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特急列車の切符は、もう取ってある。

これは、東京を離れ、夫婦二人、鬼怒川で喫茶店兼ガラス工房を開くまでの物語のプロローグ。

本当は、もう少し早く出したかったけれど、やっぱり「これを書こう!」と思って書くのは、難しい。

何だか、卒論の「はじめに」を書いているような気分。

東京生まれ、東京育ちの私

私は、東京生まれの東京育ち。
そんな私が、なぜ東京を出ることを決意したのか、拙いながらも書いてみようと思う。

せっかくなら、やったことのない方法で、書いてみたい。
ベタな気もするけど、まずは私の脳内をちらりと。


Q. 東京が嫌いになったの?

A. いや、東京が嫌いになったわけではない。今でも、好きな場所はたくさんある。どこを歩いていても、何かを発見できるのが、東京の魅力だと思う。東京の美しいところも、汚いところも、いろいろと見つけてきたわけだ。そりゃあ、愛着がある。

Q. 学生の頃は、ずっと東京で生きていくつもりだったよね?

A. 学生の頃は、それで問題など何もなかった。ただただ、心地良かった。たくさんの刺激があって、人間観察にも飽きない。何者でもない人たちの中にいることが、とても気楽だった。その中で自分らしさを貫くことに、満足していたように思う。

Q. その頃とは、違う感覚になったわけだ?

A. そういうことになる。社会人になって、ふと考えることが増えた。「このまま一生、この生活を続けてゆくのかな」と。多少の変化はあっても、大きくは変わらないまま、歯車の一部として働き続け、些細なことで一喜一憂し、経済的な悩みを抱えて生きてゆく。情報の波に溺れ、欲望にまみれたまま、充足を知らずに生きてゆく。そう考えた瞬間、軽く絶望してしまった。現実は、あの頃思っていたよりも、ずっと厳しい。

Q. 具体的には、どんな瞬間に「東京を出たい」と思うの?

A. 数えたらキリがない。例えば、朝、満員電車に押し込まれている時。月末、クレカと家賃の引き落としが重なる時。気づけばずっとスマホいじってる自分に気が付いた時。本を読めなくなってる自分に気が付いた時。特別忙しいわけでもないのに、疲れが抜けない日々が続く時。お酒の量がどうしても増えてしまう時。人間関係が悪いわけではないけど、誰かと一緒に過ごした後に、どっと疲れてしまう時。

Q. 逆に、「東京に居続けたい」と思う瞬間は?

A. 地元の団地に帰った時。地域のお祭りに参加した時。都内をあてもなく散歩している時。素敵な喫茶店を見つけたとき。美味しいラーメン屋を見つけた時。多分、もっとたくさんあるけれど、上手いこと思い浮かばない。ただ、やっぱり「この街が好きだな」と思う瞬間は、確実にある。

Q. 結局、東京を出たいのか、それとも 居続けたいのか?

A. 正直なところ、その時々によって違う。東京を出たい時もあれば、東京に居続けたい時だってある。その両方を、ずっと抱えたまま、現在の私は生きている。


こんな感じで、一人、うんうん頷きながら、脳内会議をしている。以上が、私の正直な思いだ。

でも、この物語には、もう一人の登場人物がいる。夫だ。

私だけのことを考えれば、それほど東京にこてんぱにやられている(どういう状況なんだ…)、というわけではない。全然マシな方だ。現在の私は、東京でお気楽に生きている。

新卒で入った会社は辞めて、派遣社員として事務の仕事をしている。毎日決まった作業をして、褒められて、定時には帰る。

noteに毎日投稿する余裕もあるくらいだし。東京も「悪くないな」と思える瞬間が、ちゃんとある。

夫は、こんな感じの私とは、全然状況が違う。

丸くなった背中を、眺めている

夫は現在、IT専門誌の記者をしている。

基本は在宅勤務で、働き方の自由度は高い。人にも恵まれている。様々なIT企業のお偉いさんたちに取材をし、記事を書くという仕事だ。物腰が柔らかく、新しい知識を吸収することが得意な彼に、ぴったりの仕事だと思う。

けれど、あまりにも多忙だ。

平日、夜な夜な記事を書く彼の丸い背中を、眺めているのは辛い。

土日だって、半分くらいは仕事をしている。お酒と煙草の量も、増えている。とても健康的な生活とは言えない。

彼は、言う。

「東京で働き続け、生活をしてゆくことは『無』である」と。

私にとって、東京はそんな場所ではない。
でも、彼の置かれている状況も、彼が言わんとしていることも、理解しているつもりだ。

東京を出ることで、もっとこの街を好きになれるかもしれない

これまでの書きぶりだと、夫のために、東京を出ることを決意したように思われてしまうかもしれない。

けれど、そういうわけではないのだ。

私の望みは、二人が、のびのびと自然体のまま生きてゆけること。
それに、東京から離れてみたら、違う角度からこの街を楽しむことができるかもしれない、という淡い期待も抱いている。

昔から、一軒家には憧れがあった。
お店を開いて、自分のペースで働くことにも、魅力を感じている。

もちろん、その過程にも、実現後にも、たくさんの問題や困難が待ち受けていることは、重々承知しているつもりだ。

それでも、やっぱり、少しわくわくする。

まだまだ、人生はこれからだ。
だからこそ、早めに動き出したい。

移住先は、(この先、何らかの理由で変更になる可能性はあるが…)もう決まっている。
栃木県日光市鬼怒川。
これまで、彼と行った旅先の中で、特別お気に入りの地域なのだ。

来週の連休中に、訪れる。
もう、特急列車の切符は取ってある。

まだ、ほとんど何も決まっていない。
それでも、東京を出るという決意だけは、はっきりとしている。

この先どうなってゆくのか、正直わからない。
それでも、ここから始まる過程を、少しずつ記録していきたいと思う。

これは、初めの第一歩。

私たちの物語の、プロローグだ。


【今週のガラス】

水まんじゅうのような。

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