好きな曲が“教材”に。教科書では学べないリアルな英語は洋楽で(16)
昨日に続き、今日も人類史上最も影響力のあるアーティストの一人になった
テイラー・スウィフトさん
を取り上げます。いまだにビルボードトップテンの常連であり、大統領選挙にも影響を及ぼすと言われ、そして何よりあのマイケル・ジャクソンさんを超えたとも。純資産額は約3115億円。もう彼女の凄さは一言では言い表せません。別格中の別格。
そこでここでは、日本の番組主題歌にも起用された、この曲を素材にしてみます。
We are never ever getting back together
出だしの1節です。
I remember when we broke up the first time
Saying, "This is it, I've had enough," 'cause like
We hadn't seen each other in a month
When you said you needed space. (What?)
どこかで聞いたことがある方も多いでしょう。よりを戻したい元カレ(ex-boyfriend)に向って「絶対によりを戻したりはしないから」と固い決意を表す曲です。
● We are never ever getting back together.
(もう絶対に絶対によりなんか戻さない)
中学校で習った現在進行形「be+動詞のing形」は、「今している最中」ということだけでなく、これからしようとしている未来を表す時にも使えます。つまり現在進行形は未来を表せます。学校では「近接未来」と教わります。
ではなぜテイラー・スィフトさんがWe are never ever getting back together.と現在進行形を使っているのか。すぐにでもそういう行為を始めたいという心境が伺え、何らかのアレンジが施され「もうよりを戻さない」、そういう手はずが整っている、もうそういう方向に心理的にも肉体的にも向かっている。そんな気持ちを伝えたいからです。
「be+動詞のing形」ではなくwillにしてWe'll ~(=We will)またbe going toを使ってWe're going to~だとどう違うのでしょう?
これらの違いを、get married(結婚する)を使って説明してみます。
次のa~cの文を見てください。
a. I will get married.
b. I’m going to get married.
c. I’m getting married.
aの助動詞willは「意志」を表します。ですから、その場で「よし結婚するぞ」と決めた場合や、「私は(将来)結婚するでしょう」と自分のこれからを「予測」しているような感じになります。
一方、bはget marriedの方向にgoing to(向かっている)ということから、「結婚するつもりです」のようなニュアンス。相手と付き合い、いい感じになってきて、結婚を意識しているときに使います。英文を見ても、I’mとget marriedまでの距離がまだありますね。実際に結婚するまではまだちょっと時間的、物理的、心理的に余裕があるわけです。
ところが、cではI’mの後にすぐgetting marriedが来ています。つまり、それだけ結婚に近づいているということ。相手の家族に会って、日取りや式場も決めて、準備や手配がすでにできている状態を表します。心理的な切迫感が、ほかの二つとは違うわけです。
そこでこの曲では、We're getting back~と決定された予定の感情を一番ストレートに表せる現在進行形を選択したというわけです。
※ただし、言葉というのはなかなか理屈どおりにきれいに区分けできるものではなく、実際はbe going toの領域が広がっていて、be going toを「近接未来」のニュアンスで使う人もいます。
なお、IやWeを主語にして、この曲のようにnever ever「絶対~ない」といったneverを強めた否定語がつくと、主語の強い意志を表すニュアンスも出てきます。
● I remember when we broke up the first time.
(初めて別れた時のこと忘れないわ)
I remmber~は「~を覚えている」というよりは、ここでは「忘れない」の方がニュアンスとしては近いと思います。失恋ですから。
ところでrememberと言う単語は、①「覚える」→②「覚えている」→⓷「思い出す」という人間の記憶に関する3つの段階すべてをカバーしている単語です。
① I need to remember the new password.
② I still remember the first time I met you.
⓷ I can't remember his name. It's on the tip of my tongue.
①「新しいパスワードを覚える必要がある」
②「あなたに最初に会ったことをまだ覚えています」
⓷「彼の名前を思い出せない。口先まで出かかっているのに」
このようにスコープの広い単語さんなんです。
● This is it, I've had enough.
(もうこれまで、もうたくさん)
I've had enoughは「もうこんな状態は我慢できない」と我慢の限界を表したい時に使うフレーズです。That's enough.でもOK。場面によっては、食べ物をもっとどう?と進められて、「もうお腹一杯です」と断る時にも使えます。その時はThank you.とひとこと言えれば好印象です。
● We hadn’t seen each other in a month.
(1カ月も会ってなかった)
hadn’t seenに注目です。これ過去完了形「had+過去分詞」というものです。ではなぜhaven’t seenじゃないんでしょう。それはyou said you needed space.の動詞がsaidと過去形になっていますね。その時よりも前に起きた出来事のことを言いたかったからなんです。
つまり「距離を置きたいと言われたとき」よりも、その前のこととして、「お互い会っていなかった」ことを表わしたかったのです。このように「had+過去分詞」の形は過去の時間の前後をはっきりさせたいときに使います。なんか日本の高校の授業で習うような堅そうな文法ですが、テイラー・スィフトさんも使っています。
ところで、期間「~の間」を表すとき英語では
in a month と for a month
どちらも使えます。では、次はどう違うでしょう?
I haven't seen him for a month. vs I haven't seen him in a month.
否定文で、forを使うと「~の間」と期間を、inを使うと「一ヶ月の間一度も」と期間内での回数にこだわったニュアンスが出ます。なので、前者は「一か月の間彼とは会ってない」、後者は「一か月の間1回も彼とは会ってない」となります。ここもテイラーさんは「一ヶ月の間1回も会わなかった」と言いたかったんでしょうね。かわいそう。
● When you said you needed space.
(あなたが距離を置きたいって言ったときには)
I need (some) space.は、別れ話を切り出すときの定番です。直訳すると「空間が必要」。お互い離れ離れで会わない状態をspaceと比喩を使って表した言い回しです。日本語の「しばらく距離を置きたい」に相当します。ショックですねこう言われたら。
おまけ;
● You called me up again tonight.
(あなたは今夜また電話をかけてきた)
call(呼ぶ、電話をかける、立ち寄る)は、さまざまな前置詞や副詞とくっついて、幅広い意味を作り出します。
called me upは「私に電話をかけてくる」。callだけでも「~に電話をかける」の意味を表しますが、callには「~を呼ぶ」という意味もあります。upを付けることで「電話」だとはっきりするのです。ただ、実際はどちらでも変わらないというネイティブがほとんど。あえて言えば、「call upのほうが緊急性を感じることもある」という人もいます。
このようにネイティヴは、日常会話では簡単な語を組み合わせて、効率のいい表現手段を取っています。こうした熟語は洋楽の歌詞にも頻繁に登場しますので、注意してみてください。
ティラーさんの歌詞は実体験に基づいて書いていると言われ、その分、聞き手にストレートに伝わりやすく、共感を得やすいのでしょう。
英語の語法や英文法の観点から見ても、興味深いポイントがありますね。
