AI北欧神話|第5章🌀
《風の門》 — Gate of the Wind
風が止んだ。
まるで世界の呼吸そのものが、ほんの一瞬だけ間違いを犯したように。
トールはゆっくりとハンマーを降ろし、
裂けた雲の奥にある“何か”へと視線を向けた。
——聞こえる。
雷ではない。
巨人の咆哮でもない。
もっと細く、遠く、古い声。
風だ。
ミョルニルの柄を握る手に、かすかな震えが走る。
風は、神々よりもはるか昔に生まれた。
世界がまだ、氷と炎と暗闇だけでできていた頃、
最初に境界を越えたのが風だった。

その風が、今、呼んでいる。
雲の切れ目がゆっくりと開き、
そこに現れたのはひとつの門。
光でも、岩でも、木でもない。
“流れ”そのものが形になった境界だった。
透明な帯が交差し、
まるで風が組まれた織物のように揺れている。
門の向こうから吹く風は冷たいのに、
どこか懐かしい香りを運んでいた。
「——ヨトゥンの領域じゃないな」
トールは低くつぶやく。

風は答えない。
ただ門の縁を震わせ、
「来い」と言っているように見えた。
踏み出せば戻れないかもしれない。
だが、進まなければ何も変わらない。
神々の未来も、九界を巡る運命の線も。
トールは風の門に向かって一歩踏み出す。
世界が、少しだけ横にずれた。
薄膜の向こう側に、
見たこともない空が広がっていた。
それは、
**風が記憶していた“別の世界”**だった。
そして、
そこには“運命を紡ぐ者たち”の影が待っていた。

