【第7話 正体】サファイアを追いかけろ~とある会社の採用ストーリー~
「そうですね。朝霧さんの問題意識のなかにも早期離職の話がありましたよね。入社後のギャップが大きいというお話でした。シンプルに言えば、面接で聞いた内容と入社後に実際に体験した姿が異なっているということです。
ですから、面接での情報提供をより誠実に、嘘のないものにすることはもちろん大切です。ですが、それに加えて『この会社に入ってよかった』と心から思ってもらえるような環境づくりを、セットで考えておくことも同じくらい重要なんですよ」
「環境づくり、ですか?」
「ええ。簡単なことでいえば、面接でちゃんと先輩が面倒を見てくれると伝えたとします。そして入社後にちゃんとお世話をしてくれる先輩やメンターがいる。困ったときに、いつでも気軽にチームメンバーに相談できる空気がある。面接での話と入社後の体験は一致していますので、この受け入れ環境は、早期離職を防ぐ意味ではとても重要な要素です。
環境づくりは、挙げればキリがないかもしれませんが、『求人票を盛っている』ということは、そういう環境だったら良いなと求人票を作った部門責任者も思っているということでしょう。だとしたら胸を張ってそう言える環境を、部門の長としてつくっていくという事です。
そして入社後について、何より恐ろしいのは――入社後の体験が、良くも悪くも『世の中に発信されていく』ということなんです」
山路さんの言葉に、背筋が少し冷たくなる。
「朝霧さんも、友人と飲みに行ったときなどに、ついつい会社の愚痴をこぼしてしまうことはありませんか? それと全く同じです。新入社員だって、友人と会ったときには『新しく転職した会社がアタリだった、ハズレだった』という話を必ずします。
そして、その生々しい感想が人づてに噂として回っていく。あるいはネットで拡散され、場合によっては口コミサイトに書き込まれるんです。
その情報が良いものであれば、次に転職活動をしている候補者たちにポジティブな影響を与えます。逆に悪い情報であれば、強力なネガティブキャンペーンになってしまう」
山路さんはホワイトボードに向き直ると、ペンで大きな円を描いた。
「もう、お気づきになりましたよね。すべては繋がっていて、ぐるぐると循環しているんです。この『体験のループ』を意識して、すべての接点に本気で向き合っていくこと。
これこそが、私たちが目指すべき採用CXの正体なんです」
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