新しい扉が開いたパリの旅

私は、絵心があるわけでもない。
学生時代に習った有名な画家の絵を知っているくらいで、美術についての知識もほとんどない。
20代の頃は、少し格好をつけて美術館に行くこともあったけれど、今思えば、それも「美術が好きだった」というより、美術館に行く自分がちょっと素敵に思えただけだったのかもしれない。
そんな私が、今回パリのルーブル美術館を訪れた。
そこで見た絵画に圧倒された。
いや、正確には、絵画だけではない。
長い歴史を刻んできた建物そのもの、そこに並ぶ数えきれないほどの作品、そして何百年も前に生きた人たちが残したものが、目の前に存在していること。
ルーブル美術館という場所そのものに、圧倒されたのだと思う。
帰国してから、不思議なくらい美術のことが気になり始めた。
西洋美術史の本を読み、原田マハさんの『ジヴェルニーの食卓』や『デトロイト美術館の奇跡』を夢中になって読む。
今まで自分の中になかった「美術」という興味のカテゴリーが、突然できた。
知らなかったことを知るのが楽しい。
「あの絵は、こういう時代に描かれたのか」
「この画家には、こんな人生があったのか」
そんなことを知るたびに、今までただ「きれいだな」と眺めていた絵が、少し違って見えてくる。
なんだか、ワクワクしている。
今回のパリ旅行には、直前に思いがけないアクシデントがあり、急遽ひとりで海外を旅することになった。
正直、不安もあった。
でも、ひとりでパリを歩き、ルーブル美術館へ行き、地下鉄に乗り、迷いながらも目的地を探して、自分で一つひとつ行動した。
帰国してみると、それは思っていた以上に大きな自信になっていた。
「私、ひとりでも海外に行けたんだ」
そんな小さな自信が、新しい扉を開いてくれたような気がする。
そういえば、2年前、高知県北川村の「モネの庭」を訪れた。
そのとき、チケットの半券を持っていれば、フランスのモネの庭への入場料が割引になると聞いた。
そのときの私は、
「フランスのモネの庭なんて、ずっと先の、遠い未来の話だな」と思った。
それが今、目の前にある。
「あのとき遠い未来だと思っていた場所に、私は本当に来たんだ」
そう思うと、なんだか不思議で、少し感慨深い。
人生には、最初から「できる」と思って進むことばかりではない。
むしろ、
「私には無理かも、そんなことは、まだまだ先」と思っていることのほうが多いのかもしれない。
でも、やってみたら、案外できることもある。
そして、一歩踏み出したことで、今まで知らなかった自分や、知らなかった世界に出会えることもある。
今回の旅で、私は新しい扉をひとつ開けた。
その扉の向こうには、まだ知らない自分自身もいる。
これからは、やってみたいと思ったことは、できるかどうかを考える前に、一度チャレンジしてみよう。
2年前には「遠い未来」だった場所に、今の私は立っているのだから。人生は、思っているよりずっと、面白いのかもしれない。
