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地震が起きた時、玄関まで安全にたどり着けますか?|動線リノベ[38]

― 「何を備えるか」だけではなく、「どう動くか」から考える ―
  

一級建築士・動線プランナーの関美和です。

暮らしの流れを整えることで、毎日はもっとラクになります。

このシリーズでは、住まいと暮らしを「動線」という視点から見つめ直し、毎日の暮らしが少しラクになるヒントをお届けしています。


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もし、今夜🌙。

あなたがベッドで眠っている時に、大きな地震が起きたら。



揺れがおさまったあと、

ベッドから玄関まで、安全にたどり着けますか?

寝室から廊下へ。
 ↓
廊下から玄関へ。

その途中に、倒れてきそうな家具はありませんか。

床に物が散乱していても、歩けるでしょうか。

夜中なら、停電して真っ暗かもしれません。

窓ガラスが割れて、床に破片が散らばっているかもしれません。

そして、その時の自分は裸足かもしれません。

防災というと、

水。
非常食。
懐中電灯。
防災リュック。

など、

「何を備えておくか」

に目が向きがちです。

もちろん、それもとても大切です。

でも、どんなに防災用品を揃えていても、

そこまで安全にたどり着けなければ、使うことができません。

だから私は、
防災にも「動線」という視点が必要なのではないかと思っています。

地震が起きる。
  ↓
まず、身の安全を確保する。
  ↓
揺れがおさまる。
  ↓
靴を履く。
  ↓
必要なものを持つ。
  ↓
安全を確認しながら避難する。

災害が起きた時、自分はどこにいて、そこからどう動くのか。

その動きを想像して、必要なものを動線上に置いておく。

すでに防災の備えをされている方も多いと思います。

そんな方にも、

「自分の避難動線はどうなっているだろう?」

と、改めて確認するきっかけとして読んでいただけたら嬉しいです。

今回は、

「何を備えるか」だけではなく、「どう避難するか」から考える防災動線(避難動線)

について、わが家や職場で実践していることを交えながら考えてみたいと思います。


まず、ベッドの下に置いているもの


私は、ベッドの下に、

スニーカーとヘルメット

を置いています。

しかも、ふたのついたきれいな収納ボックスではありません。

すぐに取り出せるように、ふたのない箱に入れています。

枕元近くのコンセントに
保安灯も。停電時に点灯し、懐中電灯にもなります。


大きな地震のあと、いつものように裸足で家の中を歩けるとは限りません。

ガラスが割れていたり、物が落ちていたりするかもしれないからです。

揺れがおさまる

安全を確認する

スニーカーを履く

ヘルメットを手に取る

周囲を確認しながら移動する

ここまでを、一つの避難動線として考えています。

普段の収納なら、

「見えないように、きれいにしまう」

ことも大切です。

でも、防災用品は少し違います。

いざという時、すぐ使えるか。

こちらを優先した方がいいものもあると思っています。


防災リュック、背負ってみたことありますか?


防災リュックを準備している方も多いと思います。


では、そのリュック。

実際に背負ってみたことはありますか?

私はあります。

そして、びっくりしました。

重すぎて、背負えませんでした。

水や缶詰、非常食、懐中電灯、衛生用品……。

「これも必要かもしれない」
「これもあった方が安心」

と入れているうちに、いつの間にかかなりの重さになっていました。

でも、そのリュックを背負って避難できなければ意味がありません。

防災リュックは、備蓄品をできるだけたくさん詰め込むためのものではなく、

必要なものを持って、安全に避難するためのもの。

そう考えてから、私は備えを分けることにしました。

すぐに持って避難するものは、防災リュックへ。

その後の生活に必要になるものは、別の場所へ。

防災リュックには、懐中電灯や軍手、マスク、軽い食料など、避難時に必要になるものを中心にして、重くなりすぎないようにしています。

在宅避難も想定して、自宅や車の中にも備蓄を分散しておくのも一つの方法です。


そして、ときどき実際に背負ってみる。

「自分がこれを背負って、本当に歩けるか」

も、防災用品を点検する大切なポイントだと思っています。


玄関近くのスーツケースも、備蓄品の置き場所に


わが家では、玄関近くに防災リュックとスーツケースを置いています。

防災リュックは、必要な時にすぐ持ち出せるように。

一方、スーツケースには、食品や歯ブラシなど、災害後の生活や在宅避難で使う備蓄品を入れています。

スーツケースは、地震が起きたらすぐに持って避難するためのものではありません。

では、なぜ玄関近くに置いているのか。

必要になった時に、家の奥まで取りに戻らなくていいからです。

必要なものを持ち出す状況になった場合にも、玄関近くにまとまっていれば取り出しやすい。

また、在宅避難をする場合にも、備蓄品が一か所にまとまっていれば、必要なものを探して家の中を行ったり来たりせずに済みます。

「どこに収納できるか」ではなく、
「災害時にどう使うか」から置き場所を決める。

これも、防災を動線から考える一つの方法だと思っています。


「でも、スーツケースは旅行で使うのでは?」
と思われるかもしれません。

もちろん、使います。

旅行へ行く時には、中に入れてある防災用品を一度出します。

でも私は、それがかえっていいと思っています。

中身を出すことで、

「これは賞味期限が近い」
「これはそろそろ交換しなきゃ」

と、自然に点検する機会になるからです。

旅行から帰ってきたら、また戻す。

防災用品は、一度揃えたら終わりではありません。

普段の暮らしの中で、ときどき目に触れる仕組みにしておく。

それも、備えを続けるためには大切だと思っています。


ローリングストック、していますか?


食料の備蓄も、

「防災用だから」

としまい込んでしまうと、気づいた時には賞味期限が切れていた、ということがあります。

そこで取り入れたいのが、
ローリングストックという方法です。

普段食べている食品を少し多めに用意しておき、

食べる

買い足す

また食べる


を繰り返す。

特別な「非常食」だけに頼るのではなく、普段の暮らしの中で備蓄を回していく考え方です。

これも、動線と少し似ています。

防災のためだけに特別な行動を増やすのではなく、

いつもの暮らしの流れの中に、防災を組み込んでおく。

そうすると、備えること自体のハードルも少し下がるのではないでしょうか。

ローリングストックは、備蓄食材のフードロスを防ぐことにもつながります

また、自宅が安全な場合には、避難所へ行かず、在宅避難をすることもあります。

そのため、食料だけでなく、水や携帯トイレなど、自宅で過ごすために必要なものも備えておきたいところです。

「避難するための備え」と、
「自宅で過ごすための備え」。

分けて考えておくことも大切だと思います。


停電した時の「避難動線」も考えておく


そして、避難動線を考える時に、もう一つ確認しておきたいことがあります。

それが、

地震のあと、電気をどうするか。

大きな地震で停電したあと、
電気が復旧した時に、倒れた電気製品や傷んだ配線などに再び電気が流れることで、火災につながることがあります。

いわゆる「通電火災」です。

大きな地震では、揺れだけでなく、その後に起こる火災が被害を広げることもあります。

だからこそ、地震の「その後」への備えも大切です。

避難する際には、状況が許せば分電盤のブレーカーを切ることも大切です。

でも実際に大きな地震が起きた時、

「避難する前にブレーカーを切らなくては」

と冷静に思い出せるか?
…私は、あまり自信がありません。

そこで、わが家で備えているのが、
感震ブレーカーです。

わが家では、一定以上の揺れを感知すると、自動的に家全体の電気を遮断するタイプを使っています。
分電盤に取り付けるタイプなどさまざまありますが、わが家では、コンセント(&アース)に差し込むタイプを使用しています。

自分で分電盤まで行って操作しなくても、揺れを感知して電気を遮断してくれる。

避難する時に「やらなければならないこと」を一つ減らしておく。

これも、動線を考える上では大切なことだと思っています。

感震ブレーカーにはさまざまなタイプがありますので、
購入する際には、ご自宅の分電盤や設置条件に合うものか、どの範囲の電気を遮断する製品なのかを確認してください。
 
自治体によっては、感震ブレーカーの購入や設置に補助制度を設けているところもありますので、一度確認してみるのもおすすめです。

▶︎ わが家で備えている、コンセント(&アース)に差し込むタイプの感震ブレーカーはこちら



そして、
家全体の電気が遮断されたら、夜は家の中も暗くなります。

そこで、もう一つ。

わが家では、
停電すると自動で点灯するライト
も使っています。

普段はコンセントに差しておき、停電すると自動で点灯。

コンセントから取り外せば、そのまま懐中電灯として使えるタイプです。

わが家では、1階と2階に一つずつ置いています。

▶︎ わが家で使っているタイプはこちら(パナソニック)


お手軽な電球タイプ(LED)💡もあります。
電球にバッテリーが搭載されているため、停電時に点灯します。
そして、こちらも電球を外して手で持つだけで電球そのものが懐中電灯になります。


大切なのは、停電した時にも、避難動線上の明かりを確保できるようにしておくこと

わが家では
自動点灯するタイプを使っていますが、同じような機能の商品もいろいろあります。

ご自宅の間取りやコンセントの位置に合わせて、
寝室から玄関までの動線を照らせる場所に備えておくと安心です。

「停電した瞬間、この家の避難動線はどうなるだろう?」

という視点でも、一度確認しておきたいところです。


災害が起きる時、家にいるとは限らない


ここまで、自宅での備えについてお話ししてきました。

でも、災害が起きる時、家にいるとは限りません。

私は平日の多くの時間を会社で過ごしています。

そこで会社にも、
デスク下に防災リュックを置いています。

そして、リュックと同じ場所に

スニーカーと、ペットボトルの水を常に6本以上、深めの箱に入れています。


大きな災害が起きれば、すぐに帰宅できるとは限りません。

何日か会社で過ごさなければならないこともあるかもしれない。
そのための、私なりの備えです。

もちろん、会社にも防災用品や備蓄はあります。

でも私は、

「会社が用意してくれているから大丈夫」だけではなく、自分でできる準備は、自分でもしておきたい。
と思っています。

(水もローリングストックにしています)


オフィス🏢での「避難動線」も確認しておく


そして、もう一つ。

私のオフィスは、19階にあります。

私は毎日、朝の出社後と、ランチでビルの地下へ行く時の2回、
19階から避難階段を使って地下階まで降りています。

もともとは、防災のために始めたことではありません。
目的は、運動不足解消のためのエクササイズです。

でも続けているうちに、

「これも、いざという時の備えになるかもしれない。」

と思うようになりました。

大きな地震では、エレベーターが停止することがあります。

東日本大震災の時も、実際にエレベーターが止まり、私は階段で下りて帰宅しました。


そして、毎日階段を使うようになって、もう一つ気づいたことがあります。

避難経路は、実際に歩いてみないと分からないことがある。

ということです。

初めて19階から1階まで避難階段を降りた時のこと。

1階に着いて、避難階段からアトリウムへ出ようとしたら、

ドアが開きませんでした。

「え? 開かない……」

ちょっと焦りました。

よく見ると、そのドアは、下にあるサムターンを回しながらドアノブを操作しないと開かない仕組みになっていました。

非常時には解除される仕組みになっているのかもしれません。

ただ、少なくとも私は、実際にそこまで歩いてみるまで、そのドアがどうやって開くのかを知りませんでした。

もし、これが本当の避難時だったら。

周囲も慌てていたら。

もっと焦ったと思います。

だから私は、
自分のオフィスから避難階段へは、どう行くのか。

その階段は、どこへつながっているのか。

そして、

最後の出口から、実際に外へ出られるのか。

一度、実際に歩いて確認しておくことをおすすめしたいと思います。

毎日階段を使う必要はありません。

でも、普段使わない避難経路だからこそ、

オフィスでの「避難動線」は、平常時に一度、自分で歩いて確認しておく。

それだけでも、いざという時の安心につながるのではないでしょうか。

✅防災リュックを準備する。
✅水を備蓄する。
✅歩きやすい靴を置いておく。

そんな「モノの備え」と同じように、

いざという時に、
どこを通って避難するのかを知っておく。

そして、

自分自身がそこを動けるように試しておく。

それも、大切な備えなのではないかと思っています。


防災用品は「しまう場所」から考えない


こうして考えてみると、

ベッドの下のスニーカー。
玄関近くの防災リュック。
スーツケース。
停電した時に避難動線を照らすライト。
会社のデスクの足元のスニーカーと水。

置いているものは違いますが、考え方は同じです。

防災用品を、どこに収納しようか。

ではなく、

災害が起きた時、自分はどう動くのか。

そこから逆算して、必要なものの置き場所を考える。

そして、その場所まで安全に移動できるかも確認しておく。

普段は何でもない場所でも、災害時には通れないかもしれません。

夜なら暗いかもしれません。

床には物が散乱しているかもしれません。

いつも開けている扉が、すぐには開けられないかもしれません。

そして、自分自身もいつもよりずっと慌てているはずです。

だからこそ、

「その時の自分」を想像して、実際に動線を確認しておく。

これが、私が考える「防災動線」です。



最後に

防災というと、

何を買うか。
何日分備蓄するか。

そんな「モノ」の話になりがちです。

でも、いくら備えていても、

必要な時に取り出せない。
重すぎて持てない。
そこまで安全にたどり着けない。

それでは、せっかくの備えを十分に活かせません。

だからこそ、

「何を備えるか」だけではなく、
「その時、自分はどう動くのか」まで考えておく。

ベッドから玄関まで。
玄関から外へ。
そして、自宅だけではなく職場でも。

その動線を、安全に通れるか。

一度、実際に歩きながら確認してみると、気づくことがあるかもしれません。

すでに十分な備えをされている方も、

「今ここで地震が起きたら、私はどう動くだろう?」

という視点で、住まいや職場を見直してみてはいかがでしょうか。

何か一つでも、

「これは確認しておこう。」

と思っていただけることがあれば嬉しいです。

普段の暮らしをラクにする動線だけではなく、

いざという時、自分の身を守るための動線も整えておく。

これも、私が考える「動線リノベ®」の一つです。

* * *

毎日の暮らしが、少しでもラクに、そして安心につながるきっかけになれば嬉しいです。

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関 美和|一級建築士
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