入院中に、いちばんやさしかった本―『お探しものは図書室まで』の話
今日は、青山美智子さんの 『お探し物は図書室まで』 を紹介します。
この本は、2021年の本屋大賞で第2位になった作品です。
文庫本の売れ筋ランキング1位になったこともあります。 読むと、心があたたかくなる連作短編集です。
連作短編集という読みやすさ
それぞれ独立したお話なんですが、通して読むと同じ登場人物が出てきたりと、話がつながっています。
舞台は、町の小さなコミュニティハウスにある図書室。 そこで働いている司書の小町さゆりさんが、この物語の中心人物です。
司書・小町さゆりさんという存在
小町さん、雰囲気はちょっと不愛想で、体も大きめ。
作中で白熊みたいとか、ベイマックスという白い雪だるまのようなキャラクターに似てると表現されています。
最初は少し近寄りがたい感じなんですけど、 実はとても人の話を聞くのがうまい人なんですね。
「え、これ?」と思う本と、羊毛フェルトのおまけ
仕事や人生にちょっと悩んでいる人たちが、 「本を探しています」って相談すると、 小町さんはその人の話を聞いて、 え、これ?って思うような意外な本を選んでくれます。 しかも、可愛い羊毛フェルトのおまけ付きで。
羊毛フェルトとは、羊の毛の繊維を絡ませて、固めて、いろんな形をつくる手芸です。
この本の表紙の写真は、小説の中に実際に出てくる羊毛フェルトのおまけたちです。
それぞれの人生の悩み
このお話に登場するのは、 21歳の販売員さんだったり、30代の編集者さん、 定年退職したおじいさんだったり。 年齢も立場もバラバラな5人です。
それぞれ、 「やりたい仕事が分からない」とか 「出産でキャリアが止まってしまった」とか 「退職したあと、何をしたらいいか分からない」 そんな悩みを抱えています。
無理に励まさない物語
でもこの本、 「頑張れ!」とか「こうしなきゃダメ」って言わないんですよ。
小町さんの選んだ本が、 そっと横に座ってくれる感じで、 仕事や人生に対する新しい角度からの見方や考え方を気づかせてくれるんです。
作中に出てくる本は、どれも実際に存在する本なのが、この物語の面白いポイントです。
たとえば、仕事に行き詰っている人には「ぐりとぐら」の絵本。 定年退職後に何をするべきか迷っている人には草野心平の詩集など。
この本を読んでいると 「そんな考え方もあるんだな」とか 「もう少し気楽でいいのかも」 って思えるのも、好きなところです。
私にとって特別な一冊
私にとって、この本はちょっと特別で。 数年前、入院していたときに、 父が差し入れてくれた本なんです。
入院中の私は、なかなか集中して本が読めなかったんです。 体もしんどいし、気持ちも落ち着かない。
でもこの本は短編なので、 一話ずつ、無理なく読めました。
入院中は「前向きになろう」とか「がんばらなきゃ」という言葉が少し重く感じていた時期だったんですが、 この本は無理に励ましてくれることはなく、 ただ隣に座ってくれるような存在でした。
読み終えた後に 「退院したら、もう少しだけがんばってみようかな」 と自然に思えました。
おわりに
これから先も、人生に迷ったときに読み返したいと思える一冊です。
何かに悩んでいるひととか、 誰かに背中を押してほしいひとに、 ぜひ手に取ってみてほしいなと思います。
きっと、明日が少しだけ明るく感じられる本です。
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