【古代F1マシンの走らせ方】強力なエンジンで少ないダウンフォースの車をいかに滑らせずに走らせるか「古典的なドライビング技術」とは
1960年代のレーシングカーは、エアロがほぼ無しで、ダウンフォースが非常に小さいです。
このボディに強力なエンジンを積んでいるので
「いかにタイヤを滑らせずに走らせるか」が大事なテクニックになります。
たとえばホンダのRA 272
「RA272」は、ホンダ(Honda)が1965年のF1世界選手権参戦用に開発した、非常に歴史的価値の高いフォーミュラカーです。
RA272が走行した1960年代半ばは、F1におけるエアロダイナミクス(空力)の概念がまだ黎明期であり、マシン設計の思想が現在とは大きく異なっていました。
RA272は、空気抵抗を極限まで減らすことを重視した、葉巻型と呼ばれる滑らかなボディ形状をしていました。
このデザインは最高速度の向上には貢献しましたが、「ダウンフォース」という現代F1の根幹をなす要素をほとんど発生させません。
ボディ形状で少しは空力にも配慮されているとはいえ時速200キロオーバーで走るには大きな羽が欲しいところです。
ダウンフォースとは:
車体が高速で移動するときに、空気の流れを利用して車体を地面に押し付ける下向きの力のことです。
RA272の状態:
RA272には、現代のF1マシンにあるような大きなフロントウイングやリアウイングが存在しません。そのため、走行中にタイヤを路面に押し付ける力がほとんど発生しませんでした。
運転の難しさ:
コーナーを曲がる際、タイヤのグリップ力は車重とダウンフォースによって決まります。ダウンフォースがなければ、タイヤのグリップは純粋に車の重さと機械的なセッティングに依存します。
結果として、高速コーナーでは車体がすぐに浮き上がり、少しでもオーバースピードになると簡単にタイヤが滑り出し、スピンにつながります。ドライバーは、現代の車では考えられないほど慎重にスピードを落とし、コーナーを通過する必要がありました。
スリップアングルへの高い依存
路面との対話:
ダウンフォースに頼れないため、当時のドライバーはタイヤが持つ機械的なグリップの限界を、手のひらや臀部を通じて常に感じ取る必要がありました。
現代のF1では、ダウンフォースでタイヤを路面に押し付けてグリップを生み出しますが、RA272のようなマシンでは、車体を意図的に少し横滑りさせる「ドリフト(スリップアングル)」を活用し、その微妙な角度で車をコントロールする必要がありました。これは非常に高度なテクニックと精密なセッティングが求められます。
不安定な挙動とドライバーの体力消耗
直線でも油断できない:
走行中に発生する空気抵抗(ドラッグ)はありますが、車体を安定させるための力が少ないため、高速での直進時でもわずかな路面の凹凸や風の影響で車体が振られやすかったです。
ステアリング操作のシビアさ:
グリップの限界が低いため、ステアリング操作も現代のように一気に切ることはできず、非常に細かく、「切る」というより「当てる」ような繊細な操作が要求されました。
まとめると、RA272の運転は、現代のGTカーやF1のように電子制御や空力で安定させられた状態ではなく、「グリップ限界が低い中で、高出力のエンジンパワーをドライバーの技術だけでねじ伏せる」という、非常に過酷なものだったと言えます。

「強力なエンジンをいかに滑らせずに使うか」という古典的なドライビング技術は、現代のレースゲームや市販車では体験できない、1960年代のレーシングカーの神髄とも言えます。
これは、電子制御やダウンフォースに頼らず、ドライバーの五感と繊細な操作のみでマシンと対話する技術です。

1. 究極の「スロットル・コントロール」
エンジンパワーをタイヤのグリップ力の中に収めるための、繊細で精密なアクセル操作が中心となります。
パーシャル・スロットル(半開)の維持:
コーナー立ち上がりで全開にするとすぐにタイヤが空転し、タイムをロスしてしまいます。
ドライバーは、「これ以上踏んだら滑り出す」というギリギリの境界線を足の裏で感じ取りながら、アクセルを細かく開閉し、パワーを絞り出します。
RA272のような高回転型のV12エンジンですと、パワーバンドに入ると急激にトルクが立ち上がるため、その瞬間をいかに滑らせずに乗り切るかが勝負でした。
「巻く」操作:
コーナーの出口が見えたら、一気にアクセルを踏み込むのではなく、滑らかに、段階的に踏み込んでいきます。これを「アクセルを巻く」などと表現することがあります。
路面とタイヤの状況(温度、摩耗)を常に感じ取り、少しでもグリップが抜ける兆候があれば、瞬時にアクセルを戻す反射神経が求められました。
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2. 予見的な「ライン取り」と「ステアリング操作」
ダウンフォースがないため、速く走るためには、曲がらないマシンをいかに無理なく曲げるかが重要でした。
大きなR(アール)のライン取り:
現代のF1のように鋭角的に曲がるのではなく、遠心力を極力抑えるために、コーナー全体を大きく使い、カーブの曲がりを緩やかにするラインを選びます。
これにより、タイヤにかかる横方向の力が減り、グリップを維持しやすくなります。
カウンター操作の精度:
スリップアングル(タイヤが滑っている角度)を常に監視し、リアが流れ始めたら、極めて微細なカウンター・ステア(逆ハンドル)で修正します。
カウンターが大きすぎると、すぐに逆方向へマシンが振られて(オーバーステア)スピンしてしまいます。一瞬で修正を終え、再びアクセル操作に戻る精度が必要です。
3. マシンの感覚との「対話」
電子制御が全くないため、ドライバーはマシンが出すすべての情報を直接受け取り、操作に反映させます。
振動と音: エンジンやタイヤから伝わる振動、排気音の変化から、エンジンの状態や、タイヤがグリップ限界に近づいているか否かを判断していました。
サスペンションの動き: 当時はサスペンションが剥き出しになっているマシンも多く、ライバルドライバーは前のマシンのサスペンションの動きを見て、そのドライビングテクニックを盗んだという逸話もあるほど、メカニカルな動きが重要でした。

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