【シロクマ文芸部】ウエルカムベア
熱帯夜だけど、私達の間に流れる空気は冷え冷えとしていて極寒だ。もちろん、エアコンは入っているけれど。
さっきから私達は黙ったままだ。テレビの横のウエルカムベアがくりくりした瞳で私達を見つめている。このベアは友人のミナが作ってくれた物だけど、まさかミナもたった3年で別れる事になるなんて思いもしないだろう。
3年前、高校の同級生だったシュンと同窓会で再会し、意気投合して付き合い結婚したのだった。
シュンは優しく頼りがいのある人だった。つい1年前までは。
私が昇進し、シュンよりも上の役職に就き、年収が上回った頃から徐々に関係がおかしくなってきた。今では家に帰ったり帰らなかったりで生活費もあまり出さなくなってきた。別にそんな事はどうでもいいのだけど、やられっぱなしでは私の気が済まない。
しかも、シュンの浮気相手の女からSNSで宣戦布告のDMまできた。何が『ご主人を解放してあげて下さい。私といる方が彼は幸せなんです』だ。ふざけるのも大概にして欲しいものだ。
私は女からきたDMの画面をシュンに見せた。
「あなたの彼女から私にDMがきたんだけど。あなたも私なんかより彼女がいいんでしょう?もう、そっちに行っちゃえば?」
神妙な顔をしたシュンの表情が一瞬緩んだのを私は見逃さなかった。本当に一体どこまで私を馬鹿にしたらいいのだろう。もう、いいや。これでおしまいだ。
「じゃあ、もう離婚しましょう。後から弁護士から連絡が来ると思うから。荷物はまた改めて取りに来るから触らないでね。あ、それからね。そのウエルカムベアはミナに作り直してもらったら?あなたとミナの分でね」
私はあらかじめまとめていた最小限の荷物の入ったキャリーを手に玄関ドアを開けた。とたんに生ぬるい空気が私の全身にまとわりついた。
🐻 🐻 🐻
シロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「熱帯夜」です。
書いてすぐ寝かせずに出しちゃいます!
小牧部長、よろしくお願いします😊
今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪
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