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筆記用具はお忘れ無く

中学校の入学式。

新しい制服。
新しいかばん。
新しい靴。

そして、新しい先生。
新しい友達。
新しい教室。


私が通う事になった中学校は、県内で1番の規模を誇るマンモス校だった。
1学年13クラス(45名)もあった。
当然、校舎だけでは教室は足りずに1年生のほとんどのクラスはプレハブの教室に入る事になった。

クラス発表の張り紙を見ると、私は8組になっていた。
顔見知りの子が数名いたので少し安心した。だって、私は人見知りで初対面の人と話すのが苦手だから。

この中学校は、近辺の3つの小学校の出身者で構成される。
私の通っていた小学校は、規模が小さかったのでほとんどの人が知らない人だ。おまけに8組には、よその県から引っ越してきた人が2名もいた。


8組という事は、当然校舎には入れずプレハブの教室だ。

学校の敷地の北側と、南側にずらりと並ぶプレハブは圧巻だ。南側のプレハブは、校舎だけではなく各部活動の部室があったりもする。ちなみに、私は卓球部だったのだけど、練習場もプレハブだったりした。

私達8組は北側のプレハブの教室。
プレハブに入るなんて、その時が初めてだった。基礎はブロックだし、壁も薄そうで。床はべニア板のような感じ。
こんな所、大丈夫なのかな?私はかなり不安だった。

教室も不安だったけど、同じクラスの子達の事も不安だった。
何回も言うけど、私は人見知りで、打ち解けるまでに時間が掛かるから。
先生も怖い人だったらどうしよう・・・。


教室に入ると、顔見知りの子と話しながら観察してみる。うん、変な人はいなさそう。少し安心した。
先生も30代くらいの女の先生で、口うるさそうだけど怖くはなさそうだ。

時間が来たので、入学式のために体育館へ行った。
小学校の時は、生まれ番号順だったので、50音順で並ぶのは初めてで少し不思議な感じがした。
今までは後ろの方の並びだったのに、これからは前の方の並びになるから。


入学式は滞りなく終わり、また教室に戻って来た。

学級取り扱いの際、メモを取らなくてはいけなかったのだけど・・・。

私は筆記用具を持ってきていなかった。
え、やばーい。どうしよう。
と、焦っていたら後ろで見ていた母が、「前の子に借りたら?」と言った。

前の子は知らない子だったけれど、しょうがない。勇気を出して、背中をつんつんと突ついた。

「ねぇ、鉛筆貸してもらえる?」

初対面の子に話しかけるのは、怖かった。
でも、その子は気持ちよく鉛筆を貸してくれた。私はお礼を言って借りる事ができた。

席が前後ろだったので、それからはすぐに仲良くなった。
他の子達ともすぐに仲良くなれた。


このクラスは、とても楽しくて、比較的男女の仲も良かったように思う。
私自身はこのクラスで嫌な思いをした事はない。
毎日がとても楽しかった。このクラスで良かった、そう思った。

毎日の何気ない事も。

休み時間のコンサートごっこも。

体育祭も。

バス遠足や登山も。

合唱コンクールも。

何もかもが楽しかった。


そんな楽しい毎日は、入学式の日のあの一言から始まったんだと思う。

「ねぇ、鉛筆貸してもらえる?」


あれからの私はどこに行くにも筆記用具はほぼほぼ持ち歩いている。それは、自分自身のためでもあるけれど、誰かのために。

入学式の日に私に鉛筆を貸してくれた子のように、私も誰かのためになりたいから。






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