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【考察】『良いこと悪いこと』第9話の罠──真犯人「視聴者説」が突きつける残酷なメタ構造

ドラマ『良いこと悪いこと』第9話で判明した宇都見の犯行。しかし予告が告げる「真犯人」とは誰か?本記事では、今國教唆説・加奈身代わり説を論理的に検証した上で、真犯人が「傍観者たる視聴者」を指すメタ表現であると結論づける。SNS時代の考察系ドラマが抱える構造的限界と、物語の真の狙いを解剖する。

#ネタバレ にご注意ください


衝撃の第9話と残された「真犯人」の矛盾

ドラマ「良いこと悪いこと」の第9話は衝撃的であった。

ターボー(森本慎太郎)が殺される場面は真柏の演技であり、思わず心の中で悲鳴を上げてしまった視聴者も多かったのではないだろうか。

間宮祥太朗も顔だけで存在感を示せる稀有な若手俳優であるが、森本慎太郎は負けず劣らずのなかなかの役者である。

ドの子(役名:瀬戸紫苑)は生きていた。キング(間宮祥太朗)たちのいじめにより不登校となり5年生の途中で鷹里小学校を去ったドの子であったが、いじめのトラウマを乗り越え、プロのピアニストとしてコンサートを開くまでに成長していた。

そんなドの子を支えていたのが、婚約者となった宇都見(木村昴)であった。

そんなある日、ピアノを習いたいという娘の花音を連れてキングドの子を訪ねて来たのだ。

キングを見たドの子は、いじめられていた日々がフラッシュバックし、再びピアノを弾くことができなくなってしまった。そして、今から1年前にそれを苦にして自ら命を絶ってしまったのだ。

復讐に燃えた宇都見が、いじめた相手を次々に殺害したというのが事件の真相であった。

ドの子の追悼コンサートで、かつてドの子の心の支えとなったカノンを弾く宇都見の姿は、涙なしには語れぬシーンとなった。

ドの子がそれを望んでいたとも思えないが、宇都見としてはドの子に捧げる鎮魂歌レクイエムのつもりだったのだろう。

宇都見ドの子の婚約者だったなんて聞いてないよぉ…という考察勢の嘆きも一部に漏れ聴こえてきたが、動機にも無理がなく、そうだったんだという納得感もある結末であった。

番組HPでの予告映像通り、以下が明らかとなり、事件は解決かに思われた。

1つ 犯人が判明します。→ 宇都見
2つ 誰かが死ぬ。→ ターボー

しかし、物語はまだ終わっていなかった。

最終話の第10話の予告映像で、「真犯人、だーれだ?」と謳われているのだ。

「真犯人」? ん?

犯人は宇都見で決まりではないのか?

確かに、宇都見ターボーを殺すシーンは放送された。「ぜーんぶ、俺がった」とキングの家を訪ねて告白したのは噓だったのか?

あるいは、宇都見は誰かに操られていただけなのか?

なぜいじめの首謀者と目されるキングだけを殺さなかったのか?

キングに、生き地獄を味合わすためか?

そもそも、なぜいじめの詳細や替え歌を宇都見が知っていたのか?

やはり6年1組の卒業生に協力者がいるのか?

謎は深まるばかりだ…。

しかし、「真犯人、だーれだ?」と言うのは、製作サイドから視聴者への挑戦状に違いない。

筆者は第9話で犯人が明かされるとの告知を見て、第8話までの情報をもとに、ゆっきー(剛力彩芽)が犯人という結論を一旦出している。

しかし、第9話で、新たな事実と謎が加わった。

「真犯人」は誰なのか?

ここは謎を解くべく、挑戦を再び受けて立つしかない!!

犯人 → 宇都見
真犯人 → 誰??

容疑者は、番組HPの相関図に載っている人物で間違いないだろう。

死亡した人物(✖印)と逮捕された人物(△印)に印をしてみたが、だいぶ人数が減ってしまった。残りは14人だ。

「良いこと悪いこと」番組HPより, 「死亡:✖、逮捕:△」を筆者追加
「良いこと悪いこと」番組HPより, 「死亡:✖、逮捕:△」を筆者追加

前回の記事(第8話までの情報で考察)では、順番に容疑者を消しこんで犯人を絞り込むというアプローチをおこなったが、全ての情報が開示されていない状態でこれをおこなうのは少々無理があった。

第9話でも、新たな情報が明らかにされたが、語られていない情報を使えばいくらでもストーリーを組み立てることは可能なのだ。

そこで今回は、犯人として宇都見が逮捕されていることから、宇都見を起点にして「真犯人」を考察してみたい。

多くの人が「真犯人」候補として挙げているのが、今國(戸塚純貴)と東雲(深川麻衣)だ。

ドの子は不登校となった後に、タクト学園という不登校児のスクールに通っていたことが明らかとなっているが、2人ともタクト学園の生徒だったのでは?と疑われているのだ。

その根拠のひとつが、タクト学園のTのロゴマークと今國が店長を務めるスナック・イマクニのロゴマークが酷似している点だ。

また、有料チャンネルのHuluで配信されている「良いこと悪いこと」のオリジナルストーリー(9.5話「犬」)に登場するタクト学園の少女のホクロの位置が東雲と一致するというのだ。

その他にも、東雲のデスクに、行ったことのないはずのスナック・イマクニのコースターが置かれているなどの指摘もある。

考察勢恐るべしだ!

それらがブラフではなく、製作サイドが意図的に仕込んだヒントだとすれば、ドの子今國東雲が親しい間柄であったというのは本当だろう。

もしそうだとすれば、ドの子の親友であった今國東雲が、婚約者の宇都見に協力して犯行をおこなったとする説は、とても説得力があるように思える。

しかし、この構図では、今國東雲は、宇都見「共犯者」に過ぎないことになってしまわないか?

「真犯人」「共犯者」は違う。

「真犯人」 ≠ 「共犯者」

今國東雲は、「共犯者」には成り得るが、「真犯人」とは言えないのだ。

「真犯人」を導き出す3つの仮説ルート

「真犯人」と言うからには、以下のいずれかの条件を満たす必要があると考えられる。

A.「真犯人」に犯行をそそのかされている
B.「真犯人」かばっている
C.「真犯人」はメタ的な表現だった

それぞれの視点で、「真犯人」を探ってみる。

仮説A:真犯人に教唆されている(今國サイコパス説)

宇都見には、キングたちのいじめが原因で婚約者のドの子が自殺してしまい恨んでいるという明確な犯行動機がある。

しかし、宇都見は刑事だ。
そんなに短絡的に犯行を思い立つだろうか?

それほどドの子を愛していたということなのかもしれないが、正義を信条とする刑事としては、犯行に至るまでに多くの逡巡があったハズだ。

宇都見を焚きつけて、闇落ちに誘った人物は誰だろうかと想像を巡らせたら、一人しか思い浮かばない。

そう…スナック・イマクニの店長・今國だ。

2人の馴れ初めから知っている今國なら、その適役と思われる。

飄々とした態度を貫く今國であるが、突如として弱った人の心を巧みに操り連続殺人を行うように仕向けるサイコパスの裏の顔を見せたら、誰しもが驚く結末になるだろう。

その芝居を観てみたい自分が居る…。

今國に巧みにそそのかされた宇都見が、復讐のための連続殺人を実行してしまった…。

「真犯人」は、今國である。

しかし、これでは考察系ドラマというよりも、ホラー系ドラマに変貌してしまうかもしれない。

仮説B:真犯人を庇っている(加奈・真犯人説と花音の秘密)

どちらかと言うと、こちらの方が現実味がある気がしている。

実行犯は別にいた。刑事として捜査にあたっていた宇都見は、「真犯人」に気がついてしまう。しかし、「真犯人」宇都見がどうしても守りたい相手だった。

宇都見が決意したのは、自分が最後の被害者であるターボーを殺害し、それまでに「真犯人」が犯した全ての殺人の罪も一身に被り、「真犯人」を守ることだった。

哀しい決断だが、大切な人を守るためにそのような選択をしたというのも、善悪は別として心情としては納得できる部分もある。

しかし、宇都見がそこまでして守りたかった相手は誰だろう?

最愛の婚約者ドの子はもう既にこの世には居ないのだ。宇都見は誰を守ろうとしているのだろうか?

そう考えた時に浮かぶのは、一人しかいない。

それは、花音(カノン)だ。

ここからはまだ語られていない物語なので、想像力を思いっきり膨らませて考察してみる。

花音は、キング加奈(徳永えり)の娘として描かれている。これがもし養子だったとしたらどうだろうか?

花音は、ドの子が産んだ子供だった。心の支えとなっていた曲カノンを娘の名前とした。しかし、心を病んでいたドの子には花音を育てることができずに、養子に出した。

養子をもらい受け育ててきたのが、キング加奈だったのだ。ただし、キングは、花音の実母がドの子であることを知らない。

愛する人のたった一人の忘れ形見である花音(カノン)。これこそが、宇都見が自分を犠牲にしてまでも守り抜きたかった存在ではないのか?

もちろん、花音は真犯人ではあり得ない。
真犯人は、花音の育ての親である加奈である。

加奈ドの子の姉だった。
ドの子の復讐のため、加奈がいじめを働いた6年1組の卒業生たちを次々に殺していった。

キングもその一員であることはわかっていたが、一緒に暮らすことでキング花音の良き父になろうと努力している姿は知っていたため、ターゲットにはしなかった。

娘に対して「パパはいじめっ子だったんだ」と告白したキングに対して、「別にあなたが子供の頃に良い子だったから結婚したわけじゃない。あなたが良い父親に成れそうだと思ったから結婚したの」と語った加奈の心が痛い。

加奈の犯行に気がついた宇都見は絶望したことだろう。

あろうことか、ドの子の残したたったひとりの娘・花音の養父がドの子をいじめていた首謀者であり、養母が連続殺人の犯人とは…。

花音は、ふたりを本当の父と母だと信じている。もし本当のことを花音が知ったら、心が壊れてしまうのではないか…。

花音を守るために、宇都見は自分が全ての罪を被る決意をし、犯罪者となった。

ターボー(森本慎太郎)を殺した後、キングを訪ねた宇都見キングを殺さなかったのは、花音を父なし子にしないためだったのだ。

キングに対して「お前はずっと悪い子のままでいろ」と告げたのは、「真相を知っても言わずに黙っていろ」という意味だった。

追悼コンサートでカノンを弾き終えた後に、取り押さえられる直前に客席に向かって口パクで「後は頼んだ」と語りかけたのは、「花音(カノン)のことを守ってくれ」というキングへのメッセージだったのだ。

真犯人は、加奈だった。

宇都見は、花音を犯罪者の娘にしたくなかったから、加奈の身代わりとなった。

もし、この説が正しければ、宇都見が最後に弾いたカノンは、ドの子に捧げる鎮魂歌レクイエムであると同時に、花音の行く末を祈る歌でもあったことになる。

とても哀しい物語である。
プロットとしは魅力的だが、辛過ぎて、誰も救われない。

このままで終わってしまっては、後味が悪すぎるかもしれない…。

仮説C:「真犯人」はメタ的な表現(傍観者=我々への告発)

結末として一番可能性が高いと思うのが、予告映像の「真犯人」という言葉はメタ的な表現に過ぎなかったというオチだ。

メタ的な表現というのは、要するに視聴者に向けた番組からのメッセージという意味だ。

本当の意味での「真犯人」は存在せず、犯行は全て宇都見の手によるものだった。

この番組で、視聴者に訴えたかった、考えて欲しかったこととは何だろうか?

どの子(新木優子)やドの子(瀬戸紫苑)を直接いじめたのは、確かに、卒業アルバムで顔を黒塗りされた6人組{キング(間宮祥太朗)、 ターボー(森本慎太郎)、貧ちゃん(水川かたまり)、カンタロー(工藤阿須賀)、ニコちゃん(松井玲奈)、ちょんまげ(森優作)}に間違いない。

しかし、その周りにはそれを傍観していた大谷先生(赤間真理子)や博士(古舘佑太郎)、ゆっきー(剛力彩芽)、トヨ(稲葉友)を始めとする多くの生徒がいたハズだ。

彼らは、いじめに関係がないのだろうか?

周りの誰かが「やめなさい!」「やめろ!」「やめて!」と声を上げていたら、どの子(新木優子)やドの子がトラウマを抱えながら生きていくことにはならなかったし、連続殺人事件は起きなかっただろう。

その意味では、その場にいた全員が加害者なのだ。

加害者という言葉は少し言い過ぎかもしれない。しかし、いじめに傍観者など存在しないのは確かだ。その場にいながら、何もしなかったのなら、加害者と同罪なのではないか?

その意味では、今回の連続殺人の本当の原因=「真犯人」は、その場にいた全員なのではないか?

もし、あなたがかつていじめの現場にいたのに、声をあげなかったとしたら、

あなたこそが、「真犯人」なのではないか?

それが番組から視聴者への問いかけだ。
その言葉は、ナイフのように視聴者の心に刺さってくるかもしれない…


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