【シロクマ文芸部】春雷の夜に
雷はどこか遠くに落ちたようだ。暗闇の中雨は激しく窓ガラスを叩きつけ、風もゴオゴオと台風のように吹き荒れている。私はそっとカーテンを開け、外を見てみる。ピカっと稲光がし、ゴロゴロと雷も鳴り響く。これは春の嵐だろうか。
再びカーテンを閉じると、薄暗い部屋の床の上に座り込んだ。ソファも無い、全然おしゃれじゃない生活感のある部屋。テーブルの上の缶チューハイを一口飲み込んだ。桃の味のする甘い液体が私の喉を通り過ぎていく。ため息をひとつついて、スマホを手にする。
スマホでSNSを開いて、真っ先にあの人のページを見てみる。今日もあの人は更新している。あの人の書くものはとても面白い。私も同じようなものを書くけれど、あんなに上手く書けやしない。その文才に私は軽く嫉妬する。イイネを押しコメントをするべくコメント欄を覗くと、今日もたくさんの女の子のコメントに溢れている。あの人のファンは女の子が多いのだ。
コメント欄をスクロールすると、いた。また彼女がコメントしている。彼女の熱いコメントはあの人への気持ちが透けて見える。だから私は彼女のコメントを見ると胸がザワザワする。そして、あの人が彼女に返すコメントを見て、私は再度嫉妬する。モヤモヤとした黒い感情が私の全身を支配しようとする。
相変わらず雨は窓ガラスを叩きつけ、風の音と雷鳴が大きく響く。
テレビのスイッチを入れると、クイズ番組でアイドルが難しい問題の正解を出していた。私が抱えている、この感情の正解はなんだろう。考えても考えても正解は分からない。
私は、彼女に嫉妬する。彼女は私よりもはるかに豊富な知識であの人と軽やかに会話する。私は、自分の不甲斐なさに唇を噛み締め嫉妬の炎を燃やす。
あの人にも私は嫉妬する。その文才に、その博識さに。私の持っていないものを持ち、それが普通であるかのようにその知識を惜しみなく使い会話するふたりに私は嫉妬の炎を燃やし続ける。
これは嫉妬なんだろうか。ただの嫉妬ではないのかもしれない。この、糸を引きベタベタとするよく練った水飴のような感情は一体なんと呼ぶのだろう。
私はただあの人が好きなだけなのに。あの人と楽しく会話したいだけなのに。個人的にあの人と話す私は他のファンより上だと思いたいだけなのに。あの人も私を好きだと思いたいだけなのに。
一方的に私からのメッセージが並ぶメッセージアプリを見て見ないフリをしているだけなのに。
あの人の気持ちを確かめる術を持たない私は、このまま嫉妬の雷に打たれてジリジリと焦げてしまうかもしれない。そんな思いを抱えたまま、私は何くわぬ顔を装ってあの人のコメント欄へコメントをする。彼女に負けないくらいの熱い思いを込めて。あの人はそんな私の思いに気づいてくれるだろうか。
春の雷はさっきより大きな音で雷鳴を轟かせた。おそらく近くに落ちたに違いないだろう。今度雷が落ちるのは私の心かもしれない。
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シロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「雷は」です。
すっごいドロドロした気持ちの掌編を書きました。
実は、これは以前詠んだ短歌から書いたんです。

この短歌は、みんはい(ライラック杯)に出したものなんです。
このジトジトした感じが意外とウケて個人賞を頂いたりもしましたw
それも、なんと5名様に!!
今回のお題が「雷は」だったので、この短歌から掌編を書いてみようと思ったのでした。
今回は、書いてすぐ投稿します。
あまり読み直してもいないので、どこか表現がおかしい所があるかもしれませんが、即興という事でお願いします!
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
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