⑰ナナホシテントウ_幸先インカコーラ
それは一瞬のうちに起こった。
便宜上、一瞬と呼ぶけど、過去と未来と現在も、私の知る場所も知らない場所もあらゆる空間が全て溶け合い、そして爆ぜた。
それが、ナナホシテントウに触れた瞬間に「そのトト」に起きたことだった…
トトはそれまでもナナホシテントウに触れていた。
トトはこれから先ナナホシテントウを手放すことはなかった。
トト本の中ではない実物のナナホシテントウを初めて見た。
トトは空を埋め尽くすナナホシテントウの群れに圧倒された。
生まれつき目が見えなかったトトには、ナナホシテントウにも気づくことはなかった。
この世で最後のナナホシテントウだと確信した上で、トトはそれを握り潰した。
トトは人類の天敵たるナナホシテントウの巨大な身体に絶望した。
競争者たちを打ち負かし、あらゆる病を癒すナナホシテントウを歓喜と共にトトはそれを飲み込んだ。
あらゆる時と場所で、過ぎし日の記憶として、来し方の予言として、あるいはまさに今描く妄想として。それら全ての可能性がトトに重なり合っていた。
そのあらゆる可能性の結節点が、目の前にいる(いない)ナナホシテントウ=「Plank_L」つまり「Plank_Life」だった。
あらゆる方向から、あらゆる時間軸から眺めるナナホシテントウの軌跡が、波動関数の波形を描いていることに気付いた(知っていた)。
そしてその軌跡にはすべて同じメッセージを潜められていた。この量子生命であるテントウムシこそが、モミとユルが閉じ込められた因果の孤島から流した「ボトルの中の手紙」なのだと告げている。
あらゆる方向から来て、あらゆる方向に去っていくテントウムシ、その過去の軌道も未来の軌道もすべてさらしながら。
万能の可能性を秘めたその波打つ軌道に、トトはただ一つの願いだけを抱いて右手を差し入れ、強く握りこんだ。テントウムシを殺してしまうかもしれないという恐れを飲み込んで。一瞬、差し込んだ右手がほんの溶けてなくなった気がした。
そして、すぐに、求めていた温かみが手を包む。「回収されて」しまったはずの二人分の手の。
そしてトトは静かに顔を上げる。
そこには
