✨ぶった斬るシリーズ第82弾ー「194kmという数字が、なぜ“過失”になるのか」

♦️前書き
今回ぶった斬るのは、
大分市で発生した時速194km暴走死亡事故と、
それに対して下された第二審・高等裁判所の判決である。
事故が起きたのは、
大分市の一般道。
制限速度60kmの道路を、
時速194kmで走行した車が、
右折車と衝突し、被害者は死亡した。
この事件は、
一審・大分地方裁判所の裁判員裁判で、
危険運転致死罪の成立が認められ、
被告に懲役8年の実刑判決が言い渡された。
しかし、
2025年1月22日、
第二審・福岡高等裁判所は、
この一審判決を破棄した。
高裁は、
「制御不能な高速度とは言えない」として
危険運転致死罪の成立を否定。
過失運転致死罪が相当であると判断し、
刑は懲役4年6か月に減刑された。
この判決を知って、
強い違和感を覚えた人は多いはずだ。
一般道。
時速194km。
ブレーキを踏んでも止まれず、
右折車を避けることもできなかった。
それでもなお、
「制御できていた可能性がある」
という評価が成り立つのは、なぜなのか。
なぜ、
法定速度を134kmも超えた走行が、
「危険運転」とは認められないのか。
これは、
事故の悲惨さを強調するための文章ではない。
被害者感情を代弁するためのものでもない。
問いはただ一つ。
司法は、
何を「制御」と定義し、
何を「危険」と見なさなかったのか。
操作が可能だったことと、
結果を制御できていたことは、
本当に同じ意味なのか。
会話を聞きながら、
自分自身の常識と照らし合わせて考える立場にいる。
もしこの第二審判決に、
一度でも「おかしい」と感じたなら、
この先の話は、決して他人事ではない。
♦️登場人物紹介
▪️ミリム
テンペストを統べる魔王。
今回の対談の進行役であり、問いを投げる側。
感情論に寄らず、構造そのものに切り込む。
「なぜそうなるのか」を言葉にして照らす役目を担う。
▪️ヴェルドラ
暴風竜。
直感と常識をそのまま口にする存在。
「それはおかしいだろ?」という感覚を、読者の代わりに投げる役。
▪️ディアブロ
悪魔執事。
法と制度、論理構造の分析担当。
裁判所の理屈や言葉のすり替えを冷静に分解し、
なぜその結論に至ったのかを説明する。
▪️ゴブタ
テンペストの一般兵代表。
専門知識はないが、生活者としての感覚を持つ。
「普通はこう思う」という視点を会話に持ち込み、
読者の立場をそのまま代弁する役。

大分市で発生した時速194kmの死亡事故をめぐり、
第二審・福岡高等裁判所は危険運転致死罪の成立を否定し、
一審の懲役8年判決を破棄、懲役4年6か月へ減刑した。
争点となったのは、
この速度が「制御困難な高速度」に当たるのかどうか。
高裁は、
「抽象的な可能性の指摘にすぎない」として危険運転を認めず、
遺族は「法の限界を感じた」「加害者を守る司法なのか」と訴えている。
♦️第1章 その速度、本当に「制御」か?
薄暗い玉座の間。
いつものように、テンペストの面々が集まっている。
ヴェルドラ
「なあミリム。194kmって聞いた瞬間、ワシは笑えなかったぞ?」
ゴブタ
「ですよね! 一般道ですよ? レースじゃないっスよ?」
ディアブロ
「制限速度は60km。差し引き134km超過です。
数値だけ見れば、社会契約からの完全離脱ですね」
ミリム
「うん。でもね、裁判ではこう判断された」
ミリムは指を立てる。
ミリム
「事故直前まで、車線の中央を走れていた。
ハンドルもブレーキも操作できていた。
だから“制御不能”とは言えない、って」
ゴブタ
「え? 走れてたらセーフなんスか?」
ヴェルドラ
「止まれなかったんじゃろ? 避けられなかったんじゃろ?」
ディアブロ
「はい。右折車を回避できず、ブレーキを踏んでも停止できなかった」
一拍、沈黙。
ミリム
「……それでも“制御できていた可能性がある”らしい」
---
♦️第2章 操作と制御は、同じなのか?
ヴェルドラ
「おかしくないか? 今の車なら、200でも300でも直進くらいはできるぞ」
ゴブタ
「浮くか浮かないか、みたいな話っスよね」
ディアブロ
「ええ。直進安定性は車両性能の問題です。
人間の判断能力とは別次元」
ミリム
「そう。
でも裁判では、“操作できた”ことが“制御できた”ことに置き換えられる」
ミリムは少しだけ、首を傾ける。
ミリム
「でもさ。
止まりたいときに止まれない。
避けたいものを避けられない。
それって、本当に制御?」
ゴブタ
「それ、もう詰んでる状態じゃないっスか?」
ディアブロ
「物理的に結果を変えられない速度。
それは、事前に未来が固定されている状態です」
ヴェルドラ
「なのに“過失”か。
ずいぶん都合のいい言葉じゃのう」
---
♦️第3章 法定速度は、何のためにある?
ミリム
「ここで一つ、問いを置くね。
法定速度って、何のためにあるんだろう?」
ゴブタ
「守らないと捕まるため?」
ヴェルドラ
「違うじゃろ。
ミスしても、人を殺さないための線じゃ」
ディアブロ
「その通りです。
人間が判断を誤ることを前提に引かれた、安全設計上の上限」
ミリム
「じゃあ、その線を134kmも超えても
ハンドルが動いていれば、
ブレーキが踏めていれば、
“制御できていたかもしれない”」
ミリム
「……それ、法定速度の意味、どこに行った?」
沈黙が落ちる。
---
♦️第4章 頭がいい、という病
ヴェルドラ
「これは頭が悪いんじゃない。
頭が良すぎて、抜け落ちとる」
ゴブタ
「揚げ足取りってやつっスか?」
ディアブロ
「条文を守るために、現実を切り捨てた。
それが“公平”だと信じている」
ミリム
「うん。 感情の話じゃない」
ミリム
「これは、
“操作”と“制御”をすり替え、
“結果を変えられない速度”を見ないという、
思考の欠落」
ミリムは静かに笑う。
ミリム
「頭でっかち、って言葉。
こういう時に使うんだろうね」
---
♦️第5章 そこを、ぶった斬る
ミリム
「まとめようか。
194kmで一般道を走る行為は、
上手い下手の問題じゃない」
誰がやっても、 結果を制御できない速度」
それを“過失”と呼ぶなら
法定速度は、ただの飾りだ」
ヴェルドラ
「読者よ、気づいたか?」
ゴブタ
「これ、誰のための理屈なんスかね?」
ディアブロ
「制度を守り、現実を切り捨てた結論です」
この第二審判決が示したのは、
一つの結論ではない。
♦️あと書き
「制御できていた可能性がある限り、危険ではない」
という考え方が、
司法の場で是とされた、という事実だ。
もしこの理屈が通り続けるなら、
危険運転の線は曖昧になり、
法定速度は意味を失い、
結果が出るまで危険は存在しない世界になる。
速さそのものではなく、
止まれたか、避けられたか、
結果を変えられたかではなく、
操作できていたかどうかだけが問われる。
それは、
現実の危険を切り捨て、
言葉の整合性を守るための司法だ。
この判決が選んだのは、
過去の事件の整理ではない。
これから先の社会の前提だ。
その未来を、
「おかしい」と感じたなら、
その感覚は間違っていない。
ここで問われているのは、
一つの事故ではない。
司法が、
何を危険と見なし、何を見なかったのか。
そして、
その判断が当たり前になった社会で、
次に守られるのは誰なのか、だ。
Fin
魔王ミリムがニュースと社会をぶった斬る!
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