家属 第五章
第五章
どれほど時が経ったのかもわからぬまま、私はゆっくりと目を開いた。見慣れた深い青の奥に氷のような青が潜んでいる。私は彼に抱かれていて、彼の足音が廊下に響いていた。一歩、また一歩。澄んで、明るいリズム。それはまるで、あの美しい銀の甲冑がかすかに触れ合う音のようだった。彼の、訝しみと懐かしさの入り混じった眼差しの中で、私は顔を彼の首筋に埋めた。彼に抱かれたまま、ひと段、ひと段、螺旋階段を上ってゆくのを受け入れた。
彼はそっと私を寝台に下ろし、浴室へ入って身を洗い、着替えた。寝台の傍らへ戻ってくると、彼は生気のない私の目を案じるように見つめ、やさしく訊いた。
「どうした?」
私は黙ってその目を見返した。霧を一枚隔てたように、永遠の霞の中にある眼差し。
「どうした?」
彼は根気よく、もう一度訊いた。
「処刑は得意?」
私は探るように尋ねた。
「まあ、それなりには。どうしてだ?」
「その手順を教えてくれる?」
彼は私の後頭部の、第二頸椎と第三頸椎のあいだを撫でながら、小さく言った。
「ここだ」
「もし、痛みのない処刑を望むなら?」
彼は指を上へ移し、第一頸椎と第二頸椎のあいだに触れて言った。
「まず、ここを素早くずらす。それで一分ほど待つ。身体の感覚がすべて消えたら」
彼は再び指を第二頸椎と第三頸椎のあいだへ戻した。
「それから、ここを一気に断つ」
私は震えながら訊いた。
「あなたの記憶の中で、いちばん印象に残っている処刑の経験を、話してくれる?」
彼は長い沈黙に沈んだ。死の永遠の闇のような沈黙。
「もう寝る時間だ」
彼はそう言って口づけようとしたが、私は顔を逸らしてそれを避けた。
「あなただったの?」
髪に目を隠しながら、横を向いたまま問う。
「我が娘、我が巫女よ」
彼は古い言葉で囁いた。
「もし私がお前をこの身のそばに繋ぎ留めていたなら、お前はもう教会にも、権力を持つ者たちにも見つからずに済んだのではないか。もし、何の役にも立たぬ忠誠を捨てていたなら……」
彼は、意識の混乱と痛みの中へ落ちていくようだった。
「父上……」
私もまた古い言葉で答えた。彼がもっともよく知っている調子で、声音で。
彼ははっと顔を上げ、目を大きく見開いて、虚ろに私を見つめた。まるで私を通して、すでに死んだ何者かを見ているように。
私は彼の頭を引き寄せ、その唇を舐めて探るように触れた。彼は我に返り、深められたその口づけは、さらに激しく、さらに荒々しくなった。私は脚を彼の腰に絡め、次第に硬さを増していくところへ擦り寄ろうとした。かゆみのようなものが、心の奥底から立ちのぼってくる。
「父上……ちょうだい」
私は古い言葉で囁いた。
彼は止まり、私を絡め取っていた身体を外して、寝台の縁に座り、頭を手に埋めた。肘は膝に落ちている。
私は身を起こし、背後から両腕で彼を包み、抱き、胸と腹を撫で、乳首を摘み、耳朶を含んで軽く吸いながら、息のような声で命じた。
「ちょうだい」
彼は振り返り、私を寝台へ押し倒した。両手が身体の上を揉み、這い、唇が吸い、噛み、舐めてゆく。
「あ……」
私はこらえきれず息を漏らし、指を彼の髪へ差し入れた。まるでエスメラルダの髪の先のようだ。誰がこの人に、最初の石を投げられるだろう。
「ん……」
あまりにも大きすぎるものと、あまりにも小さすぎる入口に、私は苦しげに呻いた。彼の汗が一滴ずつ私の上に落ちてくる。私は懸命に身体を緩めようとしたが、それでも合わない。あまりに小さなこの身体に、彼が押し入ってくるその瞬間、鋭い痛みが走った。首を落とされたときの痛みよりも、ずっとはっきりとした痛みだった。私は、あの処刑のときの、手慣れた麻痺の処置を懐かしんだ。痛みと快楽が並んで走り、くり返される打ちつけの中で、下腹はますます鈍く痛んでいく。
「お前をひとり、おれをひとり、生ませよう。そうすれば、私たちは永遠に離れない」
彼は私の耳元でそう囁きながら、私の最奥へと放ち、私の感覚を次の頂へと押し上げた。
永遠の伴い……。安らかでありながら、不穏でもあった。私は深く、長く、夢のない眠りへ沈んだ。
『泥をひとかたまり取って私を作り、もうひとかたまり取ってお前を作る。そうして二つの泥人形をいったん砕いて混ぜ合わせ、その泥でもう一度、お前をひとり、私をひとり作る。これからは、私の中にお前がいて、お前の中に私がいる。』
古い童歌が、アリスの歌う声のように、私の頭の中でこだました。懐かしい旋律が、私を目覚めの方へと運んでいく。
彼は寝台の上に腰を下ろし、膝にノートパソコンを抱えて、ちょうどオンライン会議の最中だった。コーヒーを手に、一つひとつ報告を聞いている。彼は私を見下ろし、掛け布を引いて私の上へ掛け、私の頭をやさしく自分の腿の脇へ押しつけた。片膝を立て、パソコンの重みをもう片方の脚へ移し、私が満足そうに、手も足も使って彼の片脚を丸ごと抱きしめ、頬を擦り寄せ、痛む腰と臀をわずかにずらせるようにしてくれる。彼は心得たように、手の届く限りの筋と肉を揉みほぐしていった。
彼は眉をひそめ、新進の芸術家への助成案について、基金会議で出される提案を聞いていた。彼は困ったように私をちらりと見た。私はわけもわからず見返す。すると彼は私の頬を揉み、その指を私は咥え込み、吸い始めた。
やがて彼はマイクを入れ、一つひとつの提案に意見を述べていった。賞賛を与えるものもあり、保留のうえ再審議とするものもあり、礼を尽くして断り、別の基金への紹介を勧めるものもある。
『まるで、自分の審美眼が権威みたい。』
私は心の中でそう思い、彼を見上げた。
しばらくして会議が終わると、彼はノートパソコンを閉じ、私の頬を軽く叩き、身をかがめて鼻先で私の鼻をくすぐった。私は身をよじって逃げ、思わず声を立てて笑った。
彼は枕元の引き出しから一式の書類を取り出し、鉛筆で丸がつけられた箇所すべてに私が署名するよう促した。私は腰を支えながら起き上がり、掛け布を抱えたまま二、三度目を通したが、すぐにもう読みたくなくなった。信託基金に関する書類だった。
「全部、署名するの?」
私は訊いた。
「そうだ」
彼は答えた。
残りの内容を読む気も失せ、私はしゃっ、しゃっと、素早く、けれど骨の折れる思いで、丸のついた空欄すべてに署名した。彼はその書類を取り上げ、何度も確認したのち、寝台脇の鞄へ戻し、それから向き直って私の下腹へ口づけた。
「ん……」
妙な痺れが、身体にも心にもひろがっていく。波紋のように。
「欲しいのか?」
彼は掠れた声で訊いた。
「欲しい……」
私は堪えかねて答えた。
それはまたしても耐えがたい痛みを伴う一度だった。初めてではないのに、身体を重ねるたび、まるで毎回が初めてのように痛み、そして快楽でもあった。私は生まれて初めて、自分の身体は本当に小さすぎるのではないかと疑った。
「私の甥、私の継長子、私の父上……」
私は彼をそう呼んだ。長い記憶の蓋がめくれ、頭が痛むほどの声を上げる。それが絶頂なのか、痛みなのかもわからない。
彼はなおも私の上で、永遠のように打ちつけ、打ち鳴らしていた。まるでアイルランドの、決して休むことのない波が断崖を打ちつづけるように。やがて彼が命の種を私の内に植えつけ、私を生命の津波の頂まで押し上げたとき、それはまるでバベルの塔のように、永遠へ届こうとする企みだった。
「愛とは永遠への希求であり、朽ちるものはすべて、不朽を求めて尽くしている」
彼は私を抱き寄せ、私の頭をだらりと自分の胸へ預けさせたまま、そう読み上げた。
「愛は、不朽の記憶の河と、人々の忘却の川とが交わるところに浮かぶ渡し舟。永遠なるものが、束の間、身を寄せることのできる家でもある」
私はうわ言のように答えた。
彼は私を見て、ふっと笑った。そして私たちがどちらも触れたくない問いには、互いに口を閉ざした。朽ちるもの? 不朽? 永遠? 束の間? あなたはどこに属し、私はまた、何に属しているのだろう。
ぼんやりする意識の中で、彼は私の首筋へ細かく歯を立てていた。私の中に埋まっているものは、次第に膨らみ、さらに硬さを増していく。私は彼に向かって身を反らし、長すぎる首をさらけ出す。細く、脆い首筋だ。彼の舌が、首筋の動脈を舐めた。
死に私を狙わせ、恐怖に私へ口づけさせる。愛と名づけられた、束の間の家の中で浮き沈みながら。死が生命と同じように永遠であり、家の庇護もまた、時の長い流れの中で消え去ると知っていながら、それでも私は、自らを溺れさせるままにしていた。まるで、花瓶の水へ落ちた煙草のように、花の茎のあいだを浮き沈みしながら。時間という束の間の、愛の家の中でだけ、私は束の間、自分が生きていると感じた。たとえその生の気配が、なおも儚く、現実味のないものであったとしても。
下腹は次第に張りつめ、満たされていく。彼の両手は、それぞれ私の後頭と肩甲骨の中心を押さえ、背を再び寝台へと平らに戻しながら、ゆっくりと動いていた。まるで私の心臓のポンプを引いているかのように。
「生きろ。私は願い、そして命じる。生きろ」
彼は動きをさらに大きくした。それをすれば、この生における私の寿命が引き延ばされるとでもいうように。
周囲には赤、桃色、淡い緑、淡い青の気配が私を包み、彼の意志に従うように狂ったように私の中へ注ぎ込まれていく。やがて、彼が低く吠えるように果てるのとともに、生の儀式は完成した。私の目尻から涙が流れた。永遠の代償として。
