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通算第十作! 貸し物屋、埋蔵金に挑む!? 平谷美樹『貸し物屋お庸謎解き帖 絵草紙と隠金』

 口は悪いが情に厚い貸し物屋の娘店主・お庸が活躍する連作シリーズ『貸し物屋お庸謎解き帖』。この第六作は、白泉社招き猫文庫版から通算して記念すべき第十作となります。今回も客の依頼をきっかけに、人情あり、ミステリあり、怪談ありの物語が繰り広げられます。

前作を紹介したブログ記事はこちら。

 両親を賊に殺され、その仇討ちをきっかけに貸し物屋・湊屋の両国出店を任されたお庸。持ち前の好奇心と頭の回転の早さ、そして真っ直ぐな気性で名物娘となったお庸は、今日も手代の松之助、客の身辺調査などを行う追いかけ屋の綾太郎らの手を借りて、客の悩みやその背後の謎を解決するのです。

 本作に収録されているのは、四つの短編です。
 冒頭の「十六文の貸し物」は、旅回りの越後獅子の子供を描く物語です。幼い頃から親方に芸を叩き込まれ、食うや食わずやの彼らですが、本作に登場する辰吉も、全財産は首に下げた十六文のみという有様。そんな中、辰吉は密かに一座を抜け出し、お庸の出店を訪れます。「無いものはない」という湊屋で、辰吉が全財産の十六文をはたいて借りようとしたものは……

 本作は、これまで「貸し物屋」という看板からは意外とも思えるものも貸してきた湊屋を舞台とした本シリーズならではのエピソード。辰吉の依頼は、ある意味で直球ではありますが、それだけにグッとくる――と思いきや、本作はその先にもう一つ、意外な展開を用意しています。二段構えの泣かせに脱帽の人情物語です。


 続く「風鈴を三十」は、常連の瀬戸物屋の男が、風鈴を三十個も借りに来るという謎めいた導入の物語。戸締まりをしているにもかかわらず、何者かが夜毎店に忍び込み、しかし何も盗らずに去っていく――そんな謎の賊を捕らえるため、鳴子代わりに風鈴を使おうというのです。それを知った追いかけ屋で元盗賊の勘三郎は、用心棒役を買って出るのですが、その晩も何者かは忍び込み……

 冒頭に触れたように、バラエティに富んだ内容の本シリーズは、それだけにどんな趣向(ジャンル)のエピソードが飛び出してくるかわからない作品でもあります。本作もその一つですが、ちょっとした伏線が生きる真相は、やはり泣かせる内容であって――そしてその先のもう一つの結末は、文体も含めて作者が得意としていたあるジャンル(今年久々に新作が刊行された)を思い出させるものがあります。


 そして表題作の「絵草紙と隠金」は、芝居小屋の座付作者の助(アシスタント)・庄之助が、本を借りに来たことで始まります。普通の貸本屋に置いていない本を読みたいという庄之助のために本店に案内したお庸ですが、庄之助はそれがきっかけで次に「日ノ本之隠金」なる本に興味を持ち、今度はそれを借り出すのでした。
 その中にあった八王子城の隠金伝説に興味を持った庄之助は、取材のための旅行にお庸に同行してほしいと言い出します。ふざけるなと断るお庸ですが、本店主人の清五郎はお庸に八王子に行くように言い出して……

 上でバラエティに富んだ作品と述べましたが、お庸が埋蔵金騒動に巻き込まれるとは、さすがに想像を絶するとしかいいようがありません。
 作中でも言及されているように幽霊で現代に至るまで有名な八王子城ですが、埋蔵金伝説が残っているのもまた事実。伝奇ものを得意とする作者らしく、この伝説を活かし、ミステリアスな物語が展開します。

 そしてミステリアスといえば、清五郎の動きもそうなのですが――本作でむしろ気になるのは、清五郎に寄せるお庸の想いの行方です。身分違いとなんとか諦めようとする最近のお庸の姿はちょっと寂しかったのですが、本作では久々に清五郎に会えると挙動不審になるのがなんとも微笑ましいところです。


 そしてラストの「名残雪の別れ」では、なんとお庸の実家に赤子の化け物が出没。元々大工だった実家では、今は弟の幸太郎が後を継ぐ形で、大工や使用人たちも何人もいるのですが――夜ごと跳梁する赤子に、幸太郎たちは気息奄々の有り様となります。たまりかねて助けを求めてきた弟に対し、とりあえずお庸は魔除けの御札(こんなものまで置いてある湊屋)を貸すのですが、幸太郎たちは恐怖の一夜を過ごすことに……

 と、本作の主人公はほとんど幸太郎。特にクライマックスの幸太郎たちと赤子の攻防戦は、完全にホラーの呼吸で描かれている(のにどこか可笑しい)のが強烈なインパクトを残します。
 しかし、お庸の実家には、守護霊的な存在として、生まれずに亡くなった姉のおりょうがいるはず。それなのになぜ化物が出没するのか――すべてが繋がる結末には、本シリーズらしい、どこか切ない味わいが残ります。


 というわけで、通算十作を迎えてもまだまだ元気な本シリーズ。この先もお庸から元気を貸して――いや、分けてもらいたいものです。

前作を紹介したブログ記事はこちら。


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