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【 小さな宿 】  84章 宿と身体とピラティス  【始まりの朝】

ぜんざいをドンブリですする。
餅は2つ。甘さ控えめ。

冷え切った身体をコタツに潜らせながら、
この二日を振り返る。

空は、昨日よりどんより。

冬、この家は想像以上に冷えるらしい。




幕開け

昨日は、ピラティス・マラソン。
正月一発目。
参加者は、定員超えの31人。

朝10時から。
にもかかわらず、誰一人欠けることない。
開始前に、スタジオには全員が揃った。

マット同士の隙間は15cmにも満たない。
普段は少し威張って居座るマシンたちも、
この日ばかりは脇役。

動き自体はIntermediateに近い。
たぶん。

45分×2セット、計90分のレッスン。
久しぶりに体を動かさなかった私にとっても、
なかなかの辛さ。

I姉さんとMヒロさんの声に沿って、
私はスタジオの端寄りに陣取り、
少し緊張しながら動いていた。




熱い光線

1セット目が終わる頃、
太陽は上空で力強く輝き始めた。
スタジオの窓から差し込む直射。

窓の向こうには青い空とビル群。
彼方には真っ白な雲。
まるで夏のよう。
熱く差し込む光に翻弄されながら、
私は動きを続けた。

意外にも、2セット目の敵は、
自分の重くなった体や動きそのものではなく、
この太陽光線だった。

「目ぇ、痛っ!」

逃げ場のない眩しさ。
汗が額から目に伝う。

タオルで目を覆う。
もう見えない。
左隣の女性も指で目をかばう。

最後の10分間、必死でついてった。



お話しのひととき

スタジオ中央前側。
スキルの高い人たちが集中していた。
その中に見つけた。
あの花柄レギンスの女性。
憧れの動き。

Mヒロさんの実技を見ずに、
その女性の正確なリズム、
しなやかな動きをお手本に。
ゴメン。

自然に呼吸も揃い、
リズムを追いかける感覚が心地よい。


その後のレッスンは、フォームローラー。
人数は半分以下に減り、
空間にゆとりが出来た。

斜向かいに座った花柄の先輩と目が合う。
自然とお互いに気づき合い、
NOTEのアカウントを伝えてみた。
その女性にも、
そしてお友達にも。

「はぁ、やっと読んでもらえる…」

昨年末、やり残した小さな宿題。
この瞬間、果たせた。

ついでに、少しおしゃべり。
万博や瀬戸内芸術祭の話題にまで及ぶ。

次はフォームローラーとの対話。
太ももに厳しく語りかけて来る。



新たな場所

今日、ついさっきのこと。
今年は所属をSスタジオに変えてみた。
自分なりに変化。

大きくて、でも少し遠い。
はしゃぐ街。

新しい環境でのBASICのレッスン。
昨日の90分で疲れた身体には、ちょうどいい。

担当はNさん。
年末のボーリング大会。
直前の、特別レッスンの女性だ。


眼下には正月の人ごみ。
映画のような背景に、滑らかに動くNさん。
4人が導かれる。
深い呼吸。
横隔膜の浮き沈み。
正面のテラスからの視線さえ、心地よい。

初めて名前を呼ばれた。
そして。

「もう少し足を低く!」

予感はしてた、なんとなく。
その声に反応し、両足を床近くで静止。

「そう、そこです!」

交錯する嬉しさと恥ずかしさ。
久しぶりの感覚。

以前なら理解できなかった声掛けや角度、
呼吸のタイミングも、
今の私には少しずつ体に馴染んでいく。


今年、
目標は特に持たない。
ただ健康を維持し、改善するだけ。

広すぎるスタジオの静けさの中、
正月休みの街を見下ろす。

地上には、溢れる笑顔。
並木道と、
もうすぐ閉店するモールをすり抜ける。
肩をすくめ、地下鉄の階段を下りていった。


温まってきた手足。
もひとつ、餅を追加。

「やらかっ!」
とろける。


善哉。
よきかな。
体も舌も、ほどけていく。


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