「コミック乱ツインズ」2025年2月号(その二)
今年最初の「コミック乱ツインズ」、2025年2月号の紹介の続きとなります。
その一はこちら
『ビジャの女王』(森秀樹)
ラジンが王女殺しの咎で皇帝に召還され、後を任された「名無し」も軍勢を率いてラジンの後を追い――と、もぬけの殻になってしまった蒙古軍。もしかしてコントかな? とすら思ってしまいますが、城内に決死の思いで潜入したにもかかわらず、置いていかれたモンゴル兵にとっては笑い事ではありません。
前回(そして今回も)、ブブが城内に入り込んだモンゴル兵をわざわざ追う必要はないと言ったのにはいかがなものかと思いましたが、なるほど、こういう状況になればそれも納得できます。
一方、ビジャ側には、これまで蒙古軍に潜入していた四人の墨者が加わりましたが、ブブとモズに比べると普通の人という印象。いや、冷静に考えれば墨者が全員ブブや革離のような濃いキャラクターというはずもないのですが、やはりちょっと寂しい気もします。もちろん本作のことですから、この先思わぬ形でキャラが立つかもわかりませんが……
そしてわからないといえば、冗談とはいえブブの兄弟発言や、こちらは冗談ではなさそうな婿殿発言など、ちょっとした発言がこの先どう繋がるかも油断できないのです。
『すみ・たか姉妹仇討ち』(盛田賢司)
もう一本の特別読切は、本誌で『真剣にシす』を連載していた盛田賢司による仇討ちもの。歌舞伎「碁太平記白石噺」の題材ともなった、姉妹二人の仇討ちを描く物語です。
畑仕事の最中、飛ばした泥をかけられたことに激怒した片倉家の剣術指南役・田辺志摩によって、父親を斬殺され、心労で母も喪い、天涯孤独となったすみ・たかの姉妹。仇討ちを決意した二人は、剣術指南役・瀧本伝八郎の家に女中として住み込み、密かに稽古の様子を窺います。
やがてその様子に気付いた伝八郎に事情を打ち明け、正式に修行することとなった二人。正面からでの剣術勝負では勝ち目はないと、伝八郎は二人に鎖鎌と薙刀の稽古をつけることに……
ただでさえ成就は困難な仇討ちを、若い娘二人が行ったということで、冒頭に触れたとおり歌舞伎の題材ともなった仇討ち。本作はそれを、江戸時代の身分制度という不条理に抗った行為として描きます。
その辺りは、仇討ちに詰めかけた庶民たちの熱狂ぶりにも現れているのですが――しかしその辺りは頭では理解できるものの、感情としてはあまり共感できなかった(もっとこの時代の不条理の姿が描かれていれば……)というのが正直なところではあります。
鎖鎌や薙刀といった、主人公側では少々珍しい武術アクションなどはさすがの冴えがあっただけに、少々もったいなく感じたところではあります。
(ちなみに「碁太平記白石噺」では二人の師匠は由井正雪なのですが、物語が別物になってしまうとはいえ、こちらのバージョンも見たかった……)
『雑兵物語 明日はどっちへ』(やまさき拓味)
天正三年の長篠の戦いから始まった本作も、いよいよ今回最終回となります。勝っても負けてもひたすら合戦場で転がり続けた捨丸と春も、戦国という時代が終われば、そもそも戦う場を失ってしまうわけですが……
前回は小牧・長久手の戦いが描かれましたが、その結果天下を取った秀吉も没し、この回の冒頭で描かれるのは徳川の天下を決定づけた関ヶ原の戦い。しかしながら、規模の割りに一日で終わったこの戦いらしく、本作の中でもあっさり扱われることになります。西軍についていた捨丸と春も、いつものごとく姿をくらませた先に描かれるのは、今度こそ戦国最後の戦いである大坂の陣となります。
しかしこの戦いもあっさり終盤、炎に包まれた大坂城の中で二人が出会うのは――と、物語はこれまで二人が辿ってきた歴史、それもその中でも最も平和で恵まれていたとも思える時代の記憶と重なり合って、結末を迎えます。
ここで美しく成長したある人物が語る、自分の人生を生き自分にしかできないことをした、という言葉は印象的で、展開的にもテーマ的にも美しい結末、と思いきや、どっこいそれでもまだまだ転がり続けた二人の姿を描いて、今度こそ物語は幕となるのでした。
その姿をなんと評すればいいのか、悲喜こもごもというほかないのですが――しかしこれはこれで、二人は自分たちの人生を生きたのだと思うべきなのでしょう。格好良くも潔くもない戦国物語ならではの結末ではあります。
次号は特別読切で『牛頭と椿』(鶴岡孝雄&濱崎徹)、『凛九郎』(玉彦)、シリーズ読切で『古怪蒐むる人』(柴田真秋)が掲載予定と、読切が多めです。(連載陣が2つも終わってしまいましたしね……)
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