つよがりにきくくすり

▼今週のお題
■セリフ 
「はい、忘れ物」

■三題
 ・エビフライ ・三輪車 ・つらら

▼投稿ルール
・投稿締切(任意):2026年2月12日(木)23:59
・「#せりふ三題噺」「#エビフライ三輪車つらら」をつけて投稿




はい、忘れ物。届けにきたよ?

ぼくは別に、忘れ物なんか。

そう? じゃあ、これ、なーんだ。


半分だけ残したエビフライ

余ったぶんをおかわりしたくて、いそいでかぶりついたけど、

怒って教室を出て行った、あの子のわけが知りたくて、

あれるぎーって、なに?って言った、誰かのことばが気になって、

のどを通らなかった、あの日の給食。


借りたまま、置き去りにした三輪車

ずっとうらやましくて、だれもいない午後にねらいさだめて、

どこまでも行けるって、勇んでまたがったけど、

公園の道の階段を、どうしても上がれなくて、

一人で帰って、口をつぐんだ、ままの夕べ。


くもった窓から見上げたつらら

カーテンを開けたら、キラキラ3本、ならんでいて、

真ん中がいちばん、大きくて、

はじめにだれに、言おうかまよって、

やっと次の日、手を引いて行ったら、

一本もなかった、動けない冬。


ふふふ。思い出した?

だから、なんだよ。そんなこと。
どうでもいいし、どうでもよかった。
きっと、その時も、今だって。

そうね。
足りない大人の配慮だし、歩けば五分で戻れるし、
春には溶けて無くなるし。

つるりときれいな心にも、無数の模様が刻まれて、
はじめについた傷なんて、紛れてどこにも見当たらない。

でもね、全部どうでもよくなった時、
うずきは夜のみちしるべ。
丁寧に手探りすれば、まだその熱がたどれるの。

だから、届けにきた。
今、いるんじゃない? ほんとうは。

さあ、どうぞ?
あなただけに燈る、灯り、三つ。



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