Salesforceは、本当に日本の製造業のためになるのか?
Dreamforce前に「なぜSalesforceが選ばれるのか」を調べてみた
読了目安:約5分
来週、サンフランシスコで開催されるDreamforce 2026に参加します。
Dreamforceは、Salesforceが毎年開催している年次イベントです。今年は現地5万人以上、オンライン12.2万人以上、150以上の国・地域からの参加が見込まれています。Salesforceのユーザー企業、開発者、パートナー、アライアンス企業、Salesforceの製品担当者などが集まり、最新機能だけでなく、導入事例や今後の方向性、活用方法について情報を共有する場です。

私も普段、製造業のお客さまと営業DXやCRM/SFAについてお話しする中で、Salesforceに触れる機会があります。
今回Dreamforceに行く前に、一度整理してみたいと思ったのが、
「なぜ、これほど多くの企業がSalesforceを選んでいるのか?」
ということです。
日本にもCRM/SFAはあります。顧客情報や案件情報を一元管理するだけなら、Salesforce以外にも選択肢があります。
最近は「AIを活用するにはデータ整備が重要」とよく言われますが、データを整えること自体もSalesforceにしかできないことではありません。
特に製造業では、営業だけで仕事が完結することは少なく、ERP、PLM、SCM、生産、サービスなど、さまざまな業務やシステムが関係します。
それでもSalesforceは、FY2026に415億ドルの売上を上げ、そのうち約394億ドルをSubscription & Supportが占めています。
企業はSalesforceの何に価値を感じているのでしょうか。
公開情報を調べながら、今の時点で4つの仮説に整理してみました。
Salesforceは、CRMからどこまで広がってきたのか
Salesforceは1999年、米国サンフランシスコで創業しました。
当時は企業向けソフトウェアを自社のサーバーに導入して使う形が一般的でしたが、SalesforceはCRMをインターネット経由で提供しました。
2004年に上場し、2005年には外部企業がSalesforce上でアプリケーションを提供できるAppExchangeを開始しています。
その後、営業管理だけでなく、カスタマーサービス、データ分析、システム連携、社内コミュニケーション、AIへと領域を広げてきました。
現在のSalesforceを見ると、単なる「顧客・商談管理のツール」というより、顧客に関わる業務やデータを広く扱う基盤に近づいているように見えます。
この変化を踏まえて、Salesforceが選ばれる理由を考えてみました。

仮説① 顧客を軸に、営業からサービスまでつなげやすい
製造業では、一社の顧客と長く付き合うケースも多くあります。
営業が商談を進め、製品を納入する。その後はサービス部門が問い合わせや保守に対応し、数年後には更新や追加提案の機会が生まれる。
この間に担当部門が変わっても、相手は同じ顧客です。
情報が部門ごとに分かれていると、営業は過去の問い合わせを知らない、サービス部門は次にどんな提案をしているのか知らない、といったことも起こります。
Salesforceは営業管理だけでなく、サービスなど顧客接点に関わる複数の業務を同じプラットフォーム上で扱えます。
例えば営業担当者が、
過去にどんな提案をしたか
何を導入しているか
最近どんな問い合わせがあったか
対応中のトラブルはないか
次にどんな提案余地があるか
を同じ顧客を起点に確認できれば、単なる案件管理とは使い方が変わってきます。
「商談を管理するCRM」ではなく、「顧客との関係を継続して管理する基盤」として使いやすい。
これはSalesforceの一つの強みではないかと考えています。

仮説② AIが仕事をするための「業務の土台」を持っている
AIについては、最初は少し分かりにくく感じていました。
今後、営業担当者が必ずSalesforceの画面を開いて仕事をするとは限りません。
ChatGPTやClaudeのようなAIに、
「この顧客の最近の状況をまとめて」
「過去の商談や問い合わせを確認して、次のアクションを考えて」
と聞く使い方も増えていきそうです。
そうなると、ユーザーが見る画面よりも、AIが裏側で何を参照し、何を実行できるのかの方が重要になります。
AIが営業の仕事を支援するには、
顧客や商談のデータだけでなく、
「この人はこの情報まで見られる」という権限、
「この金額なら上長承認が必要」といった業務ルール、
他システムから必要な情報を取得する仕組みなども必要です。
Salesforceはもともと、顧客、商談、問い合わせなどの業務データを管理してきました。
現在はそこに、企業内のさまざまなデータをまとめてAIから使いやすくするData 360、SalesforceとERPなど外部システムをつなぐMuleSoft、AIエージェントを業務で利用するAgentforceなどを組み合わせています。Salesforceはこれらを、人・データ・AIエージェント・業務をつなぐ一つのプラットフォームとして位置づけています。
言い換えると、
AIに回答させるためのデータだけではなく、AIが実際の仕事を進めるための業務情報やルールまで持っている。
Salesforceが長年CRMとして蓄積してきたものが、AI時代には別の価値を持つ可能性があるのではないか、と考えています。

仮説③ 「あとからやりたいことが増えたとき」の選択肢が多い
Salesforceを調べていて、もう一つ特徴的だと感じたのが、周辺の製品やパートナーの多さです。
CRMを導入した後でも、
「電子契約とつなぎたい」
「名刺管理を連携したい」
「営業データをもっと詳しく分析したい」
「海外拠点にも展開したい」
「製造業に詳しい会社に支援してほしい」
と、やりたいことは増えていきます。
SalesforceにはAppExchangeがあり、Salesforceと連携するさまざまなアプリケーションや支援会社を探せます。Salesforceの公式パートナー情報でも、Manufacturingを含む業界経験や製品領域から支援会社を探すことができます。
すべてを一社で開発するのではなく、
必要になったときに、すでにある製品や経験のある会社を探しやすい。
システムを数年、十数年と使っていくことを考えると、この選択肢の多さもSalesforceが選ばれる理由の一つになっていそうです。

仮説④ 海外拠点の営業を「同じ基準」で見やすい
製造業では、海外売上が増えるほど営業管理も複雑になります。
例えば、日本本社、米国販売会社、ドイツ販売会社があったとします。
日本ではExcelで案件管理。
米国では独自のCRM。
ドイツでは現地独自の商談ステージ。
この状態では、本社が各地域の数字を集めても、
「受注見込70%」の意味が国ごとに違う、
失注理由の分類が違う、
案件のステージも違う、
ということが起こります。
共通のCRMを使えば、
顧客をどう登録するか
商談をどのステージで管理するか
売上見込をどう見るか
失注理由をどう分類するか
どのKPIを見るか
といった基本的な部分をグループでそろえやすくなります。
そのうえで、言語や通貨、販売チャネルなどは地域ごとに設定する。
つまり、海外拠点のやり方をすべて日本に合わせるのではなく、本社として比較したい項目だけ共通化するという使い方です。
グローバルで広く利用されているSalesforceだからこそ、多国展開を前提とした企業ではこのメリットが大きくなるケースもありそうです。

製造業では、Salesforceだけを見ても判断できない
ここまでSalesforceの良さを整理してきましたが、製造業ではCRMだけで営業判断が完結しないことも多くあります。
例えば、
「この案件を、この価格と納期で受けて利益が出るのか」
を判断しようとします。
顧客や商談はCRMにあります。
原価や在庫はERP。
製品仕様やBOMはPLM。
生産能力は生産系システム。
供給や納期はSCM。
こうした情報まで見なければ、営業として判断できないケースがあります。
Salesforceに全部のデータを入れる、という話ではありません。
ERPはERP、PLMはPLMで管理しながら、営業に必要な情報を必要なタイミングで使えるようにする。
製造業でSalesforceを考えるときは、Salesforceの機能だけを見るより、会社全体の業務やシステムの中で何を担当させるのかを見る方が実態に近いように思います。

SIerには何ができるのか
この点では、SIerの役割についても考えました。
Salesforceに詳しいことはもちろん重要です。
そのうえで、
営業のどこに課題があるのか。
どのデータがあれば判断が変わるのか。
ERPやPLMとどう役割を分けるのか。
どの仕組みを組み合わせるのか。
を整理するところにも、SIerが関われる余地があります。
その結果、見積回答が早くなった、受注率が上がった、既存顧客への提案が増えた、サービス売上が伸びた、といった事業側の変化までつなげられるか。
私自身も、製品の機能だけではなく、そうした視点からSalesforceを見られるようになりたいと思っています。

Dreamforceで見てきたいこと
現時点で、Salesforceが選ばれる理由を4つの仮説に整理しました。
① 顧客を軸に、営業からサービスまでつなげやすい
② AIが仕事をするためのデータ・権限・業務ルールを持つ基盤になりやすい
③ やりたいことが増えたときに、使える製品や支援会社を探しやすい
④ 海外拠点を同じ基準で見ながら、地域ごとの違いにも対応しやすい
もちろん、企業によって求めるものは違いますし、他の製品で実現できることもあります。
今回は、この4つが実際のユーザー企業にとってどの程度価値になっているのかを見てきたいと思っています。
製造業ではどのように使われているのか。
AIは実際の営業やサービス業務をどこまで変え始めているのか。
海外企業はSalesforceをどのように位置づけているのか。
そして、パートナーやSIerは、その仕組みをどう企業の成果につなげているのか。
Dreamforce現地でも発信していきます。
帰国後は、今回整理した4つの仮説と照らし合わせながら、改めてまとめてみたいと思います。
この記事について
本記事は、Salesforce公式サイト、米国SECへの開示資料など、2026年9月時点の公開情報をもとに、私自身の勉強を兼ねて整理したものです。
Salesforceや他のCRM/SFAの優劣を断定するものではありません。適した製品や構成は、企業の業務、既存システム、コスト、セキュリティ、グローバル展開などによって異なります。
本文中の解釈や仮説は筆者個人の見解であり、所属企業や関係組織の公式見解ではありません。
私自身も勉強中のため、理解が異なる点や補足すべき観点があれば、ぜひコメントで教えてください。
参考資料
Salesforce「Salesforceの沿革」
Salesforce「Dreamforce 2026 Fast Facts」
Salesforce FY2026 Form 10-K/米国SEC
Salesforce「Agentforce 360 Platform」
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