七夕の歩幅(626字)|毎週ショートショートnote
七夕の歩幅
「ななに会えますように」
商店街のアーケードの入口に大きな笹が、7月とともに、急に現れた。
横には、折り紙と筆ペンが置かれている。
のびのびとした文字で、無邪気な願いが揺れる。短冊も願いもカラフルだ。
大人の願いも混ぜてね。丁寧に書いた。
買い物中にも書いたことが気になっていた。迷信だよね。
だけど、ちょっとくらい信じてもいいよね。
買い物を済ませて、また七夕の笹に戻った。
贅沢は言わないので叶えてください。
「夢でもいいので」と一度飾った短冊を探し書き加えた。
「ななに会えますように。夢でもいいので」
* * *
そして、そんなことをすっかり忘れた七夕の夜。
蒸した暑い夜だった。
アイスを求めて深夜のコンビニに向かった。
商店街の八百屋や喫茶店、どの店も閉まっている。
コンビニだけが明るい。
暗闇に浮かぶ街灯が光の橋を作っている。
たたたっ。音が向かってくる。
たたっ、足音が止まった。
私の横にぴたっと寄り添う気配。
ななだ。
たたたった。絶対、ななの足音だ。聞き間違うわけがない。
だって、雨の日でも毎日一緒にお散歩したんだ。
食べかけのアイスが溶け出して我に返る。
ななの足音が待ちきれないとばかりに走りだした。
小走りでななの歩幅に合わせて走る。
街灯の光が緩やかな坂道に沿って、アーチを描く。光はかささぎの羽のように交差する。やっぱり橋のようだ。
あーもうすぐ橋の端についちゃう、お別れかな…。
とととっと足音が走り抜けていった。
振り向きもしないんかい(笑)
なならしいね。
七夕の神さま、ありがとうございます。
みんなが会いたい人に会えますように。
晴れてよかった。
今週も参加させていただきました。ロマンチックは書けませんでした。
来週頑張ります。
