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PVを追わない"ムラ社会"ウェブメディアが目指す地域住民の「暮らしのインフラ」

ローカルメディアの役割や目的を聞くと、「地域の魅力発信」や「観光PR」「町おこし」を連想する方が多いと思います。

人口1.7万人の佐賀県基山町を拠点に活動を続けているウェブメディア『大字基山』が目指している姿は、そのどれとも違います。
私たちが目指したのは、インターネットの中なのに、あえて閉鎖的であることを良しとする"ムラ社会"的サイトです。

「広域に読まれなくていい」。そう割り切るから、アクセス数(PV)の最大化は最優先事項ではありません。

21世紀に、時代の逆行のようにも聞こえるだろう、このコンセプト。
なぜ、広く開かれた情報の海ではなく、「ムラ」という狭いコミュニティに閉じる発想に至ったのか。

それは、地域情報の「空白」を埋めるウェブメディアが、住民の暮らしを支える「情報インフラ」への進化を目指す、仮説の検証でした。


ムラは情報を「共有」し合う

断言しておきたいのは、私たちは「町おこし」のために記事を書いてはいない、ということ。

私たちの取材の原動力は、もっとずっと個人的で、泥臭いものです。

地域に暮らして困りごとに直面した「私」は、知りたいことを徹底的に調べるかもしれない。
ネットで探しても出てこない正しい情報を、関係各所に電話をし、現場へ足を運び、間違いがないか確認するかもしれない。
そうして獲得した誤解や間違いがないだろう情報を、同じく困っているだろう知り合いに「共有」するかもしれない。

クラスや近所に必ず一人はいるタイプ

この一連の流れは、ムラ社会では当たり前の「井戸端会議」そのものです。

「私」のように、必要に迫られると、一生懸命に調べる性格の人がいます。はたまた、面白がって「野次馬」にわざわざ出かける人がいます。

地域情報の空白を埋めようと試みるウェブメディアにおいて、この「私」が編集部であり、ライターです。

噂話を「信頼できる情報」に磨き上げるウェブメディア

ムラ社会では、こういった個人の時間・コストを使って得られた情報は、地域の価値として拡散する仕組みがあり、それが「井戸端会議」だと思います。

自身が行動して「へぇー!」と驚いたり、面白く思った地域の話題を、誰かに伝える。

ウェブ上にある地域情報の「空白」を埋めるローカルメディアの活動は、そういった「井戸端会議」の延長線上にあるものです。

しかし、決定的な違いもあります。

井戸端会議の無責任な噂話や口コミと違って、地域密着型ウェブメディアに掲載される記事は、「事実関係が間違いない、信頼できる情報」として磨き上げられているということです。

一対一から「町全体への共有」へ

井戸端会議とウェブメディアの違いは、「受け手」の数や広がり方にも見い出せます。

旧来の対面でおしゃべりする井戸端会議は、どうしても人数が限られます。対象も、家族や知人という「顔見知り」。その伝言ゲームによって、情報は地域に広がっていきます。

でもインターネット上なら、一度の記事公開で、直接的に「不特定多数の関心ある読者」に受け手が拡張されるというわけです。

小さなエリア内だからこそ、誰もが「間違いない情報」を求めています。
小さなエリア内だからこそ、書き手も読み手も「誤解されたくない」と願っています。

この「信頼の密度」を維持するために、当事者同士の「情報共有」という感覚を意識してローカルウェブメディアを運営しています。

ニッチな情報こそ「地域のストック資産」に

ムラ社会的であることのもう一つの大きな利点は、「地域情報のアーカイブ化」が自然と、かつ純粋な形で進むことです。

世の中のウェブメディアの多くは、公開直後の瞬間的なアクセス(PV)を目指します。
一方、地域の人間しか興味がわかないようなニッチな生活情報の多くは、すぐに爆発的に読まれることはありません。

それでも、それらは静かに、少しずつ、サイト内にストックされていきます。
この「ストック型の情報」こそが、長期的には地域の誰かの「困りごと」を解決する、かけがえのない糸口やヒントになりえます。

そういった情報は、いずれ「地域の資産」になる可能性も秘めています。

「生活者目線の一次資料」という価値

もちろん、地域の事情や環境は数年単位でアップデートされていくもの。
でも、たとえ古くなった情報であっても、その蓄積はいずれ「二度と収集できない一次資料」へと変化します。

あの時、あの場所で、何が起き、人々はどう動いたのか。
行政の記録にも残らないような、生活者目線の微細な変化を記録し続けること。

"ムラ社会"的ローカルウェブメディアを運営することは、誰もがアクセスできる「民間の地域資料館」を作ることと似ています。

ムラの内側の「実用性」に向き合う

「インターネット内のムラ社会」を目指す私たちは、無関心な人には情報が届かなくていい、と考えています。
だからムラ社会の外に媚びる必要も、検索エンジンの機嫌を取るために内容を弄る必要もありません。

  • 情報発信から「情報共有」へ

  • 流行を追いかけるより「記録の蓄積」へ

  • 一過性のバズから「永続的な信頼」へ

あえて「ムラ」の内側の事情やニーズに向き合うからこそ、住民にとって「かゆいところに手が届く」リアルな実用性が生まれます。
その地道な積み重ねが、ローカルメディアの信頼・信用につながります。

暗い夜道を照らす「街灯」として

この閉鎖的で濃密なメディア像は、地域社会が本来持っている「相互扶助」の精神をデジタル空間に再現する試みでもあります。

私たちが目指すのは、遠くからでも見栄えがいい、派手な花火を打ち上げることではありません。
暗い夜道にポツンと立つ街灯のように、「そこに行けば、確かな灯り(情報)がある」と、地域の誰もが当たり前に信じられる場所であること。

これが、私たちが定義する新しいムラ社会、「ローカルメディアという地域の情報インフラ」の正体です。

サイト運営と維持管理が継続できる、その限りにおいて。

そんな“ムラ社会”メディアとして始まったウェブメディアの、その後はどうなっているのか?

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