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二つの世界が交わる庭で起こる怪異の世界 三好昌子『鬼呼の庭 お紗代夢幻草紙』

 京を舞台に、人と妖と美の物語をほぼ一貫して描いてきた作者が、「庭」をテーマに描く連作集です。庭にまつわる怪事を次々と解決したことから「庭封じ」と呼ばれるようになった庭師の娘・お紗代の目を通して、庭を舞台にさまざまな想いが交わることで生まれる、不可思議な物語が紡がれます。

 父の営む「室藤」が請け負った、大店・丁字屋の寮の庭普請の手伝いに赴いたお紗代。そこで柴垣に囲まれて周囲から切り離された離れの存在を知った彼女は、離れに子供の幽霊が出るという噂を聞かされます。
 そして惹き寄せられるように離れに入り込んだお紗代の前に現れたのは、丁子屋の若旦那・市松と名乗る青年。市松は、この庭一面に咲く韓藍(鶏頭)の花を取り除いてほしいとお紗代に頼むのですが……

 そんな本作の第一話「韓藍の庭」は、以前アンソロジー『もののけ』に発表された短編。その際に好評を博したことから、続編が書き下ろされ、一冊にまとまったものです。
 韓藍の咲き乱れる庭で、この世の者ならぬ存在と出会い、強く惹かれることとなったお紗代。その後もさまざまな庭で起きる不思議な事件に遭遇し、解決することになった彼女は、「庭封じのお紗代」と呼ばれ、さらに怪異に遭遇することになるのです。

 元料亭だった屋敷の庭普請を行った時に出てきた奇妙な形の石と出会ったことがきっかけで、お紗代がこの世のものならぬ奇妙な世界に足を踏み入れる「時迷の庭」 
 二つの事件に関わったことから「庭封じ」と呼ばれることになったお紗代が、庭が自分たちを嫌っていると借り主が次々と出ていってしまう庭に赴く「人恋の庭」   
 継子いじめで死んだ娘の怨念が庭の柳に宿って人を殺したという噂のある廃屋敷で、肝試しをした末に魂が消えたようになった若者を救うため、お紗代が怪異と対峙する「魂消の庭」
 室藤の後継者問題と紗代の縁談で周囲が揺れる中、「神庭守」なる役目についている実家筋の家を訪れたお紗代が、ある霊と出会いその願いを叶えようとする「鬼呼の庭」
 室藤の後継者も決まった一方で、自分の将来に悩むお紗代が自分の秘めた想いと向き合い、進む道を選び取る「言祝の庭」

 全六編は「◯◯の庭」というサブタイトルが示すように、それぞれ庭にまつわる奇譚を描いたもの。それだけでもかなり珍しい作品といえます。

 作中でお紗代の幼馴染で、同じく庭師の子である源治はこう語ります。
「親父は、ごくたまに、人の手には負えん庭が生まれる、て、そない言うんや。庭に想いが宿る、とか……」

 思えば庭は、天然自然の産物を元にしつつも、そこに人間の手が加わってはじめて完成する存在。自然と人間の狭間にあり、そしてその双方と交わるところにある庭が、二つの世界が交わる場所として怪異が起きるのも理解できるように思います。
 そして、一つ一つの庭が異なるように、そこで起きる怪異とそれを題材にした物語の内容が異なるのもまた。

 そして本作の魅力は、こうした題材の面白さだけでなく、そこで展開される生者と死者の、あるいは人間とそれ以外の間の細やかな情の存在にあるといえます。取り戻せない過去への悔恨、美しい過去の記憶、遺してきた者への想い――そんな切なくも美しい想いの交錯の様は、やはり作者ならではのものと感じたところです。
(本作の縦糸となる、この世のものならぬ相手への恋情というのがとくに……)

 そんな物語は、そんな想いの数々を目の当たりにし、自分自身もそんな想いを抱えるお紗代が、自分の歩むべき道を見出したところで終わりを告げます。ほろ苦くも暖かいこの結末もまた、本作に相応しいと感じます。

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