理想のズームレンズに出会う為に
私は35mmと75mm付近で撮ることが多い。
35mmで撮っているとき、24-70mmはとても使いやすい。
「もう少し広く」と思えば24mmまで。
「もう少し狭く」と思えば70mmまで。
35mmを中心に、その前後をレンズ交換なしで使える。
ところが、75mm付近になると事情が変わる。
例えば、
24-70mm / 70-200mm
という構成。
75mmで撮っていて、
「もう少し広くしたい」
と思えば70mmでは足りない。
逆に、
「もう少し狭くしたい」
と思っても、70-200mmへ交換する必要がある。
もちろん、レンズを交換すればいい。
でも私の場合、75mm付近で撮っているときは、
「もう少し広く」も「もう少し狭く」もしたくなる。
画角を少し変えたいだけなのに、レンズ交換が発生する。
ここから、レンズ選びの別の見方を考えるようになった。
「レンズ交換ポイント」という考え方
私は、レンズのワイド端とテレ端を、
「レンズ交換ポイント」
と考えるようになった。
例えば、
24-70mm
24mm ───────── 70mm
35-150mm
35mm ───────────────── 150mm
70-200mm
70mm ─────────────── 200mm
ここでいうレンズ交換ポイントとは、
その焦点距離を越えて画角を変えようとすると、別のレンズへの交換が必要になる境界
のことだ。
実際には、好きなタイミングでレンズを交換できる。
ここで言っているのは撮影中の物理的な交換タイミングではなく、レンズの端にある「焦点距離の境界」のことだ。
そして重要なのは、
このレンズ交換ポイントと、自分がよく使う焦点距離との位置関係
なのではないかと思った。
好きな焦点距離を、レンズ交換ポイントにしない
例えば35mmが好きなら、24-70mmは相性がいい。
35mmで撮っていて、
「もう少し広く」
と思えば24mmまで。
「もう少し狭く」
と思えば70mmまで。
どちらにもレンズ交換なしで対応できる。
35mmがレンズの端ではないからだ。
一方、75mm付近をよく使う場合、
24-70mm / 70-200mm
では70mmが境界になる。
75mm付近で撮っていると、少し画角を変えたいだけでもレンズ交換が発生する。
だから私にとっては、
好きな焦点距離をレンズ交換ポイントにしないこと
が重要になる。
そこでTAMRON 35-150mm f/2-2.8と出会った

私がTAMRON 35-150mm f/2-2.8を使ったとき、この考え方がはっきりした。
35-150mmなら、
35mm ───── 75mm ───────── 150mm
となる。
私がよく使う75mm付近は、レンズの中央付近にある。
75mmで撮っていて、
「もう少し広く背景を入れたい」
と思えば35mm側へ。
「もう少し背景の情報を間引きたい」
と思えば150mm側へ。
どちらにもレンズ交換は必要ない。
つまり35-150mmは、
私にとって好きな75mmという焦点距離を、レンズ交換ポイントから解放してくれた。
これが、私にとって35-150mmの大きな意味だった。
焦点距離の重複は、無駄ではない
ここで、
24-70mm / 35-150mm
という組み合わせを考えてみる。
焦点距離だけを見れば、35〜70mmが大きく重複する。
24-70mmは、
24 ───── 35 ───── 50 ───── 70
35-150mmは、
35 ───── 50 ───── 70 ─────── 150
明らかな重複だ。
でも、私にとってこの重複には意味がある。
これは単なる焦点距離の重複ではない。
好きな焦点距離を、レンズ交換ポイントから外すための重複
でもあるからだ。
つまり、
焦点距離の重複=無駄
ではない。
その重複によって、何を得ているのかが重要なのだ。
24-70mmと35-150mmは、同じ役割ではない
では、35〜70mmが重複していることで、レンズ選びに迷わないのか。
私の場合、あまり迷わない。
なぜなら、焦点距離だけでレンズを選んでいないからだ。
24-70mmは、
広角側から見るためのレンズ。
35-150mmは、
望遠側から見るためのレンズ。
言い換えれば、
24-70mm=広角の撮れる標準
35-150mm=望遠の撮れる標準
という感覚だ。
35mm付近を中心に撮るなら24-70mm。
75mm付近を中心に撮るなら35-150mm。
同じ35〜70mmを撮れても、私の中では役割が違う。
だから、この重複は無駄ではなく、二つの撮影領域をつなぐために必要な重複になっている。
私は、撮影の起点でレンズを選ぶ
実際にどちらを付けて撮り始めるのか。
私の場合、外出するときはほぼ35-150mmを付けている。
35mmから150mmまで、私がよく使う範囲を一本でカバーできるからだ。
一方、室内では24-70mmを使うことが多い。
狭い空間では24mmが欲しくなるからだ。
ポートレートでは、24-70mmと35-150mmの両方を持ち出す。
24mmから150mmまでをカバーするためだ。
このとき35〜70mmは大きく重複している。
しかし、その重複によって、どちらのレンズを付けていても自分の好きな焦点距離を失わない。
これは、
「どちらが正解か」
という問題ではない。
どの目線から撮影を始めるか
という問題なのだ。
私は焦点距離が好きなのではない。写真が好きなのだ
では、75mm付近が好きなら、85mmの単焦点でいいのではないか。
そう思う人もいるかもしれない。
しかし、私は焦点距離そのものが好きなわけではない。
私は写真が好きなのだ。
例えば85mmで撮っていて、
「もう少し背景を広く写したい」
と思ったとする。
単焦点なら、一歩下がるという方法がある。
しかし一歩下がれば、被写体との距離も変わる。
被写体の大きさを維持したまま、背景の写り方だけを変えることはできない。
ズームレンズなら、撮影距離を意識しながら焦点距離を変え、
「もう少し広く」
「もう少し狭く」
という調整ができる。
私にとってズームレンズは、単にレンズ交換を減らすための便利な道具ではない。
焦点距離と撮影距離をその場で調整し、自分が思い描いた写真に近づくための表現の道具
なのだ。
だから私は、
焦点距離が好きなのではない。
写真が好きなのだ。
75mmは、私にとって特別な焦点距離
では、なぜ75mmなのか。
私がレンズ沼に入るきっかけになったレンズは、
PENTAX FA77mm F1.8 Limited
だった。

写真を始めたばかりの頃、私は風景ばかりを撮っていた。
そんな私が、見た目がとても好みだったという理由だけで、このレンズを買った。
決して安いレンズではなかった。
ただ、
「このカッコいいレンズを使いたい」
という思いだけで購入した。
結果、最初はめちゃくちゃ後悔した。
77mmは、私にとってとても使いづらかった。
今なら分かる。
77mmはポートレートにも向いた焦点距離のひとつだ。
しかし当時の私は、そんなことも知らなかった。
写真を始めたばかりの初心者が、77mmだけで風景を上手く切り取れるわけもない。
どう撮ればいいのか分からない。
それでも、せっかく買った高価なレンズだった。
「なんとか元を取らなければ」
そう思って、いろいろ試行錯誤した。
当時、カメラを趣味にしている知り合いから、こんな言葉を教えてもらった。
「どんなにくだらないと思うことでも、良いと思ったら3年続けてみなさい。」
その頃には、自分の味が出てくる。
私はその言葉を信じて、写真を撮り続けた。
相変わらず、撮っていたのは風景だった。
でも3年経った頃には、
3年前の自分の写真より、今の自分の写真のほうが好きだ。
そう思えるようになっていた。
77mmが突然、使いやすいレンズになったわけではない。
77mmを使えば、誰でも写真が上手くなるわけでもない。
ただ、使いづらかったからこそ考えた。
どうすれば、この焦点距離で自分が撮りたい写真を撮れるのか。
その試行錯誤を続けたことが、今の自分の写真につながっている。
このレンズは、単に77mmという焦点距離を好きにしてくれたレンズではない。
私に写真をより好きにしてくれたレンズだ。
今でも大切にしている。
だから私にとって75mm付近は、スペック表の中の中途半端な数字ではない。
写真を撮るうえで、特別な意味を持つ焦点距離なのである。
重い機材は、本当に撮影のリズムを壊すのか
35-150mm f/2-2.8は、決して軽いレンズではない。
24-70mmと35-150mmを両方持てば、システム全体の重量も大きくなる。
「レンズ交換によるリズムの断絶を避けるために、重い機材を持つことになれば、それこそ別の負担ではないか」
という考え方もある。
これはその通りだと思う。
機材が重すぎて歩くことが億劫になったり、疲れて撮影そのものが嫌になったりするのであれば、その重量は撮影のリズムを壊している。
だから、重さを無条件に肯定しているわけではない。
重要なのは、
その重量を自分が扱えるかどうか。
私の場合は、ストラップの使い方やカメラとレンズの重心を意識することで、35-150mmの重量を許容できている。
もちろん、自分が扱える範囲を超えてまで重い機材を持つ必要はない。
ただ、理想の写真を撮るために必要な機材が重いのであれば、その重さを扱えることもまた、その機材を選ぶ条件になる。
私は、
重い機材を持てることより、重い機材を操れることのほうが重要だ
と思っている。
これは「24-70mm+35-150mmが正解」という話ではない
ここまで読むと、
「では、24-70mmと35-150mmの組み合わせが最適なのか」
と思うかもしれない。
そういう話ではない。
これは、あくまで私の場合の話だ。
35mmが好きなら35mm。
50mmが好きなら50mm。
85mmが好きなら85mm。
風景、スナップ、ポートレート、スポーツ。
撮るものが違えば、よく使う焦点距離も違う。
だから、理想のレンズ構成も人それぞれになる。
重要なのは、
何mmが正解なのかではない。
自分にとって、どの焦点距離で撮りたくなるのかを知ることだ。
自分にとって「理想のズームレンズ」とは何か
「レンズ交換ポイント」という考え方を持つようになって、私のレンズを見る視点は変わった。
以前は、
「何mmから何mmまで撮れるか」
を見ていた。
今は、それだけではない。
「自分がよく使う焦点距離が、レンズ交換ポイントになっていないか」
を見る。
そして、
「もう少し広く撮りたい」
「もう少し狭く撮りたい」
と思ったときに、レンズ交換が発生しないかを考える。
つまり私にとって理想のズームレンズとは、
単純に焦点距離を広くカバーするレンズではない。
自分がよく使う焦点距離を中心に、その前後をレンズ交換なしで自由に使えるレンズだ。
その意味で、私にとって35-150mmは非常に理にかなったレンズだった。
あなたの「レンズ交換ポイント」はどこだろう
私がこの記事で提案したいのは、
35mmでも77mmでもない。
まして、
24-70mmと35-150mmという特定のレンズ構成でもない。
提案したいのは、
「レンズ交換ポイント」という視点から、自分の理想のレンズ構成を考えること
だ。
まず、自分がよく使う焦点距離を考えてみる。
そして、その焦点距離がレンズ交換ポイントになっていないかを見る。
もしなっているなら、
「もう少し広く」
「もう少し狭く」
という両方の欲求に、レンズ交換が発生していないかを考えてみる。
その焦点距離をまたぐレンズを選ぶことで、撮影のリズムを維持できないかを考えてみる。
焦点距離の重複は、必ずしも無駄ではない。
その重複によって、
自分がよく使う焦点距離を、レンズ交換ポイントから外す。
そんな考え方もできる。
レンズを選ぶとき、
「どこまで撮れるか」
だけではなく、
「自分がよく使う焦点距離を、どこまでレンズ交換なしで使えるか」
を考えてみる。
あなたにとっての、
「レンズ交換ポイント」は、どこだろう。
そして最後に。
散々、機材の話を書いた。
レンズの焦点距離について考え、重複について考え、レンズ交換について考えた。
でも、誤解がないように伝えておきたい。
私は焦点距離が好きなのではない。
写真が好きなのだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
写真には、まだまだ「なぜ?」と考えてみたいことがたくさんあります。
これからも、撮ること、見ること、機材のこと。 写真について自分なりに考え、言葉にしていきます。
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