様々なレベルで創造性とイノベーションを促すことが不可欠となります.定型的な業務の効率化だけでなく、新しいアイデアの創出や試行が必要です.このためには、標準化された活動を促す「機械的」な組織設計から、個人が自らの意思で新しい仕事のやり方やアイデアを試せる「有機的」な組織設計への転換が有効とされています.上司の役割は、コントロールする管理者から部下の試行錯誤を支援する「規律あるコーチ」へと変化するでしょう.また、外発的動機づけだけでなく、組織のパーパスへの共感や仕事の意義の自覚といった内発的動機づけが重要になります.

このような企業の変革は、労働移動のあり方にも影響を与えます.転職希望者は増加していますが、実際に転職する人はそれほど増えていないギャップが存在します.転職を難しくしている要因として、「保有スキルの理解不足」「望む働き方に合う仕事の不足」「目指す仕事探索の困難さ」が挙げられています.

今後は、構造的な労働供給制約とHRテクノロジーの進化により、スキルや経験をベースとしたマッチングが進展し、多様な雇用契約や働き方の登場によって仕事選びの選択肢が拡大し、AIを活用したキャリアエージェントが浸透する可能性が指摘されています.スキルタクソノミーの活用により、個人の経験やスキルを体系的に棚卸ししたり、必要な学びと仕事を結びつけたりすることが容易になるでしょう.

このような未来において、キャリアコンサルタントには以下の役割が求められるとされています.

選択の意味や目的に関する深い対話
AIは情報整理に長けていますが、個人がなぜその選択をするのかといった意味や目的を深く問いかけることは難しいため、人間による深い対話が求められます.

発達的な視点をふまえたストーリーづくり
過去の情報だけでなく、長期的な視点をもってキャリアのストーリーを描き、より良い選択をクライエントと共に探索することが重要です.

適応のための実践的なサポート
AIの機能を有効なツールとして活用しながら、個人がより活躍するための組織風土や制度設計といった環境づくりへのアドバイスなど、実践的かつ包括的な視点でのサポートが求められます.



8. 「つながり」の希薄化とキャリア形成への影響

現代社会では、職場、近隣、家族といった様々なレベルで「つながり」が希薄化する傾向が見られます.NHKの調査では、職場の「全面的なつきあい」を望ましいと考える人の割合が長期的に低下しており、実際に正社員の半数近くが職場の人間関係が希薄化していると感じているという調査結果もあります.高齢者の間でも、家族以外の友人がいない人の割合が増加しています.

このような「つながり」の希薄化は、孤独・孤立の問題と関連しており、ひきこもり状態になったきっかけとして「退職」が最も多いという調査結果は、就労支援がひきこもり防止につながることを示唆しています.

これまでは個人が何か行動を起こさなくても自然発生的に「つながり」が存在していましたが、今後は意図的に「つながり」をつくる時代に変わってきており、将来さらにその重要性が増すと考えられています.

良い「つながり」は、キャリア形成、健康、幸福といった側面に良い影響を与えることが様々な研究で示されています.例えば、キャリアに役立つ社外のコミュニティに関わっている人は、そうでない人に比べてキャリアに満足し、幸福感があり、未来への展望が開けているというデータがあります.また、「タバコを吸わないこと」や運動よりも「社会的なつながりを持つこと」が健康につながっているという研究報告や、「お金でも名声でもなく、良い人間関係が人を健康にし、幸せにする」というハーバード大学の研究結果も引用されています.

キャリアコンサルタントは、このような「つながり」の重要性を踏まえて、クライエントを支援することが求められます.

すでにある「つながり」を活かす
クライエントが所属するコミュニティの中で居場所感を持てるよう、貢献できることを一緒に検討し、行動を支援すること.

援助要請の支援
サポートが必要なのに要請できないクライエントに対して、必要なサポートを提供したり、サポートできる人につないだりすること.

新しい「つながり」に導く
既存のつながりでは居場所感が得られないクライエントや、越境を求めるクライエントを、社内越境や社外の「サードプレイス」といった新しいつながりの場に導くこと.社外の場での活動は、自己理解を進め、多様な能力を磨く機会となるでしょう.

おせっかい役を引き受ける
意図的に「つながり」を作る時代には「つながり」の格差が生まれる可能性があるため、つながりがうまくできていないが、「つながり」が必要な人のもとに行き、支援すること。これは、組織内のキャリアコンサルタントにとっても、組織外の人をクライエントとするキャリアコンサルタントにとっても、今後ますます必要になる役割だとされています.



9. 2040年のキャリア教育のあり方

日本のキャリア教育は、若年者の雇用・就業上の問題を解決するという危機意識に基づき、1999年頃から提唱され、法律的根拠も整備されてきました.キャリア教育の目的は、「社会的・職業的自立、学校から社会・職業への円滑な移行に必要な基礎的・汎用的能力の育成」と定義されています.育成すべき基礎的・汎用的能力としては、人間関係形成・社会形成能力、自己理解・自己管理能力、課題対応能力、キャリアプランニング能力の4つが挙げられています.

これからの環境変化が加速する時代において、キャリア教育の重要性はますます高まりますが、その機能を進化させるためにいくつかの新たな視点が提示されています.

キャリア教育の場は学校だけではない
地域クラブや部活動、社会教育、文化活動、ボランティア活動、様々な塾、地域コミュニティ活動など、学校以外の多様な場でもキャリア教育は実践されうる.これらの場では、本来の目的に打ち込みながら、それが自分の人生やキャリアにどのような意味があるかに目が開かれる「学び方を学ぶ」教育が行われる可能性があります.

キャリア教育の担い手は教員だけではない
学校以外の場では、実質的なキャリア教育の担い手も多様化します.児童生徒が幅広い人と出会い、人格的な師(指導者だけでなく、保護者や様々な人間)と出会うことの重要性が指摘されています.

キャリア教育は大学までで終わらない
大学卒業後、社会人になっても、自らが臨むキャリア実現に向けた学びの機会は生涯にわたって必要となるでしょう.特に、加齢や能力要件の変化により現実的な選択肢が減少するほど、それぞれの人生と働くことの意味付け(キャリアの個性化)が重要になります.

学び手と教え手の関係は固定的ではない
地域やコミュニティでの教育では、学び手と教え手の関係は固定的ではなく、互いに学び合い影響し合う流動的な関係となるでしょう.これは、キャリアコンサルティングにおけるキャリアコンサルタントとクライエントの関係性とも共通するとされています.

これらの視点を踏まえ、キャリアコンサルタントは、人生の多様な役割に向き合いながら働き生きていくための学びの意味付けと自己理解・洞察の機会(学び方を学ぶ機会)を提供することが重要になると考えられています.また、労働による社会参加とコミュニティへの帰属によって「共に生きる仲間」と「多様な師」との出会いを実現するための接続を媒介することも、キャリアコンサルタントが果たすべき重要な機能となるでしょう.

将来的には、教育現場だけでなく、地域コミュニティや企業など多くのステークホルダーが連携し、新しいキャリア教育のあり方を模索することが重要であり、その推進をキャリアコンサルタント自らが担うことが求められるとされています.



今後の方向性・施策

2040年の「働く」を取り巻く環境変化に対応し、働く個人が幸福なキャリアを築けるようにするためには、多岐にわたる取り組みが必要です。文書全体を通して、以下の方向性や施策が示唆されています。

働く個人の主体性と学び続ける姿勢の醸成
不確実な未来に対応するため、働く個人が自らのキャリアに主体的に向き合い、変化に対応するための学びを継続していく必要があります.

多様性の受容とインクルーシブな環境づくり
人材不足の中で多様な属性の人々が共に働くことが一般的になるため、企業や社会全体で多様性を尊重し、それぞれの持ち味を活かせるインクルーシブな環境を整備することが求められます.

意図的な「つながり」作りの推進
希薄化する人間関係の中で、働く個人が意図的に良質な「つながり」を築くことの重要性が高まります.企業における職場のつながりのデザインや、キャリアコンサルタントによる新しいつながりへの誘導支援などが有効でしょう.

AIの活用と人間ならではの価値提供
AIが情報提供や定型的なタスクを代替・補完する中で、人間であるキャリアコンサルタントは、クライエントとの全人的で深い関わりや、非言語情報の理解、曖昧さや非合理性への許容性といった人間ならではの価値を提供する必要があります.

キャリアコンサルタント自身のスキルアップと他分野連携
社会全体の変化を継続的に把握し、多様なクライエントのニーズに応えるため、キャリアコンサルタントは自身の専門性を高めると同時に、他の専門家や支援団体、行政などと連携し、包括的な支援を提供できる能力が求められます.

就労困難者支援の強化
キャリアの選択肢が限られる人々や、孤独・孤立に陥りやすい人々など、従来の支援では届きにくかった層へのアウトリーチ支援や、多職種連携による包括的な支援体制の構築が重要になります.

気軽に相談できる場の整備
働くすべての人が、仕事や人生の悩みについて気軽に話ができる相談相手や場所が社会的に整備されることが望ましいとされています.様々なコミュニティに隣接してキャリアコンサルタントが運営する窓口が設置され、働くホームドクターとして認知されるようになることが提案されています.


結び

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