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序章 第1話 

始まりの終わり

アトランティス大陸西部の
海と森に囲まれた小さな漁村。
潮風が吹き抜ける穏やかなその村で
1人の小さな少年が駆け回っていた。

「お母さん!見て見て!」

小さな木剣を振り回しながら走る5歳の少年。
グラン・フェイスフル。
黒髪に金色の瞳を持つ元気な少年だった。

「こーら、走り回ると転ぶわよ」

優しく微笑む女性。
グランの母セレネ・フェイスフル。
長い黒髪を揺らしながら洗濯物を干している。

「だって僕は、お父さんみたいな
かっこいい戦士になるんだ!」
「ふふっ」

そんな言葉にセレネは少し困ったように笑う。
するとそこへたくさんの薪を担いだ
大男が帰ってきた。

「おお、今日も元気よく遊んでるな。
母さんに迷惑かけてないか?」

グランの父アドリック・フェイスフル。
村では漁師兼自警団として暮らしており
その立ち姿にはどこか歴戦の
戦士のような風格があった。
優しい笑顔をグランに向けている。

「お父さん!」

グランは勢いよく飛びつく。
アドリックは軽々とグランを持ち上げる。

「うん!お母さんの手伝いもして、今は稽古中!」
「おお、そうか頑張ってるな!」

そして高く持ち上げられたグランは大喜びだった。
どこにでもいる普通の家族。
どこにでもある幸せ。
それが永遠に続くと誰もが思っていた。
この時までは…。

その日の夜。
食事を終え寝床に着こうとしている頃。
空は重い雲に覆われていた。
ぽつり、ぽつりと。
雨が降り始める。
次第にザァァァァァァァァァーーー!と
激しい豪雨となり
強い雨と風が窓を叩く。
セレネは不安そうに外を見る。

「何か嫌な雨ね…。」

アドリックも表情を曇らせた。
何かがおかしい。
戦士としての勘が告げていた。
その時ーーー!
ドォォォン!!!
村の入り口の方で大きな爆発音が響いた。

「なんだ!?」

続いて炎が立ち上り村人たちの
悲鳴や叫び声が聞こえて来る。
アドリックが立ち上がる。

「何が起きたんだ!?雷が落ちたのか?」

次の瞬間。
ゴオオオオオオオオオ!!
村の家が次々と燃え上がっていく。

「火事だぁーー!!」
「助けてくれぇ!」

村中が混乱に包まれる。
アドリックはすぐに外を確認する。
そして凍りついた。
そこには雨の中
漆黒の軍勢が帝国の旗を掲げ
家々を燃やしていた。
そしてその先頭に立っているのは
全身を漆黒の鎧で身に纏い
巨大な大剣を背に背負った大男。
アロボロス・ガーランダー。

「…!?帝国がここまで来てしまったか…。」

アドリックの顔色が変わり、
セレネも悟った。

「あなた…」
「あぁ村を巻き込んでしまった…」

2人は目を合わせる。
隠し続けてきた秘密が
ついに見つかってしまった。

対峙するアルボロスと村長

そして村の広場
炎が雨の中で燃え続けている。
その中でアルボロスは悠然と立ち
村人たちに問う。

「もう一度聞こう。龍人族の末裔は何処にいる。」

低い声。圧倒的な威圧感。
沈黙。誰も答えようとはしない。
そんな中村長が前に出て言う。

「そんな種族のものはこの村にはおらん。
それに龍人族などとうに滅びた種族であろう。」

少しの沈黙。

「ふんっ。ならばしらみ潰しに探すだけだ。」

そしてアルボロスは
巨大な大剣を抜くとそのまま振り下ろした。
ドゴォォ!!
大剣が村長の体を両断した。
鮮血が辺りに飛び散る。

「がは……っ」

村長は絶命した。
周囲にいた村人から悲鳴が上がる。

「どの道消える村だ。」

アルボロスは冷笑する。

「男は処分しろ。女子供は捕縛し研究所へ送れ。」

その一言で地獄が始まった。
漆黒の軍勢が剣を抜き次々と村人を襲っていく。


その頃。
外の騒ぎで目が覚めたグラン。

「お父さん、お母さん。何かあったの?」

アドリックが膝をつく。

「グラン。よく聞け。」

グランは少し怯えていた。
初めて見る父の真剣な表情に。

「お前は強くて優しい子だ。
お母さんの言うことは絶対に聞くんだ。
いいな?」
「お、お父さん?」
「必ず生きるんだ。わかったな?」

セレネの目から涙が溢れる。
アドリックは立ち上がりセレネにも告げる。

「セレネ。愛している。グランを頼む。」 

そして壁にかけてあった一本の槍を手に取る。

「俺が時間を稼ぐ。その間にお前たちは行くんだ。」

夫の手を掴む

「あなた……私も愛してるわ」

そしてアドリックは息子の頭を撫でた。

「何があっても強く生きろ。」

それが父から聞いた最後の言葉だった。
アドリックは雨の中
燃え盛る炎の中へと飛び出していった。
グランにはまだわからなかった。
これが父との最期の別れになることを。

そして村の中央で待つ脅威。
アルボロス・ガーランダーとの
絶望的な戦いが始まろうとしていたーー

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