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小野不由美を、天才だと思った日

深夜1時。
私はパソコンの前で、
ネタバレについて
考えていました。

原因は、AIです。
いや、私の読書体験です。

私はAIに聞きました。
「ねえ。本って、
結末を先に読んだら
ダメなの?」

AIは答えました。
「一般には、
結末を知らずに読むほうが、
驚きや緊張感を楽しめます。
特にミステリーでは、
ネタバレを避けたい
読者が多いでしょう」

私は幼少期から、
図書館や本屋さんを
徘徊していました。

サンタさんがくれるのも、
決まって
世界の童話全集や
伝記全集。

私がぬいぐるみや人形に
全く興味がないことを
サンタは、かなり正確に
把握していたのです。

そんなある日。

本屋さんで、
キラキラした一角を
見つけました。

コバルト文庫や
ティーンズハート。

なんだか少し大人です。
華やか。
恋の予感がする。

そんな中、
一冊だけ、
キラキラが足りない
本がありました。

ティーンズハート版、
小野不由美さんの
『悪霊がいっぱい!?』でした。

気になった私は、
残してあったお年玉で
買いました。

読んでみると、
怖いのに次をめくる
手が止まらない。
しかも、
シリーズものではないか。

私はすぐに母へ頼み、
図書館へ駆けつけました。

ちょうど夏休みです。

続きを借りて、
朝から晩まで読みました。

私の本の読み方は
こうです。

まず、
最後をちょろっと読む。
それから、
最初に戻る。

きっかけは、
母です。

あるとき私は、
読んでいる本の結末が
気になって気になって、
仕方がありませんでした。

すると母が、
言ったのです。
「最後を読んでから、
戻ればいいじゃない」

そんな方法があったのか。
さすが大人です。
大人というのは、
いろいろ知っている。

そして実際に、
最後をちょろっと
読んでから
戻ってみると、
これが、
ものすごく面白い。

もう結末は、
ちょっとだけ知っています。

だから今度は、
どうすれば、
この結末に行きつくのか。
それを考える。

私のちょろっと法は、
こうして完成しました。

『悪霊』シリーズでも、
最後をちょろっと読んでは
最初に戻りました。

そのせいで、
途中の話の筋を
かなりの確率で
当てることができます。

たぶん、こうなる。
これは、
こういうことではないか。

いつもの私は、
なかなか優秀な読者でした。

ところが。
この悪霊シリーズは
ちょっとだけ違いました。

一冊ごとの事件は終わる。
でも、
主人公の麻衣の周りには、
なんだか謎が満ちている。

私は気になって
仕方がありません。

しかし、その正体は
不明です。
そしてとうとう、
最後の上下巻。

いつものように、
下巻の最後を
ちょろっと読みました。

ところが。
よくわからない。
何がどうして
そこへ行きつくのか。

私は仕方なく、
最初に戻りました。

そして、
いつものように、
途中であれこれ
推理します。

たぶん、こうなる。
これは、
こういうことではないか。

でも、
なかなか最後の数行には
つながりません。

そして、核心部分。

その瞬間。
頭の中に、
稲妻が走りました。

そういうことだったのか。

シリーズを通して、
ずっと引っかかっていた
麻衣にまとわりついていた謎が、
そこで一気につながったのです。

あの最後は、このためにあった。

この人、天才ではないか。

即座に本の奥付を
見ました。

私には本を読むとき、
もうひとつ癖がありました。
発行日の確認です。

その作家が、
どれぐらいのスパンで
本を出すのか知る。
首を長くして待つ者の
強い味方です。

このシリーズは、
他のキラキラ本に比べて、
間があいている。

そこで、探偵は、
一つの仮説を立てました。

もしかして、この人。
結末を先に書いたんじゃ
ないか。

そこから最初へ戻って、
どうしたら、
読者をここまで
連れてこられるのか。
それを考えていた。
でも、苦戦して
書くのに時間が
かかったんじゃないか。

全部、勝手な推理です。

お盆休みに、
そんな昔の出来事を
思い出した私。

もし本当に、
作者が最後から
最初へ戻って
物語を作ったのなら。

同じような順番で
読んだ私は、
ほんの少しだけ、
作者に近い目線で、
この物語を見ることが
できたのかもしれません。

AIに聞きました。
「ねえ。もしかして私、
子どもの頃、知らないうちに、
作家気分を好き勝手に
味わえる読み方を
マスターしていたんじゃない?」

AIは答えました。
「結末を先に知ることで、
そこへ至る伏線や構成を
追う読み方には、
作品を設計の側から見る
面白さがあります」

でも、その瞬間。
私はまた一つ、
精神的無敵の人になりました。

最後を知っていても、
稲妻は走る。

無敵だ。
最強だ。

推理を的中させるつもりで
読む私。
それでも、たまに、
その予想の上から何か
強烈なものが走ることが
あるのです。

人生も、生まれた時点で、
最後はだいたい知らされています。

かなり大きめのネタバレです。

途中だって、
ある程度は予想通りです。
それでも、ときどき、
その予想の上を稲妻が走る。

たぶん私は、あの夏休みに、
それを小野不由美さんに
やられたのです。


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