雪に埋もれて大変だったんです。
今年の冬は、ひさしぶりに「雪、やる気出してきたな」と思うくらいの降りっぷりです。
裏庭の薪小屋もすっかりこの通り。薪ストーブに焚べる薪をとりにいくのも一苦労です。

桜の木は足もとはすっぽり埋もれて、細い腕だけを空に伸ばして立っています。

ぱっと見は、どこにでもある冬の風景なのですが、雪どけの水が土にしみ込んで、木や草花の水分になっていって、そこに溶けたミネラルも一緒に運ばれて。
見えない土の中では春に向けて、懸命に生命のシステムが働いていると思うと、「冬=ただの試練」ではなく「生命のための大事な下ごしらえ期間」に見えてくるから不思議です。
だから春に咲く桜の花がとても待ち遠しく、愛おしくなります。


その「下ごしらえ」は、人間側にも、まあまあ容赦なく降りかかってきます。
うちは小高い丘のうえに建っていて、裏は斜面、表は道路。雪かきのメイン会場は、いつも正面玄関とその前の路面です。
除雪車がずおーっと通って、道路の雪をどかしてくれるのはありがたいのだけれど、そのあとにきっちり残される「押し固めた雪の壁」が、ドドンと立ちふさがり、毎回ボスキャラ感を出してくるのです。
歩道へ出る通路が何メートルもの長さできれいにふさがれてしまうので、「はい、ここから延長戦です」と言われた気分で、またスコップを握りなおすことになります。
雪を押して、持ち上げて、投げる。
シンプルな3コンボを何十回もくり返しているうちに、「あ、まだこんなところにも筋肉あったんだ」と思い出させてくれる場所が、体のあちこちに出てきて、さらに腕、肩、腰、脚…。翌朝、きっちり筋肉痛になっています。
そう、あれは忘れもしない2015年3月17〜18日にハリファックスを直撃した、1日の降雪量60cm(環境カナダのデータとして記録された)の大雪のお話をしましょう。
そのとき夫は日本に一時帰国中で、私は一人の自由な時間をルンルンと満喫していました。
「やっぱりいいなあ。旦那がいない一人の時間ってのもたまには。
こういう時間が必要だったんだ私は。」
とか思いながらビールをグビリと飲んだりしておりました。
「明日ストームが来ます」とTVのニュースからは聞こえてはいましたが、どうせいつものように大したことないだろう、とそのまま寝てしまったのでした。
翌朝、勝手口の内開きのドアをあけたら、これでした。

「え?まさか自宅で遭難?」
なんと雪がドアの半分近くまで積もっているのです。しかも私は、シャベリング用のシャベルもなにも小屋からもってきておらず、雪かきができない、ので外に出れない。
そこで、ええい!と、もちだしたのがフライパン。
私はこの雪をフライパンでまずは小屋まで搔き散らかし、なんとかシャベルゲット。
しかも、その後10日ほどのあいだに、似たようなストームが立て続けに計2回もやってきて、「これは何かの修行コースなのかな?」と問いかけたくなるような冬でした。
スコップを入れても入れても終わらない雪、腰深くまで積もっている雪を掻いて、一旦作った歩道が、除雪車によってあっさり上書きされていくので、
ひたすら朝から夕方まで掻き続けたっけ。
あのときは、さすがに心がポキっといきかけたのですが、どうにか一人で乗り切ったあの冬が、いまのわたしにとっての「基準」になっています。
なのであのときに比べれば、どんな降雪も今はぜんぜんかわいいものなのです。
雪に対してのメンタルの筋トレとしては、なかなかよかったのかもしれません。

今日も、ひとしきり雪と格闘してから家の中に戻ると、薪ストーブのあたたかさが沁みました。

って感じでスーとココは元気いっぱいに遊んでいます。
うちの薪ストーブは、冬のあいだは24時間稼働しています。
火のゆらぎと、薪が小さくはぜる音を聞きながら、かじかんだ手でマグカップを包みながら、ストーブの前にどさっと座り込むと、心から「ああ、幸せ。」と感じます。

撒きをくべるのは朝、夕の一日2回ほどですみます。
そんなふうに、冬にさんざんしごかれるからこそ、春がとっても待ち遠しくなります。
まだまだ先だというのに、頭の中には自然と「春になったらやりたいことリスト」が並びはじめるのです。
🚙陽射しを浴びながらドライブに行きたいな。
🌹ひろがる海、野に咲く花々、そのあいだを抜けていくやわらかい風のなかをゆっくり散歩したい。
🥬プリンスエドワードの春のファーマーズマーケットのとれたて野菜をゲットしたい。ついでにアイシングのたっぷりのっかったキャロットケーキも。
なんてことを想像すると、今日の雪の重さも、筋肉痛も、ちょっとだけ「まあ、いっか」と思えてきます。
次回は、そんな快適なシーズンに訪れたプリンスエドワード島へのドライブ、小さな旅の足跡を振り返りながら書いてみようと思います。
これからPEIに行かれるかたも、何度も行かれた方にも、島の風を感じながら読んでいただけたらうれしいです。
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