「コミック乱ツインズ」2025年8月号(その二)
「コミック乱ツインズ」誌、2025年8月号の紹介の続きです。
先月号の紹介記事はこちら。
『ビジャの女王』(森秀樹)
回想編も終わり、再び迫るラジンの軍を迎え撃つブブとオッド姫をはじめとするビジャ勢。しかし壁の修復は終わらず大穴が空いた状況で、どうやって敵を防ぐのか――壊れた壁を挟んで、二十年前の因縁を甦らせたブブとラジンが対峙します。
が、その二人の対峙とは蚊帳の外なのがジファル。彼も二十年前、同じ場所にいたにもかかわらず、回想編では蚊帳の外でしたが、それを結構気にしていた様子。なにはともあれ、ラジンに合流しようとするジファルですが、その前にビジャに潜入していた蒙古兵の少年が現れて……
と、以前意味ありげに登場したのですが、だいぶ前のことで忘れかけていた少年兵が再登場。その出番は、こういう使い方!? とちょっと驚かされるのですが、なるほど皮肉な展開です。そしてラスト、ターバンを取ったジファルですが、お顔がどことなく……
(もしかして、諸悪の根源はブブの父親なのでは)
『寿司銀捕物帖』(オズノらいおん&風野真知雄)
最初のエピソードである「イカは嘘つかない」編も今回で完結。イカ将殺しの容疑者である金貸しの甚吉について、座頭である兄が目明きという噂を聞いた銀蔵は、この座頭に目をつけて――というわけで絡め手で甚吉に迫る銀蔵ですが、そこからさらに事件は思わぬ方向に進んでいくことになります。
終わってみれば、二転三転する事件の状況に、どこかおかしな登場人物、そして炸裂する銀蔵のアクション(結構実戦的にエグい)と、最初のエピソードに相応しい充実ぶりでした。が、ミステリとして見ると、大事な手がかり(しかも銀蔵しか気付けない)が今回初めて描写されるのがちょっと惜しいところです。
そしてこれはこちらの不注意かもしれませんが、イカ将が(なんとなく想像はつくのですが)何かの渾名なのか、商売のことを言っているのか、今回見るまでよくわからなかったのも残念なところではあります。なにげに物語の核心に関わる要素なので……
『殺っちゃえ!! 宇喜多さん』(重野なおき)
いきなり、作者の歴史四コマでは最高度の艶っぽい描写で驚きますが、これで次の世代も安泰――とはならないのがこの時代。というより今回のメインは直家ではなく浦上宗景となります。
直家の快進撃の一方で、宗景が向かったのは京。そこで彼が会ったのは――あっ、あなたは最近別の作品でアレされた人! というわけでビッグゲストの登場ですが、宇喜多へのリアクションは、史実を踏まえつつも非常に「らしい」と思います。
そんなわけで四面楚歌を地で行く状況になってしまった直家の運命は――まだまだ中小大名の苦労は続きます。
『前巷説百物語』(日高建男&京極夏彦)
「二口女」編もいよいよ今回でラスト、いよいよすべての謎が明らかになります。はたして縫は誰から何を脅迫されていたのか、そして本当に縫は継子を殺したのか――頭脳唇になったという触れ込みの縫の前で、全てが語られるのですが――クライマックスだけに一気に増えた登場人物を、原作とは微妙に変えた形で捌いてみせるのは巧みなところです。
しかし大きく原作と異なるのは、前妻の静にまつわるエピソードです。原作では姑と折り合いが悪かった程度のさらりとした描写でしたが、本作においては、以前登場した静の祟りを言い立てる娘の口を借りて、彼女の生前のエピソードを大幅に追加。さらにそこから生前の正太郎の姿も描かれるのですが、これがまた利発で可愛らしいのがつらい……
なにはともあれ、全般的にホワイダニットがよくわからない原作に比べて、本作においてはかなり明らかにしているのが興味深いところです。原作のよくわからなさこそ、むしろ「らしさ」があるとは思うのですが、本作がこのような形に改変したのも理解できるところではあります。
(ただこのくだりで初めて縫は静の過去を知ったようなのですが、以前から知っていた方が、縫の行動の理由に繋がるような気がしないでもありません)
そして一気に真相が明らかになるシーンは、ちょっと「巷説百物語」という作品としてはギリギリ感があるものの、漫画的にはアリかな、という描写で描かれた末、こちらも原作とは微妙に異なる縫の真意を語って終わるこのエピソード。原作の方は意外にわかりにく内容であるだけに、漫画の方も苦心したのがうかがわれるラスト――というのはもちろんこちらの考えすぎかもしれませんが……
来月号は『懊悩寺おつとめ日鑑』(芳家圭三)、『猫じゃ!!』(碧也ぴんく)、『かきすて!』(艶々)、『古怪蒐むる人』(柴田真秋)が登場。『鬼役』と『前巷説百物語』がお休みの分、読み切り多めのようです。
先月号の紹介記事はこちら。
