実写には実写の役割~映画『ルックバック』(実写の方)感想
『ルックバック』に関しては原作既読。アニメの方の映画(以下アニメ版)は公開日当日の大雨の中、渋谷の映画館に観に行きました。
アニメ版はもう文句なく原作のイメージを損なうことのない見事な映画化だと思います。同じ原作者の『チェンソーマン』のアニメのようにアニメートし易いように整理された線ではなく、原作特有の揺らぎのようなものまで再現されていて、なかなか贅沢なアニメ化だなぁとも。
なので正直なところ、いまさら実写映画で何をするんだろうと。これ以上何を足すことがあるんだろうか。でも上映時間は明らかにアニメ版より長い。
個人的には漫画・アニメの実写化や、実写畑の監督が撮るアニメ映画(最近だとクレヨンしんちゃんの3Dのやつとかケロロとか)にはいいイメージがあまりないので、はいはいまたまたいらぬ監督の政治思想やなんかを盛り込んだり、浅い原作理解で適当コイたりして台無しにするんでしょ?などと斜に構えていました。(是枝監督にも思うところがありましたし)
それでもついつい観に行ってしまったのは、Xで見かけた藤本タツキ先生のコメントを読んだからでした。う~む、これはどうやら社交辞令で褒めてるのじゃなさそうな…。
藤本先生の鑑賞後コメントはこちら pic.twitter.com/jlhVFUyKDG
— 実写映画『ルックバック』公式 (@lookback_movie) September 11, 2026
映画館への道中に考えたのは、やはり何を足すのか。
あの原作に足すところがあるとすれば、周囲の大人とかかなぁ。少年(というか少女)期はとにかく自分のことに夢中で自分のいる舞台が何に支えられてるかはなかなか見えないけど、それを成り立たせてる大人たちの環境かな?
なんて予想は一部カスってましたが、それどころじゃなかった。
まあ要するに、上述のタツキ先生のコメントそのままなんでした。藤野と京本がそこにいた。特に京本が。それを補強するのに出来る限りのことをやった。という感じでした。
原作漫画は「少年ジャンプ+」というウェブマンガ誌で公開されたもので、厳密には少年誌とも言い難いけど一応少年誌で、しかもご存じのように藤本タツキという作家はあまり「いかにも」な少年向けの作風ではないものの、それでもそういう媒体の作品である故か主人公二人を比較的アップでとらえている。(極端な例で言うと、『ピーナッツ』では大人がほとんど出てこない、出ても脚だけみたいな。)アニメ版もそれに準じている。それに比べてこの実写版はややカメラを引いて、ロングでとらえてるような印象を受けました。
映画の序盤で小学校の先生や家屋(特に母親)のシーンが盛られていて、あ、やっぱりその辺か~と思ったんですよ。京本のおばあちゃんエピソードとか。でもそうやって見ていくうちに、二人の生きている場所、作業をする子供部屋や京本の家だけではなく、移動中のあぜ道や神社の階段、街並み、秋田の真っ白な美しい風景。それらを見て私は
「いいロケーションだなぁ。映画はこうでなきゃ」
などとのんきに見ていたのですが、終盤にそれらをスケッチした京本の風景画が出て来る時点で
「ああ、たしかに居たんだよなぁ…。」
となってしまい、感情が決壊しました。
同様な描写は原作やアニメ版にもあったのでしょうが、あたりまえのことながら実写ではメディアの違いがはっきりと表れるので、その彼女の風景画を通して京本がいた・京本が暮らした・そしてそんな世界を京本が描いていた…という部分がくっきりと浮かんでくるんですよ。
もちろんそういう効果を狙った描写は原作の時点であったのは判ってます。(葬儀後の京本の部屋など)でもやはり、このメディアの違いで魅せるというのは実写ならではだなぁ…と。
メディアの違いと言えば、終盤の「こうだったらよかった」的なIF世界をシンエイ動画のアニメパートで表現されていて、ここにも泣かされました。
【お知らせ💡】
— シンエイ動画【公式】 (@shin_ei_ani) September 12, 2026
実写映画『ルックバック』
アニメーションシーンをシンエイ動画が制作致しました!
是枝監督の元、アニメーション監督を久野遥子さんが担当しております。
一本の映画としてアニメーションまで楽しんで頂けたら嬉しいです。
ぜひ劇場でご覧ください!#ルックバック#実写ルックバック pic.twitter.com/i4l7R8nMID
あと、個人的にグッと来たのは二人の制作環境の変化ですね。私も子供のころに鉛筆で漫画を描いたりしてましたし、漫画も製作もアナログでもデジタルでも経験してますので、二人の作業風景が少しづつ進化していく過程がどんどん変化していくのを見ていて「うんうん、そうそう」って心の中でうなづいていました。
だんだんと絵が上手くなっていくのはもちろん、走らせる付けペンの流れも最初は引っかかってぎこちなかったのがだんだんと滑らかに、線を引く音も子気味よく、そして作画道具やトーン入れなどの作業環境が少しづつ育っていく過程なんかもほんとよくリサーチされてます。(なにせ、今まで見たドラマに出て来る漫画家なんて、「そんなやつおらへんやろ」てなのばっかりでしたので。)それにつれて絵や画面処理・構成なども処女作・短編第二作・三作と進むにつれ、確実に変化してる。
こういう部分一つとっても、監督やスタッフのモチーフへのリスペクトを感じられて気持ちいいですね。まあ、細かいことを言えば、周囲や衣服がもうちょっと汚れてたらよりそれっぽいとは思いましたけどw
そうそう、主演の二人もよかったですね。少年期と青年期で役者が変わってるはずなんですが、シームレスに見れるほど違和感を感じなくて驚きました。特に小学生の京本ちゃんのクシャクシャな感じ(褒めてます)がかわいかった。藤野は一軍女子っぽくて、たしかに友達から「漫画なんか描いてないで」って言われそうだな~と。
てな感じで、最初の警戒が嘘のように、しばらく「いい作品見たな~」という余韻に浸っていたのでした。ほかにも書きたい感想はあるけど、その辺は原作漫画やアニメ版とそうは変わらないからいいかな。今回はあくまで「実写版」でよかった部分。

