【はじまりの一冊】『喫茶トキカサネ〜この一杯だけ、時間が止まる〜』を、文学フリマ大阪14に、5冊ほど持っていきます!
「この本が、始まりだったな」
そう思いながら、ページをめくります。
今日は、文学フリマ大阪14の宣伝をするために、久しぶりに『喫茶トキカサネ』をパラパラと読み返していました。
いくつか小説を書き始めて、なんとなく思いつきでKDP(Amazon Kindle Direct Publishing)
に出した本です。
「へぇ。自分の本って、出せるんや」
たぶん、これがいけなかったんでしょうね。その勢いで、ペーパーバックまで作りました。そして、一冊だけ印刷しました。
手元に届いた本を、しばらく眺めました。表紙を見て。裏表紙を見て。もう一度、表紙を見る。
「……本になってる」
そりゃ、嬉しかったです。自分が書いたものが、本になった。それだけで、なんだかニヤニヤしてしまう。
ニマニマでもいいです。
マニィーマニィーでもいいです(まれに数円振り込まれます)

しばらくすると、別のことを思いました。
「これ、誰か読んでくれへんかな」
自分だけで眺めているのも、ちょっと寂しい。そんなことを思った。
それが、文学フリマへの始まりでした。
パラッ、パラ、パラ。ページをめくります。
中間管理職になって、仕事ではいろんなことがあります。家に帰れば、家庭でもいろんなことがあります。
そんな頃の自分を、鏡に映したような話でした。
「コーヒーを飲む。世界が止まる五分……悪くない」
アイデアとしては、悪くない。そこは今でも、そう思います。
ページを少し戻します。大きく首を横に振る。
「……拙いよなぁ」
文章が、たどたどしい。言葉も。文章のつながりも。
今なら、もう少し上手く書ける。たぶん……たぶん。そんなことを考えながら、またページをめくります。ちょうど、その場面を読み終えました。
大好きなコーヒーでも飲もう。
そう思って、コーヒーを淹れます。出来たてをマグカップに注いで、一口啜った。
「あれっ?」
音が消えました。
「……ん?」
時計を見る。止まっています。
「え?」
もう一度見る。やっぱり止まっています。
テレビも。パソコンも。エアコンの音も。何も聞こえません。
「ちょっと待って」
立ち上がります。窓の外を見る。
車が止まっています。人も動かない。
「……嘘やろ」
スマホを見る。画面はついています。時間が進んでいません。
「なんやこれ……」
時計を見る。スマホを見る。窓の外を見る。また時計を見る。
何とかしなきゃ。そう思います。
思いますが何をしたらいいのか、分かりません。
「……ええっと」
とりあえず、時計を見ます。意味はありません。
スマホも見ます。もちろん、意味はありません。
窓の外も見ます。やっぱり、何も動いていません。
しばらく、あれこれ試してみました。けれど。どうにもなりません。
「…………まぁ、ええか」
どうせ五分なんやろ(まったく根拠はありません)。せっかくやし、コーヒーでも、ゆっくり飲みましょか。
椅子に座ります。マグカップを持ちます。
一口。いつもより、ゆっくり。香りを感じます。
もう一口。
「静かやな」
時計も動かない。外も動かない。
誰にも急かされない。何かを決める必要もない。
ただ、コーヒーを飲む。
こんな時間、普段ならなかなかありません。
仕事のことも。家庭のことも。次にやらなきゃいけないことも。
今だけは、考えなくていい。
コーヒーを飲む。もう一口。
そうしているうちに、少しずつ気持ちが落ち着いてきました。
五分。
たった五分。
悪くない。
五分後。
突然、音が戻りました。時計が動き出す。エアコンが鳴る。外を車が走っていく。
「……戻った。良かったあ」
何事もなかったように、世界が動き始めました。仕事も、家庭も、明日の予定も、何も変わっていません。
机の上に置いた本を見る。
「……ようやったなぁ」
最初に作った一冊です。
文章は、たどたどしい。
今なら、もう少し上手く書ける。気がする。
たぶん。
……まあ、たぶんです。ええ、たぶんです……。
それでも、この一冊がなかったら、今ここでこうして本を眺めていることもありません。
「誰かに渡したい」
あの日、そう思った。
その「誰か」を探して。
気がつけば、文学フリマ大阪14に出ることになりました。
最初は、一冊だけだったんですけどね。
今では、何冊も本を作って、こうして文学フリマに持っていこうとしています。
なんだか、不思議なものです。
机の上の一冊を、もう一度手に取ります。ページをめくる。パラッ、パラ、パラ……パラパラパラッ。
あの日の自分が書いた物語が、ちゃんと残っています。
「……悪くないよな」
コーヒーを、もう一口。
すべての始まりとなった、あの日の記憶とコーヒーの香りを詰め込んだ一冊。
『喫茶 トキカサネ
〜この一杯だけ、時間が止まる〜』
文学フリマ大阪14に、5冊ほど持っていきます。
文学フリマ大阪14、【な-10】。
もし前を通ったら、ちょっとだけ立ち止まって、『喫茶トキカサネ』を手に取ってみてください。
あなたの五分を、分けてください。
『喫茶トキカサネ〜この一杯だけ、時間が止まる〜』
作:MMPP.K
B6/90ページ/1,000円
文学フリマ大阪14
2026年9月13日(日)
インテックス大阪2号館【な-10】
12:00~17:00
▼ 文学フリマ大阪14 Webカタログはこちら
▼ 他にも、連作掌編あります。
MMPPの「連作掌編集」
短い物語を、少しずつ重ねています。 一話ずつは短くても、読み進めることでひとつの物語になります。
MMPP Publishingの連作掌編作品をまとめています。
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