見出し画像

観察されるのを待っている

(アイデア・プロット:私 / 執筆協力:AI)
脱衣所の湿った空気を纏ったままリビングへ戻ると、テレビ画面から軽快な効果音が響いていた。夫が夢中になっているのは、この春に発売された任天堂の新しいゲームソフト『ぽこあポケモン』だ。画面の中ではデフォルメされた小さなキャラクターが、色鮮やかなフィールドを忙しなく駆け回っている。

​子どもたちはとっくに寝静まり、家の中にはゲームの音と、静かな夜の気配だけが満ちていた。

​私は髪をタオルで拭きながら、ぼんやりと画面を眺めた。

​一般企業で働くごく普通の日常。だが、私の頭の片隅には幼い頃から常に「宇宙」があった。10歳の頃、理由もなく夜の布団の中で「光のエネルギーがあるなら、闇のエネルギーもあるはずだ」と思いついた日のことを覚えている。後にそれが「ダークエネルギー」として科学界を騒がせていた概念だと知ったとき、世界と自分がかすかに繋がったような気がしたものだ。

​大人になり、カート・ヴォネガットの『タイタンの妖女』を読んでその虚無的で美しい世界観に惹かれ、YouTubeが普及してからは暇さえあれば量子力学や宇宙論の動画を貪り見た。

​——過去も、現在も、未来も、すべては同時に存在している。

——この世界は、高次元の情報を投影したホログラムに過ぎない。

——電子は、観察されて初めて「状態」を確定させ、そこに存在する。

​画面の中で、夫の操作するキャラクターがマップの隅へと向かっていく。プレイヤーの視線が向いた瞬間に、暗闇だった場所へ草木や建物がレンダリングされ、そこに「存在する」ものとして立ち現れる。画面の外側——プレイヤーから見えていない場所は、データとしてはあっても、厳密には「世界」としてそこには存在していない。

​(観察して、初めて存在する……)

​いつもなら理解し難かったその理論が、その夜はやけにすんなりと胸に落ちてきた。

​むしろ、と私は思った。

私たちが普段あたりまえに受け入れていることの方が、ずっと奇妙で、ずっと圧倒的ではないか。

​今この瞬間、私が息を潜めている神戸の小さな部屋と、地球の反対側にあるブラジルの街角が、凍てつく北極の氷原が、月面が、太陽の灼熱の表面が、そして膨張し続ける宇宙の果てが、同時に「存在」しているということ。見たことも行ったこともない無数の場所が、リアルタイムでここに「ある」と信じ込んでいること。

​そんな奇跡みたいな仕組みが成り立つのなら。

時間という軸のうえで、過去も現在も未来もすべてが「すでにそこに同時に存在する」ことくらい、何も不思議ではないはずだ。

​世界は一枚の巨大なレコードのようなもので、針が落ちている「今」という瞬間だけを、私の意識がなぞっているだけに過ぎないのではないか。

​その直感は、恐ろしいほどの納得感をもって私の全身を突き抜けた。

​……それから、どれほどの時間が流れただろう。

​子どもたちは成長し、私の髪には白いものが混じり、かつて夜遅くまで宇宙の動画を眺めていた目はかすみ、やがて私の「今」をなぞっていた針は、静かにレコードの端へと到達した。

​意識の糸が途切れ、長かったゲームの画面が暗転するように、私は深い深い闇へと落ちていった。

​◇

​ふと、目が覚めた。

​息を吸う感覚も、重力に縛られる感覚もない。

だが、確かな意識があった。

​視界——と呼ぶべきか迷うほど全方位的な感覚の広がりのなかで、私は「それ」を見ていた。

​目の前に広がっていたのは、黒い静寂でも、天国のような光の園でもなかった。

​そこは、膨大な数の「画面」がどこまでも連なる、果てしない多次元の空間だった。

​10歳の私が、街灯の灯りを背に夜空を見上げている一瞬。

学生時代、図書館で宇宙図鑑のページをめくっていた一瞬。

社会人になり、満員電車に揺られながらスマホで量子力学の動画を見つめていた一瞬。

夫の隣で『ぽこあポケモン』の画面を眺め、宇宙の同時性にゾッとしたあの夜の一瞬。

子どもを抱きしめた温もり、旅先で仰ぎ見た星空、静かな病室で迎えた最後の息の瞬間——。

​それらすべてが、映画のフィルムを何億枚も重ね合わせた立体的な結晶のように、過去も未来もなく「すべて今、そこにある」状態で輝いていた。

​私は、観察者だった。

​肉体という限定されたレンズを失った私は、自分の人生という物語の全体像を外側から眺めていたのだ。画面の中の自分が次に何を思い、どこへ進むのか、私はその全貌を知っている。描かれていない場所はどこにもなく、始まってもいなければ、終わってもいない。

​「……ああ、やっぱりそうだったんだ」

​声にならない納得が、私の意識を満たした。

​見ているから、存在する。

私がこの壮大な宇宙の戯れを「観察」したからこそ、あの70年あまりの私の人生は、あの場所で、あの時間で、美しくあざやかに存在していたのだ。

​私は愛おしさを込めて、かつて「私」だったあの小さなプレイヤーの背中を見つめた。そして、無限に広がる時空のアーカイブの中から、新しい可能性の光を、次の「観察」をはじめるための新しい物語を、ゆっくりと探し始めていた。


#SF小説
#ショートショート
​#AIとやってみた
​#AI生成コンテンツ
​#Gemini
#ぽこあポケモン
#タイタンの妖女
#ホログラム理論
#量子力学
#ブロック宇宙論
#ダークエネルギー
#シミュレーション仮説
#宇宙論
#パラレルワールド
#短編小説
#Web小説
#思考実験
#SF短編
#任天堂
#カートヴォネガット
#夜の妄想
#お風呂上がり
#AI小説
#創作

初投稿でした。
読んでいただきありがとうございました。

いいなと思ったら応援しよう!