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重野なおき『雑兵めし物語』第4巻 つかの間の平穏な暮らしと飯と両片思い

 もはや恒例となったような印象すらありますが、今回も作者の他の歴史四コマ二作品と同時に、『雑兵めし物語』の最新巻が発売されました。村を守るための激闘を経て、しばらく平和な時期が続くこととなった作兵衛とつるの生活。しかしそこに嵐の予感が……

 天文年間、長野の農村で一つ屋根の下で暮らす作兵衛とつる。合戦のたびに雑兵として働く作兵衛と、武田家に家を滅ぼされたつる――奇妙な縁で繋がった二人は、互いを意識しつつも主と使用人の名目で日々を送っています。
 そんな中、村の避難所である「小屋」(という名の砦)を乗っ取った山賊たちと戦うことになった作兵衛。山賊に従っていた忍びの少女・なつめの協力を得て勝利した作兵衛たちは、彼女を新たな住人として村に迎え入れるのでした。

前巻の紹介記事はこちら。

 そんなわけで一つの戦いをくぐり抜けた作兵衛ですが、この巻ではつかの間の平穏な暮らしが描かれることになります。

 もともと作兵衛の暮らす村は小笠原長時の領内にありますが、幾度となく武田晴信の侵攻に晒されている状況にありました。それは作兵衛のメシの種であると同時に、村の脅威となってきたのです。
 この巻ではその戦がなかった時期が舞台ですが、もちろんその間も暮らしは続きますし、暮らしということは当然食事! というわけで、様々な料理が登場します。

 その中でも本作らしい料理という点で印象に残るのは、なつめ登場でレパートリーに加わった(?)忍びめしでしょう。
 忍者もの以外まず登場しない(逆にいえば最近の歴史漫画ではほとんど見ない)兵糧丸をはじめとする忍びめしですが、改めて見てみるとこれはこれでなかなか美味しそうではあります。というより、こんなにバリエーションあったのね――と感心させられます。
(さらに驚かされるのはゆで菱でしょう。これ食べられたんだ!?)

 さらに鶴汁やウナギの(言葉の正しい意味での)蒲焼き、江川酒など、現代ではまず食べられない食べ物など、相変わらずユニークな戦国めしが登場します。
 また、当時の風習である「汁講」も、フィクションではほとんど描かれないものだけに感心しました。



 しかし、そんな平穏の中で、いきなり大事件が勃発します。なんと代官(若くて真面目でイケメン)がつるを見初め、嫁に欲しいと言い出したのです。
 しかも代官は大のグルメ、それも自ら料理するのが大好きという、作兵衛とは同じベクトルの強敵(?)だったのですから大事件というべきでしょう。

 当然、内心穏やかではない作兵衛ですが、元々彼は、つるは自分のような根無し草とは一時的に一緒にいるだけ、と思おうとしてきた男です。
 それだけに、これはつるは決めることだ、と突き放した態度を取るのですが、それでは当のつるの決断はといえば……

 まあ、その結果は言うまでもないのですが、いもごみなど、この時代では最先端のスイーツを前によく頑張った! というほかありません。
 というか、いい加減に君たち……

 と、もう一段階進んだ感のある二人の両片思い。しかし現代ものなら微笑ましく見ていられても、戦国ものとなると途端に何かのフラグに見えてくるのが恐ろしいところです。



 そんな中、いよいよ本格的に始まろうとする武田晴信の小笠原領侵攻。
 その先触れとして今回描かれる一種の経済戦は、武将などではなく、庶民の目線から描く物語ならではのもので、なるほどと感心させられますが――しかし攻められる方はたまったものではありません。

 今回、ラストではその長時と思わぬ縁が生じてしまった作兵衛ですが、それは抜きにしても、彼はこれまでとは違い、様々に背負うものができてしまったことがこの巻では描かれてきました。
 それがこの先、どのように作用するのでしょうか。

 史実に照らして考えれば、次巻がクライマックスなのではないかと想像しますが、最後まで作兵衛とつる、そして周囲の人々のおいしい笑顔が見られることを祈りたいと思います。


 ちなみにこの巻では、思わぬ歴史上の人物が登場。ある理由で作兵衛と意気投合するのが、なんとも楽しいゲスト出演でした。


前巻の紹介記事はこちら。


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