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⑤ナナホシテントウ_しえり

何かが視界に入って目線を向けると、一匹のナナホシテントウがトトの腕に止まるのが見えた。
防護服越しには、匂いまでは届かなかったのだが、てんとう虫を見ていると頭の中がぼわんとしてみるみる視界が暗くなるのを感じた。

”これ以上は踏み込ませない。
やめて、これは警告よ。あなたが来られるのはここまでなの”

どこからか、女性の声が響いた。
誰だ…?
トトは真っ暗な中で声のする方を確かめようとした。微かな光でも目印になるものがあればいいのだが何も見えなかった。

”えぇ、わかっているの。あなたが私のことを思って言ってくれていることも。
でもこれ以上はダメなの。そしてこれはあなたの問題じゃないわ!”

さっきよりも一段と大きくなる声に驚いて、大きく瞬きをした。
目を開けると、目の前でさっきの声の主が自分に向かって声を荒げていた。

「私の問題なのよ…お願い。もう放っといてほしいの」

声の主の姿ははっきりしたが、トトには誰だか分らなかった。
目の前にいるのが誰なのかということよりも、トトにはもっと気になることがあった。
ここは、どこだ?
ぐったりして絶望的な声を上げる女性に力なく笑顔を向けた後、ゆっくりと辺りを見回す。
一体何に怒っているのか見当がつくはずもないが、目の前の女性の気分をこれ以上害したくはなかった。

窓の前に小綺麗なキッチン、ブラウンのダイニングテーブルに二人は向かい合って座っており、辺りには心地の良いコーヒーの匂いが漂っていた。コロンとした淡いブルーのマグカップ。
窓からさす光からは、今が何時なのかわからないが、光の加減から夜ではないことはわかった。
うんざりした様子で見つめる彼女は、目でトトのターンを促していた。
君は誰なんだ?と、喉元まで出かけたが、彼女の様子から今聞くのは良くないことは察しがついた。


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