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【北海道時間.jp】第39回:田んぼから未来を耕す―木古内町で米づくりをしながら考えた、地域を守るということ

北海道木古内町で、今年も米づくりが始まっています。

手塚農場の手塚和宏さんに全面的にご協力いただきながら、今年、私と友人の寛未さんは田んぼでお米を育てています。

木古内町の農家さん 手塚農園の手塚さんと

その名も、

元気モリモリ米
そして
寛澪米

名前だけ聞くと、ちょっと楽しげで、少し遊び心のあるお米のように感じるかもしれません。

元気もりもり米
寛澪米

でも、田んぼに入り、泥の感触を足の裏で感じ、苗を一本一本見つめていると、これは単なる米づくりではないのだと強く感じます。

これは、地域を守る営みです。

そして、木古内町のこれからの未来を考える、とても大切な入口なのだと思いました。

田んぼに入ると、地域の時間が見えてくる

田植えの日

田んぼには、水が張られ、空が映り、風が通っていました。

すぐそばには山があり、用水路が流れ、足元にはやわらかい泥がある。

普段、役場の仕事をしていると、どうしても資料や数字、会議や調整の中で地域を考えることが多くなります。

人口減少。
担い手不足。
高齢化。
産業の継承。
移住定住。
ふるさと納税。
地域PR。

どれも大事なテーマです。

でも、田んぼに入ると、その言葉たちが急に生きたものとして立ち上がってきます。

地域を守るとは、何か。

それは、ただ制度をつくることでも、補助金を組むことでも、PR動画をつくることでもない。

毎朝、田んぼを見に行く人がいること。
水の深さを気にする人がいること。
苗の様子を見守る人がいること。
天気や風や気温と向き合い続ける人がいること。

そういう日々の積み重ねの上に、地域の暮らしは成り立っている。

手塚さんの話を聞きながら、私たちは、あらためてそう感じました。

手塚和宏さんに丁寧に説明をしていただきました

米は、ただ植えれば育つわけではない

正直に言うと、田んぼに入るまでは、米づくりの大変さを頭ではわかっているつもりでした。

でも、実際に話を聞くと、その世界は想像以上に繊細でした。

水を浅く張る時期がある。
深く張る時期がある。
太陽の光で水温を上げる。
冷たい風から稲を守る。
肥料を入れすぎると、稲が倒れてしまう。
収量を追いすぎると、食味が落ちることもある。

足せばいいわけではない。
増やせばいいわけでもない。

引く勇気。
待つ力。
見極める目。

米づくりには、自然と対話する知恵が詰まっていました。

これは、まちづくりにも似ていると思いました。

何かを始めることは大事です。
新しい事業をつくることも大事です。
外から人を呼ぶことも大事です。

でも、地域には地域のリズムがあります。

無理に急がせれば、根が張らない。
外から何かを入れすぎれば、本来の味が薄れてしまう。
一方で、何もしなければ、次の世代につながらない。

田んぼと同じように、地域にも水加減がある。

手を入れるべきところには手を入れる。
見守るべきところは見守る。
育つ力を信じながら、必要なときに支える。

木古内町の未来を考える上で、この感覚はとても大切だと思いました。

農業は、ひとりでは守れない

田植えを体験して、もう一つ強く感じたことがあります。

農業は、ひとりでは守れないということです。

もちろん、農家さん一人ひとりの努力は本当に大きいです。
朝早くから田んぼを見て、機械を動かし、天候を読み、体を使い、判断を重ねていく。

でも、その背景には、人と人との支え合いがあります。

農業機械を共有する。
作業を手伝い合う。
水路を守る。
地域で声をかけ合う。
困ったときに助け合う。

農業は、食べ物をつくる仕事であると同時に、地域のつながりを保つ仕事でもあるのだと思います。

田んぼがあるから、人が関わる。
人が関わるから、地域が動く。
地域が動くから、風景が守られる。

逆に言えば、田んぼがなくなるということは、単に米の生産量が減るということではありません。

人が集まる機会が減る。
用水路を守る人が減る。
景色が変わる。
地域の記憶が薄れていく。
子どもたちが「自分の町には田んぼがある」と感じる機会が減っていく。

だから、米づくりは地域を守ることなのだと思います。

そして、地域を守るとは、過去をそのまま保存することではありません。今あるものの価値を見つめ直し、次の世代に手渡せる形に変えていくこと。それが、これからのまちづくりなのだと思います。

木古内町には、未来の種がある

木古内町は、小さな町です。

人口も多くありません。
若い人も減っています。
担い手不足という現実もあります。

でも、私はこの町を「課題の町」としてだけ語りたくありません。木古内町には、未来の種があります。

北海道新幹線の駅がある。
道の駅「みそぎの郷きこない」がある。
海がある。
山がある。
寒中みそぎという神事がある。
咸臨丸の歴史がある。
おいしい米がある。
函館和牛がある。
漁業がある。
農業がある。
そして、何より人がいる。

この町には、まだ言葉になっていない魅力がたくさんあります。

外から来た人が感動する風景。
地元の人にとっては当たり前すぎて、価値として意識されにくい日常。
でも、その日常こそが、木古内町の宝なのだと思います。

田んぼに立っていると、空が広い。

水面に雲が映る。

風が吹く。

苗が揺れる。

この風景を、もっと多くの人に見てほしいと思いました。

そして、ただ見て終わるのではなく、手塚和宏さんのように、この土地で日々働く人の思いや知恵に触れてほしいと思いました。

米を食べるだけでなく、米が育つ時間を知る。
返礼品を選ぶだけでなく、その向こうにいる人を感じる。
観光で訪れるだけでなく、この町の未来を一緒に考える。

そういう関係人口を、木古内町で増やしていきたい。

田んぼに入りながら、そんな思いがどんどん膨らんでいきました。

ふるさと納税も、地域と人をつなぐ入口にしたい

今、私はまちづくり未来課で、ふるさと納税にも関わっています。

ふるさと納税というと、どうしても「お得」「返礼品」「ランキング」という言葉が目立ちます。

もちろん、寄附してくださる方に喜んでいただける返礼品を用意することは大切です。

でも、本当はそれだけで終わらせたくないのです。

木古内町のお米を選んでくださった方に、田んぼの風景を届けたい。
生産者さんの思いを届けたい。
水や土や風と向き合う日々を伝えたい。
「この町を応援したい」と思ってもらえる関係をつくりたい。

ふるさと納税は、単なる買い物ではありません。

本来は、地域と人がつながる入口です。

木古内町の米を食べた人が、いつか木古内町を訪れる。
木古内町を訪れた人が、手塚和宏さんの田んぼを見て感動する。
田んぼを見た人が、また誰かに木古内町の話をする。
その輪が少しずつ広がっていく。

そんな流れをつくることができたら、ふるさと納税はもっと温かいものになるはずです。

返礼品の向こうに、人がいる。
人の向こうに、地域がある。
地域の向こうに、未来がある。

そのことを、丁寧に伝えていきたいと思っています。

便利な時代だからこそ、泥に触れる意味がある

今の時代は、とても便利です。

スマホひとつで、何でも調べられる。
食べ物はすぐに届く。
AIを使えば、文章も企画もあっという間に形になる。
遠くの人とも、画面越しにつながることができる。

私自身、AIやICTの可能性を強く感じています。
これからの地域づくりにも、テクノロジーは欠かせません。

でも、田んぼに入ると、便利さだけでは得られない感覚があります。

泥の重さ。
水の冷たさ。
苗の小ささ。
腰をかがめる大変さ。
一緒に作業する人の笑顔。
「ありがとう」と言い合う時間。

これは、画面の中だけでは感じられないものです。

テクノロジーは、地域を助ける道具になります。
情報発信も、記録も、販売も、連絡調整も、AIやICTで支えることができます。

でも、地域の本質は、やはり人と人との関係です。

誰かが誰かを思うこと。
誰かが土地を守ること。
誰かが次の世代のために手を動かすこと。

便利な時代だからこそ、あえて土に触れる。
効率の時代だからこそ、手間の意味を感じる。
AIの時代だからこそ、人間らしい営みに戻る。

木古内町の田んぼには、その大切なヒントがありました。

未来は、ひとりでは育たない

まちづくりは米づくりに似ていると思います。

最初は、小さな一粒です。

一つの出会い。
一つのアイデア。
一つの挑戦。
一つの「やってみよう」。

最初から大きな成果になるわけではありません。

でも、種をまかなければ、何も育たない。

まいた種を見守る人がいる。
水をやる人がいる。
雑草を取る人がいる。
応援する人がいる。
収穫を喜ぶ人がいる。

そうやって、未来は少しずつ育っていくのだと思います。

元気モリモリ米も、寛澪米も、まだ始まったばかりです。

でも、この米づくりを通じて、木古内町の未来を一緒に考える仲間が増えていったらうれしい。

田んぼを見に来る人が増える。
木古内のお米を食べる人が増える。
農家さんの思いを知る人が増える。
地域を応援したいと思う人が増える。
子どもたちが「この町って面白い」と感じる機会が増える。

それは、きっと大きな未来につながっていくはずです。

木古内町の田んぼから、新しい物語を

手塚さん、本当にありがとうございます。

田んぼに入らせていただき、米づくりのこと、地域のこと、農業のこと、たくさん学ばせていただいています。

そして、一緒に田んぼに入り、泥だらけになってくれた仲間にも感謝です。

木古内町に来てから、何度も思っています。

この町には、まだまだ可能性がある。

それは、派手な観光地になるという意味ではありません。
大きな企業が来るという意味だけでもありません。

この土地にあるものを、もう一度見つめ直すこと。
この町で暮らす人の営みを、丁寧に伝えること。
外から来る人と、地域の人が出会う場をつくること。
小さな挑戦を、みんなで面白がること。

そこから、木古内町の未来は育っていくのだと思います。

田んぼの中で、苗が風に揺れていました。

小さな苗です。でも、その一つひとつが、秋にはお米になります。一粒が、万倍になる。人の出会いも、地域の挑戦も、きっと同じです。

小さな一歩が、未来を変える。
一つの田んぼが、町の見え方を変える。
一杯のご飯が、地域と人をつなぐ。

北海道木古内町で始まった米づくり。

元気モリモリ米と寛澪米。

この田んぼから、地域を守る物語を育てていきたい。そして、木古内町の未来を、仲間と一緒に、元気モリモリに耕していきたいと思います。


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