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夜店

夏が来る‼
夜店の明かりを見ると、胸の奥に眠っていた記憶が、ふわりと目を覚ます。
子どもの頃の夜店は、年に一度の夢の国だった。
 夕暮れになると、遠くから聞こえる祭りばやしに胸が高鳴り、色とりどりの提灯、甘い綿菓子の香り、金魚すくいの水音、そのすべてが魔法の世界のように思えた。
 思春期になると、夜店は少し違う場所になった。
「いつか好きな人と歩いてみたい。」そんな叶うかどうかわからない夢を胸に、人混みの中で誰かの横顔を探していた。夜店はゆかた姿の女性に憧れる少年の、小さな願いをやさしく包んでくれる場所だった。
やがて、その夢は現実になった。
大好きな人と並んで歩いた夜店。電球のやわらかな光に照らされたその笑顔は、どんな景色よりも美しく、世界中の光を集めたように輝いて見えた。
「ああ、この人とずっと一緒にいたい。」
そんな言葉にもならない想いが、胸いっぱいにあふれた夜だった。
月日は流れ、今度は子どもの小さな手を引いて夜店を歩くようになった。
目を輝かせながら笑う姿を見ているだけで、胸が満たされていく。
幸せとは、大きな出来事ではなく、誰かの笑顔を見つめていられる時間なのだと、その頃初めて知った。
そして今。
今度は孫の小さな手が、私の手をぎゅっと握っている。
その手はまだ小さいのに、不思議なくらい温かく、未来への夢や希望をそっと包み込んでいるように感じる。
「おじいちゃん、あれ見て。」
無邪気な声に顔を上げると、夜店の灯りは昔と何も変わらず優しく揺れていた。
夜店は変わらない。
変わってきたのは、そこを歩く私だ。
夢を追いかける子どもだった私。
恋に胸を焦がした思春期だった私。
愛する人と未来を誓った青年だった私。
子どもの笑顔に幸せを教えられた父親だった私。
そして今、小さな手に未来を託す祖父になった私。
目の前の景色は少しずつ変わり、人は入れ替わっても、心を照らしてくれる灯りだけは、いつまでも変わらずそこにあってほしいと願う。
今年もまた、夜店の明かりがともる。
その灯りは、私の歩いてきた人生を静かに照らしながら、これから歩いていく大切な人たちの未来まで、優しく照らし続けてくれるのだろう。

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