「AIに奪われる職種」ど真ん中の僕が、まだ奪われていない話 |働き方|DX|市場価値
「AIに仕事を奪われる」
ここ数年、この手の話をあらゆるメディアで目にするようになりました。
僕はデータ分析を仕事にしています。
AIそのものが本業というわけではないですが、データを扱う仕事は機械学習やAIと地続きなので、他の職種と比べるとかなり近い距離でAIと向き合い続けている方だと思います。
だからこそ思うのですが、現場から見えている景色は、世の中で語られているものとだいぶ違います。
今日はその話を書いてみます。
仕事は減っていない。むしろ増えた。
データ分析は、正直なところAIが一番得意な仕事の一つです。
データの集計も分析もモデリングも、AIに投げれば一定のアウトプットが返ってくる。
「真っ先に奪われる側」だと思っていました。
実際、2025年にGPTのエージェントモードやClaude Codeが出てきたときは、正直焦りました。
それまでのAIは対話形式でステップバイステップの指示が必要だったのが、データを渡すだけでアウトプットまで丸投げできるようになった。
試しに機械学習の予測モデル設計をやらせてみたところ、僕が2〜3時間かけるタスクを30分で仕上げてきました。
仮説は多少粗かったものの、ソースコードまで出来上がっているので、手直しすれば普通に使えるレベル。(今なら、もっとレベル上がっているかもしれません)
これは専門知識がなくても分析ができてしまうな、と思いました。
ただ結論から言うと、AIの登場以降、僕の周囲では仕事が減るどころか増えています。
AI導入の立ち上げ支援、データ基盤の整備、AIエージェントの構築、プロンプト設計。
ここ数年でこの手の案件は急激に増えました。
「AIが仕事を奪う」と言われている裏側で、「AIを動かすための仕事」が大量に生まれているわけです。
もちろんこれは僕がたまたまその領域にいるからで、すべての職種に当てはまる話ではないと思います。
ただ少なくとも、「AIの登場=仕事が消える」という単純な構図は、現場の実感とはズレていました。
AIが勝つのではない。AI×専門性が勝つ。
では何が起きているかというと、仕事の「仕方」が変わりつつあるのだと思います。
たとえば、統計の知識がない人がAIを使ってデータ分析をするケースと、統計の知識がある人がAIを使って同じ分析をするケース。
どちらのアウトプットがより質が高いかといえば、当然、後者です。
理由はシンプルで、知識がある人の方が「見えている範囲」や「どこが要点か」がわかるからです。
そのため、AIへの指示の粒度が違う。
予測モデル一つ作るのにも、
この事象はどの分布を仮定しているのか
前処理はどうするのか
どのモデルを使うのが適切なのか
目的を考慮すると評価指標はどれを使うのが適切なのか
など、挙げればきりがありません。
逆もまた然りで、僕はゴリゴリの理系なので、残念ながらクリエイティブな領域には明るくありません。
そのため僕がAIで作ったデザインよりも、プロのデザイナーがAIで作ったデザインのほうが、良いアウトプットになるのは想像がつきます。
つまり、「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIを使いこなせる専門家に仕事が集まる」という構造の方が、現場の実態に近いと思っています。
人間にしかできないことに、時間が集約されている
もう一つ、現場で感じている変化があります。
AIが得意な部分をAIに任せた結果、人間が担う仕事は「人間にしかできないこと」に集約されつつあるということです。
具体的に言うと、問いを立てる仕事と、人と合意を取る仕事。
データの集計や整形はAIがやってくれる。
レポートの下書きも作ってくれる。
でも、「そもそも何を明らかにしたいのか」という問いを設計するのは人間の仕事です。
そして、分析結果をもとに関係者と方針を合意するのも、いまのところ人間にしかできません。
要するに、AIが作業を代替してくれた分だけ、「考える」と「伝える」に使える時間が増えたと感じています。
これは脅威ではなく、むしろチャンスだと僕は思っています。
「伝える力」の価値が上がっている
そしてこの変化には、もう一つ重要な意味があると思っています。
AIの時代になっても残る仕事、むしろ需要が濃くなる仕事の中に、「伝える」という行為がしっかり含まれているということです。
どれだけ高度な分析をしても、それを意思決定者に伝えて、動いてもらえなければ意味がありません。この構造は、AIの前も後も変わっていません。
もちろん、AIが作ったアウトプットをこちらもAIで受け取り、解釈し、同様にAIでアウトプットを作り投げ返す、といった具合に、至る所にAIの影を感じるのは確かです。
しかし、まだ人間がそのやり取りに介在しているというのは、現場の感覚としてはあります。
アウトプットや意思決定の責任は、まだ人間が握っているということです。
というのも正直、分析の腕だけではうまく仕事は回りません。
むしろ分析結果を伝えて、人を動かす部分のほうが難しい場合もあります。
このnoteで「伝える技術」を書いているのは、そこをずっと試行錯誤してきたから、というのも理由の一つです。
「AIに仕事を奪われる」という話を聞くたびに、僕は少し違和感を覚えます。
かつてインターネットが普及して、調べ方が変わり、仕事のスタイルが変わったように、AIの場合も奪われるのではなく、変わる。
そして変わった先で求められるのは、問いを立てる力と、人に伝える力だと思っています。
異論はあると思います。ただ少なくとも、現場にいる一人の分析者には、そう見えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
普段は「伝える技術」をテーマに、仕事のコミュニケーションの悩みを一つずつ分解しています。
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先ほど「AIを使いこなせる人に仕事が集まる」「指示の粒度が質を決める」ということを書きました。
では、その"粒度"を実際にどう上げるのか——AIをただの道具から"最高の相棒"に変える4つのSTEPを、有料記事にまとめています。
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