⑩ナナホシテントウ_しえり
彼らが訪れる精神世界は、現実に混ざっている過去にとても幸せだった時、もしくはどうしても戻ってやり直したい時なのかもしれない。しかし、その世界に入ってしまえば、そこは彼らにとっての現実で、過去でも未来でもなく今だということにしかならない。
様々な記憶が一度に押し寄せ混乱する。
これまで通りに生活していれば日常として流れていく日々が、「ソレ」によって大きくゆがんだ。書き換えは必ずしも良い方向に向かうとは限らない。
そして、初めての被験体である彼らがどうなっていくのか、研究員たちにもわからない。
管制室からの連絡を受けて、主任はすぐにデータを確認した。
しばらく穏やかだった脳波は一度大きく波形が振れた後、不規則に動き続けていた。
「…何が起きているんだ?」
カプセルの中に浮かぶユルの閉じた瞼の裏で、眼球がぐるぐると動き回っていた。
被験体の健康確保は第一優先であるが、今は様子を見たい。
