信号機葡萄味 磯貝繁雄の日記帳(670字)|毎週ショートショートnote
今週のお題 #信号機ぶどう味 むっむずかしい。 #毎週ショートショートnote
『信号機ぶどう味 磯貝繁雄の日記帳』
初恋はレモンの味。
思い出すのは校舎裏のケヤキの木。
いや、ごめんなさい。美化し過ぎた。
せいぜいチューインガムレモン味。
いつまでも噛み続けて、もう味などしない初恋。
「校舎裏★チューインガムレモン味」
3度目の恋は葡萄味。
渋くてあまい。
思いおこすのは、失意の中、見上げた信号機。
磯貝繁雄は22歳だった。
「信号機★葡萄味」
繁雄は奥手だった。
はつこいも2度目の恋も実らなかった。
3度目の恋にして、はじめての彼女。
なにをチマヨッタノカ。
当時、トレンディドラマの全盛の時代。
繁雄は、横断歩道上のチューに挑んだのだ。
そして、破れた。
「なにやってんの?ひかれるよ」と一刀両断。
何をしたかったのか、お相手にばれなかったのだけが救い。
今、考えても渋い。
渋すぎて、顔から火が出る思いだ。
見上げた信号機は色を失っていた。
「信号機★にがしぶほのあま葡萄味」
自分に酔った。発酵した葡萄。若気の至り。
なのに、ほんのりと甘みが残るのが不思議だ。
今、繁雄は愛妻と
「リビング★梅干し味」を満喫している。
ほぼ、ずっと酸っぱい。甘くない。酸っぱい。
しかし、飽きることはない。長持ち。
何をしているか? って。 #なんのはなしですか ? って。
分類して記録している。
風景にひもづく記憶と、ほのかな味覚の記録をメモしているのだよ。もう戻らない日々をキーワードで結ぶ遊びだ。
なんでって?なんでなんてきかないでくれ。
なんでもないのだ。書き留めておきたくなっただけ。
強いて言うなら、少しだけ思い出の色と匂いが濃くなる。
繁雄は、ご満悦で日記帳をぱたんと閉じた。
そうだ!初恋未満は「園庭★綿菓子味」だったな。
ケイコ先生お元気ですか?
今週も参加します!よろしくお願いします。
