今日のピックアップ|2026.09.11
収集した記事の中から取り上げた、今日のピックアップです。
⬛️ OpenAI の数学研究、証明は4桁速く検証できたのに、信頼はまだ検証中——ナビエ・ストークス騒動の続報
The part of Navier-Stokes no one is talking about
昨日の記事でも触れた、OpenAI の Navier-Stokes 証明騒動の続報を、2つの視点から追ってみました。
まず技術面では、数学コンサルタントの John D. Cook 氏のブログで、あまり話題になっていなかった側面が指摘されていました。
OpenAI は人間が読める形の通常の証明と同時に、Lean 4 という形式的検証ツールによる機械可読な証明も公開したとのことです。
2005 年の研究では、学部レベルの数学の教科書 1 ページ分を形式的に証明するのに 40 時間かかるとされていたそうで、この基準で単純計算すると、166 ページに及ぶ OpenAI の論文を形式化するには 13 万 2,800 人時かかる計算になるそうです。
ところが OpenAI は Lean でのこの検証をわずか 17 時間で終えたとのことで、Cook 氏は「4 桁もコストを下げるのは革命的だ」と評しています。
一方で、数学者の Andreas Thom 氏が Mastodon(Mathstodon)で投稿していた内容によると、信頼面ではまだ疑問が残ったままのようです。
Thom 氏は以前、Gabor Kun 氏との共同研究(expander matching problem)について ChatGPT と議論していたそうで、非可解群(non-sofic group)に関する予想外の研究結果が OpenAI 側から発表された際、「自分たちの会話が学習データや推論プロセスに使われていたのではないか」と OpenAI の研究者 Mark Sellke 氏にメールで問い合わせたとのことです。
これに対する回答は「そのような会話はありませんでした」という一言だけだったそうで、Thom 氏は「少なくとも不誠実だ」と述べています。
さらに、昨日取り上げた Buckmaster 氏・Alpöge 氏のケースについても、OpenAI は「特定のユーザーデータへのアクセスはない」としながらも、「利用データから匿名化された情報がモデル改善に使われた可能性は否定できない」と回答したそうです。
証明のチェックは4桁速くなったのに、OpenAI が研究者との会話をどう扱っているかという肝心な部分の透明性は全然追いついていないというのが、なんとも皮肉だなと感じました。
技術的なブレークスルーが華やかに語られる裏で、こういう地味だけど大事な信頼の部分がなおざりにされている気がして、正直モヤモヤが残りました。
⬛️ Alibaba Cloud・Cambricon・Ant Group が PyTorch Foundation に加盟——上海発、オープンソースAIの布陣
Linux Foundation の発表で、9 月 8 日に上海で開催された「PyTorch Conference China 2026」にて、Alibaba Cloud と Cambricon が Platinum メンバー、Ant Group が Gold メンバーとして PyTorch Foundation に加盟したと報じられていました。
すでに参加していた Huawei と合わせて 4 社がキーノートに登壇し、Alibaba Cloud はチップ・モデル・インフラを横断した「オープン AI スタック」について、Cambricon はチップレベルでの PyTorch 対応強化について語ったとのことです。
中国の AI 企業がこれだけまとまって国際的なオープンソース基盤に合流してくるのは、なかなか象徴的な出来事だなと感じました。
